作品タイトル不明
174話 精霊王、謝る
精霊王ルルイエは、勇者エレンに看病をしてもらった。
異空間内時間で、数日後。
「うん、すっかり熱も引いたね」
エレンがにこりと笑って、ベッドに座りルルイエを見やる。
「ありがとう、エレン。おかげで助かったよ」
「気にしないで。ルルイエさんに助けてもらったことの方がずっと多いんだから」
熱も汗も引いて、ルルイエは万全の体調を取り戻した。
半身を起こして、エレンを見やる。
異性として意識するようになってしまい、彼を見ていると頬が赤くなる。
「またちょっと赤くなったけど、大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ……うん……」
「そう? 目が泳いでるけど……」
「気のせいじゃないかなっ」
ルルイエはエレンへの思慕の情はあった。
だが彼を大人の異性としては見ていなかった。
か弱い子供だと思っていた。
それが、ここ数日、彼の頼りになる面に触れたことで、意識が変化したのだ。
すなわち、彼もまたひとりのオスであると……。
「(は、恥ずかしい……急にとても恥ずかしくなってきたよ……)」
ルルイエは述懐する。
汗でベタベタになった体とパジャマ、そして下着を替えたのは、何を隠そうエレンだった。
「(そ、それに……解熱用の、あ、あれを……おしりに……ううぅうううう!)」
ぐわんぐわん、とルルイエは頭を振り乱す。
治療行為だったとは言え、さすがにあれをエレンに入れてもらったのは、とてつもなく恥ずかしい経験だった。
「まだ熱があるのかな?」
「大丈夫! もう大丈夫だから! 座薬は勘弁して!」
ふぅ……とルルイエは気を静める。
「エレン。改めて言わせて……本当に、ごめんなさい」
深々と、ルルイエは頭を下げる。
「今まで君に迷惑をいっぱいいっぱいかけて……ごめんね。君の大事な奥さんを、子供を、消そうとして……ごめんなさい」
ここ数日、人間の体となったことで、彼女の価値観に大きな変化がもたらされた。
今まで、ルルイエは不滅の 存在(せいれい) だった。
ゆえに命に対する価値観が、どこか軽かった。
……しかし、この数日間で、嫌でも思い知らされたのだ。
「人間は脆く、弱い……死んだら取り返しのつかない存在だったんだ。だから、人間にとって命とは、すごく重いものだったんだね。……なにも、僕はわかってなかったよ」
「ルルイエさん……ううん、ぼくこそ、わかってなかったよ。どんなに姿が似ていても、あなたは精霊で、ぼくたち人間とは異なる生き物だったんだって」
自分が精霊になったとは言え、まだなりたてだ。
彼は精霊がなんたるかをわかっていなかったのだ。
「エレン、ごめんよ。謝って済む問題じゃない。けど、ごめん……」
「ぼくのほうこそ、ごめんなさい」
エレンは深く頭を下げる。
「君が謝らないでおくれよ。僕が全部悪いんだ、僕が……」
「ルルイエさん……ひとりで、そんなに抱え込まないで」
エレンはルルイエを、正面から抱きしめる。
彼の細く、しかしたくましい体に抱かれていると……からだから力が抜ける。
このまま全てを委ねたい。
彼の言うことなら何でも聞きたくなる。
「ルルイエさん。僕らは、ちゃんと、話し合おう。教えて、あなたがどんな生き方をしてきたのか。どんなふうに物を見ているのか」
「でも……上手く話せるか……わからないよ……」
「大丈夫、ゆっくりでいいよ。脈略もなくったっていい。僕は、ルルイエさんの全てが知りたいんだ」
「エレン……」
ルルイエはうれしかった。
今まで、自分は好きになった相手を追いかけてばかりだった。
誰も自分を好きになってくれなかった。
唯一心を許せる人は 女性(カルラ) だった。
……こうして、向こうから、自分を知りたいと、自分を理解しようとしてくれる 男性(ひと) は、エレンだけだった。
「……わかった。おしゃべりしよう」
「うん」
「……ひとつ、わがまま言っていい?」
「どうぞ」
「……添い寝、して」
エレンは目を丸くする。
「あ、えと……いやなら断ってくれてもいいんだよ」
ふるふる、とエレンは首を振る。
立ち上がって、布団をめくり、ルルイエの隣に横になった。
「いいのかい……エレン?」
「だって添い寝して欲しいんでしょう?」
「でも……間違って、僕は君を襲ってしまうかもしれないよ? 欲望の限り君をむさぼってしまうかも……」
「それは……えっと、まあ……そのときは、そのときで」
エレンの顔が至近距離にある。
恥ずかしくなって、ルルイエはやや目をそらす。
「もしかして、照れてるの?」
「う、うるさいなぁ……初めてなんだよ。君を男性として意識するようになったのはっ」
エレンは嬉しそうに笑う。
今まで、ルルイエは自分の遙か上に居る、天上の存在だと思っていた。
しかし彼女もまた、男を前にして照れてしまうという、女の子らしい面もある。
ルルイエの知らない面を知れたことが、エレンにはうれしかったのだ。
「いっぱいお話しよ?」
「……そうだね。でも、寝たら承知しないよ?」
「しないよ。だってぼく、ルルイエさんについて、知りたいことたくさんあるんだもん」
こうして、誰かが自分をもとめてくれる。
そのことが、彼女にとってとても嬉しいことだった。
ルルイエは静かに、自分の生い立ちを話し出したのだった。
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あ、あれれぇ~?
おかしーぞぉ?
なんだよルルのやつ、うちのエレンとやってねーじゃねえか!
かぁ~~~~~~~~~~~~~! なぁにやっとんじゃー!
せぇっかくここまでお膳立てしてやったのにー!
やれよ! ずっこんばっこん!
まぁったくこのへたれコンビが!
……ま、いっか。
アタシの意図とはずれちまったけど、お互い理解するっつー当初の目的は達成できそうだしよ。
しかーし、この部屋はセックスするまではでれないのじゃー!
最後はちゃんとやってもらわないと困るからね、君たちぃ~?
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