軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

173話 カルラ、息子の嫁たちと合流する

勇者エレンがルルイエを看病している、一方その頃。

カルラは精霊界にある、アドラの家まで帰ってきた。

森の中にたたずむ一軒家。

池の畔に緑色の髪をした男性が立っている。

「カルラ、おかえりなさい」

柔和な笑みを浮かべる青年は、エレンの父アドラ。

カルラはその場で両手を突いて、腰を上げる姿勢。

「いちについて……よーい、どん!」

ダンッ! と凄まじい勢いで、カルラはアドラに向かって走る。

「だぁありぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!」

大音量で叫びながら、カルラが走って行く。

「会いたかったよぉうううううううううううううううううう!」

ガバッ……! とカルラがジャンプし、アドラに飛びつこうとする。

ひょいっ、とアドラはそれを回避する。

彼女はそのまま、激しい水音を立てて、池の中へとダイブした。

「私も久しぶりに君に出会えて嬉しいですよ、カルラ」

「ならもっとさー、愛情ある感じでこう……抱き留めてや!」

「あの勢いで抱きつかれたら背骨が折れていましたよ。みなさい」

衝撃波で池の水がすべて吹っ飛んでいた。

それどころか、池底にクレーターまでできている。

さらに言えば、彼女が突っ込んでいったその一直線上の地面がえぐれていた。

「いっけね☆ 加減わすれてた」

よいしょ、とカルラは池から這い上がる。

アドラは魔法で水や地面を元通りにした。

「まったく、君は相変わらずの規格外な人ですね」

「嫁が元気で嬉しいってこと?」

「そういうことです」

微笑むと、ふたりは正面から抱き合う。

唇を重ね、顔を離す。

「ひさしぶりですね、カルラ」

「おうさ、だーりん。アタシがいない間、浮気してねーだろうなぁ?」

「もちろん、私も命が惜しいですからね」

ふたりは肩を寄せ合い、池を見る。

「あなたは自分の息子に、他の女を抱けというくせに、私には他の女を作るなというのは、少々わがままではありませんか?」

「いーじゃねーか細けえことはよ」

「やれやれ、精霊王様とあなたは、ほんと似たもの同士ですね」

アドラは妻を見て首をかしげる。

「ふくろうさんの意識はどこへ行ったのですか?」

「アタシんなかにいるよ。今は体借りてる」

「そもそもカルラ、あなたは一度成仏したはずではなかったのですか?」

「おうよ。けどあまりにみんなふがいないからよ、霊王の力借りてあの世から舞い戻ってきたぜ」

「あなたらしいですね」

「美人で素敵ってこと?」

「そういうことです」

ふたりは微笑んで、キスを交わす。

「さて、カルラ。これからのことを話し合いましょうか。彼女たちとともに」

振り返ると、精霊アドラの拠点である小屋がある。

「わりーな、だーりん。あの子らをかくまう場所に使わせてもらって」

アスナ達は現在、アドラが保護している。

現状エレンにとっての弱点である彼女たちだ。

ゆえにこの精霊界の、しかもルルイエの目のとどかない、この場所が選ばれたのである。

「しかも24時間見張りを任しちまってさ」

「いいんですよ。精霊は睡眠を必要としないので。それはともかく、カルラ。ちゃんと息子の嫁には挨拶をしたのですか?」

「あー……? あー……そう言われりゃしてねーかも」

「やれやれ。ほら、行きますよ」

アドラに案内してもらい、カルラは小屋の中へと入る。

和室にて、アスナ、ティナ、そしてカレン。

ランは現在、ルルイエに肉体を破壊され、精霊核だけになっている。

それはアスナが、首からぶら下げていた。

「こいつらがベイビーの女たち?」

「カルラ、ハシタナイですよ」

「ほうほう! なんだいなんだい、べっぴんさんばぁっかりじゃねーかぁ!」

カルラは笑顔になると、彼女たちに近づく。

飛びつこうとするカルラの首根っこを、アドラが掴んで止める。

「ぐえー。なにするんだよー」

「身重の女性がいるんですよ?」

「そりゃそっか。すまねーな。おっす、アタシ、カルラ。エレンのママさんさ。よろしくな!」

カルラが挨拶すると、ホッ……とアスナ達が安堵の吐息をつく。

彼女たちは現在、非常にピリピリとしていた。

さもありなん、先日ルルイエに殺されかけたばかり。

見知らぬ女性を前に、警戒してしまうのも無理からぬことだった。

「初めまして、私はアスナと申します」

「ティナよ。よろしく」

ぺこりと頭を下げる嫁2人を見て、カルラは飛びつこうとしてアドラに首根っこを捕まれる。

「気に入った! エレンを安心して任せよう!」

「会って数秒で何がわかるのですか?」

アスナの問いかけに、カルラが自信たっぷりにうなずく。

「アタシにゃわかるのさ。その人の人となりってやつがよ。それで、そっちの赤髪の美女が、エレンの相棒?」

「うむ、カレンと申す。……母が、大変ご迷惑をかけた」

カレンはルルイエの娘なのだ。

なるほど、とカルラはうなずいて言う。

「なんか、普通」

「ふ、普通って……?」

困惑するカレンに、カルラが言う。

「なんつーかルルと比べて普通すぎるっつーか、ハッキリ言って個性がない」

「が、がーん! そんな……個性がない……」

「そんな没個性じゃこの先やっていけねーぜ? まあルル並みにとがりまくった個性じゃなくってもいいけどさー、もうちっと特殊性を出さないと埋もれてくぜ」

「没個性……普通……くっ……!」

がくんっ、とカレンが悔しそうに地面を叩く。

「そんで、その精霊核は……ランだな。なついな」

「知ってるんですか?」

アスナは自分の胸にぶら下がっている精霊核を指さしていう。

カルラは実に懐かしそうに、それを見やる。

「ああ。アタシの友達さ。アスナ、ちょっとかしてくれない?」

彼女はうなずいて、ランの精霊核を受け取る。

カルラは精霊核に魔力を流し込む。

するとまばゆい緑の光と供に……一瞬で、その場にランが復活する。

「す、すごい……修復には最低でも数ヶ月かかるって、アドラさんがいっていたのに……」

「わはは、おかーちゃん様は特別製だからなっ。それより……ラン」

目の前に出現した 神狼(フェンリル) は、目を丸くして、動けないで居た。

『カルラ……さま……』

「おう、カルラだぜ」

ランは人間の姿になると、深々と、土下座した。

「申し訳ございません、カルラ様……! わたしがいながら、若様を危険な目に遭わせてしまい……!」

ルルイエからエレンを守れなかったことを、気に病んでいる様子だった。

「きにすんなっつの。ったく、あいかわらず頭の固い女だぜ」

カルラは微笑むと、ランの肩をたたき、そして抱きしめる。

「久しぶり。エレンをよく守ってくれたな」

「も、もったいなき……お言葉……ふぇーん……」

ぐすぐす……とランが涙を流す。

カルラは目を閉じて、ぽんぽん……とランをあやした。

ややあって。

「さてっと、嫁と部下にあいさつをすませたし、これからのこと話すかいな」

車座になって、カルラ達は座る。

「みんな、現状はだーりんから聞いてるな」

こくり、とアスナ達がうなずく。

ルルイエ襲撃もあり、さすがに今の事態を知らぬ存ぜぬではすまないでいた。

「まもなく神々とエレンとの戦いが始まる……が、エレンの到着が遅れる可能性が高い」

「えと……その、あれ……って、ほんとに必要なの?」

ティナが顔を真っ赤にしながら、カルラに言う。

「ああ、エレンとルルのセックスは、この戦いの勝敗を左右する大事なイベントだ」

「そ、それなら……まあ仕方ない……の?」

「ああ。もちろん親友と息子かっこ本命の嫁がいるかっことじのエッチに興味があってみたかったわけではない断じて」

「やっぱりふざけてるでしょあんたぁ……!」

いきり立つティナを、まあまあとアスナがなだめる。

「エレン到着までは、アタシがだーりんと協力し時間を稼ぐ」

「倒すことは、できないんですか?」

アスナの問いかけに、カルラがハッキリうなずく。

「無理だ。アタシは万全の状態じゃない。よしんば生前の力を100%取り戻したところで、【星食みの魔竜】には勝てない」

「やっぱり、エレンと、あの女が必要になるのね……」

ティナをはじめとして、彼女たちはルルイエにあまり好感を持っていない。

「気持ちはわかる。あんな惨劇一歩手前の不祥事を起こしたんだからよ。けど……許してやってくれ」

カルラはルルイエのかわりに、頭を下げる。

「あいつもちょっと焦ってたとこあんだよ」

「……そうですね。その気持ちは、とてもよく伝わってきました」

アスナが真面目な表情でカルラに言う。

「全てを許して欲しいわけじゃねえ。けど……少し、あいつの心中を察してやってくれ」

「ええ、わかりました。エレンのパートナーですものね」

アスナが承諾し、ティナも「まあいいけど……」といい、カレンは「……わらわが本来のパートナーなのに……」といじけていた。

「カルラ様、ぜひとも、わたしにも戦いに参加させてください」

ランが真剣な表情でカルラとアドラに言う。

「そりゃ助かるが……いいのか?」

「はい。この命、若様に捧げた身。若様とみんなが生きるこの星を守るために、使わせて欲しく存じます」

「わらわも協力する」「あたしも。ひとりで待っているのなんてごめんよ」

カルラはふたりを見てうなずく。

「あんがとよティナ。それとカ……カレ……カレー?」

「カレンじゃご母堂!」

「すまねーすまねー。おまえアタシと名前にてるじゃん? だからつい……なぁカレラ」

「カレンじゃー! うわぁん!」

にしし、とカルラが笑う。

「そんじゃま、暇だし、てめーらを鍛えてやっか。だーりん、協力して」

「心得た」

かくして、カルラはエレン組と合流し、特訓を開始するのだった。