作品タイトル不明
178話 クトゥルー、開戦の狼煙を上げる【前編】
季節は真冬。
厳しい寒さと、吹雪が吹き荒れる。
未来神クトゥルーは、この日を【開戦日】とした。
「さぁ……いよいよだ。 終焉令(ラグナロク) を発動させようじゃないか」
クトゥルーはマントを羽織り、頭の上にはクリスタルの王冠をかぶる。
ふてぶてしい笑みを浮かべながら、上空から神々を見下ろす。
「諸君! 長らく待たせたね。準備は整った……愚かな人間どもに、神の威厳を示す時がきた!」
「「「うぉおおおおおおおお!」」」
神々は主神ユピテルを失ったことで、クトゥルーを新たな支配者としてあがめていた。
……人間を超越する神が、誰かに使役される違和感に、誰一人として気づいていない。
「人間なんぞ蟻にも等しい虫けらが、無秩序に、地上を闊歩している。星をつくりし神々への恩を忘れ、星を食い潰そうとしている。なんと度し難いことだろうか? なぁ諸君!」
「「「然り! 然り! 然り!」」」
神々はすっかりクトゥルーの言葉を絶対の真実だと思い込んでいる。
彼が右を向けと言えば右を向き……彼が人を滅ぼせと命じれば、殺戮兵器とかす。
彼の持つマインドコントロールの技能が、精霊王の力によってさらに増幅された結果である。
もはや神々は、クトゥルーの忠実なる兵隊に過ぎなかった。
「この星は不憫だ。醜い 害虫(にんげん) どもによって完全に食い散らかされている。……今こそ大掃除の時だ。この神が作りし、【星食みの魔竜タルタロス】の力をもって!」
パチンッ……! とクトゥルーが指を鳴らす。
ーーオオォオオオオオオオオオオ!
それは動物の遠吠えに似ていた。
だが神々しさ、そして重厚感、放たれるプレッシャーは……獣を遙かに凌駕する。
ごごごと、神々が立っている場所が振動する。
灰色の地面が、徐々に盛り上がっていく。
それは最初、入道雲か何かかと空目する。
だがよく見ると、機械的なフォルムの……1匹の竜の顔だった。
「さぁ魔竜よ! 未来神が命じる、目覚めるのだ……!」