作品タイトル不明
150話 8人の天使たち
ぼくたちの世界に、守護天使たちが攻めてきた。
上空にて、ぼくらは対峙する。
「貴様が人間の分際で、創造主たる神々に楯突こうとするおろかものだな?」
リーダー格らしき偉そうな天使が、ぼくを馬鹿にしたように笑いながら言う。
サンダルフォンさんから聞いた話だと、こいつはメタトロンというらしい。
「そうだ、ぼくはエレン。この世界の守り手だ」
「ぷっ! ぷぎゃははっ! 貴様のようなガキが、デカい口を叩く者だなぁ。人間が天使に勝てるわけ無かろう、なあ諸君?」
天使たちクスクスと笑いながらうなずく。
けどぼくは誰に笑われても、揺るがない。
「ルルイエさん。霊装を」
『ほい来たそらきたオッケーエレン!』
ぼくは漆黒の衣を纏う。
霊王形態(キング・フォーム) 。
精霊王(ルルイエさん) と完全に一体化することで、絶大な力を手にする。
「大人しく帰るなら見逃すよ」
「偉そうな口をきくな、下等種のくせに生意気な」
ふんっ、とメタトロンが鼻で笑う。
「もう良い。皆こ奴を殺せ。チリも残さず、八つ裂きにしてやるんだ!」
「「「応!」」」
天使たちがそれぞれの手に、輝く武器を手にする。
サンダルフォンさん曰く、天使は宝具という特別な武器を持っているらしい。
この間の、世界を海に変えたあれもそうだった。
神の力を借りて、地上を滅ぼす……最悪の兵器。
「……ルルイエさん」
『なんだい?』
「ぼくひとりじゃ……天使にも、神にも勝てない」
『そうだね』
「だから……力を貸して」
『ふふんっ、もちろんさ!』
ぼくはその手に聖剣を出現させる。
真っ白なはずの刀身は、霊王となることで、黒く染まっていく。
……まるで、ぼくの未来を暗示しているようだ。
けど、大丈夫。
「よし……来い!」
「死ね! 愚かな人間よ! 天使の偉大な力を拝んで死ぬが良い!」
天使がそれぞれの宝具を構える。
炎を凝縮した無数の刃、雷の槍、弾丸の雨あられ。
氷の鎖、樹木の化け物、巨大な土人形。
光の矢、闇の矢。
それらが無秩序に放たれて、ぼくに殺到する。
やっぱり、ぼくだけを狙った攻撃じゃなかった。
地面が燃え、空が荒れ狂い、大勢の人の命を奪っていく。
「あははは! 掃除だ! こんな腐った世界は我ら天使が一掃してやるぅううう!」
「そんなこと、させるもんか! 【 運命破棄(フェイト・ディストラクション) 】」
パキィン! とガラスを割ったような音がする。
その瞬間、破壊された者がすべて、元通りになった。
「なっ!? そんな……馬鹿なぁあああああああああああ!?」
驚愕に目を見開くメタトロンたち。
「宝具によって引き起こされた大災害を、一瞬で元通りにしただと!?」
『あはは! すごいだろ! これがエレンの力さ! さぁエレン……! エレン?』
「げほっ、ゴホッ……! だ、大丈夫……」
【運命破棄】は、体にかなりの負担がかかる。
それはぼくの体が、完全な精霊になっていない証拠。
『安心してエレン。すぐに、負担なんて感じなくなるから』
愛をささやくように、ルルイエさんが言う。
彼女は、こう言いたいんだ。
精霊になれば、運命破棄による体の負担はなくなると。
「…………」
ぐしっ、とぼくは口元を手で拭う。
手に染みついた血の色は、七色のそれだった。
人間の血では……ない。
けどいいんだ。ぼくが選んだ道だから。
「く、くそぉ! もう一度だ! もう一度一斉攻撃を!」
「そんなことさせない!」
ぼくは漆黒の翼を広げ、天使のひとりに肉薄する。
「なっ!? 早ッ……!」
「たぁ……!」
聖剣の一撃を土手っ腹に受けて、天使が両断される。
その次に慌てる天使2名を、一刀のもとに伏す。
「なんだ……なんだこれは……なにが……起きてるんだ……」
呆然とつぶやくメタトロン。
彼をよそに、ぼくは7体の天使を、瞬く間に討伐した。
『宝具に頼りきりの君たち天使とは違って、エレンは剣士としての修練を積んでいる。たとえ運命破棄が使えずとも、誰よりも強いのさ! さっすがエレン!』
「く、くそぉ!」
メタトロンが光の矢を放つ。
それはぼくの左腕を消し飛ばした。
……けれど、即座に左腕は元通りになる。
「み、見ろぉその腕ぇ……! おまえはなぁ……! もう人間じゃあないんだよぉ!」
『突然なに言ってるのこいつ? ああ……精神攻撃か』
ぼくの動揺を誘おうって魂胆らしい。
「そもそも天使の攻撃をなぁ! 防いでいる時点で人間じゃあないんだ! 良いかよく聞け! おまえはぁ……!」
「この姿になればなるほど、人間じゃなくなるんでしょ?」
「なっ……!?」
ぼくは背後から放たれた光の矢を、聖剣ですべて切り伏せる。
しゃべっていたのは、揺さぶりと、こうして死角から襲うつもりだったんだ。
「おまえ……それをわかって、なぜ戦う!?」
「決まってる……! あなたたちのような、悪人がいるからだ!」
ごぉ……! とぼくの体から漆黒の魔力が吹き出る。
どんどん、体が冷たくなっていく。
でもぼくは霊王形態を解かない。
目を閉じると、ぼくが出会ってきたたくさんの人たちの笑顔が浮かぶ。
そして、アスナさんとティナ。
そして……生まれてくる赤ちゃんの顔。
「弱く戦えない人たちのために刃を振る! それがぼくの使命! ぼくが納得してやっていること! おまえの言葉はぼくには通じない!」
「く、くそぉおおおおおおおお!」
光の矢を、メタトロンが頭上から振らせる。
霧雨のごとき降り注ごうとする矢めがけて、ぼくは力を使う。
「【 運命破棄(フェイト・ディストラクション) 】!」
パキンッ! という音とともに、矢はすべて消し飛ぶ。
そして、メタトロンの胴体も、真っ二つにされた。
「な、なにが……何が起きたんだ……!?」
「あなたの 時間(うんめい) を数秒間だけ消し飛ばした」
メタトロンの視点では、一瞬でぼくに攻撃されたように感じているだろう。
けど実際は体感時間がゼロになっただけ。
「馬鹿な……時間の概念にまで……干渉した……だと……」
ボロボロと、メタトロンの体が崩れてくる。
「そんなの……もはや……神じゃないか……」
「ぼくは神じゃない、勇者だ!」
「くそ……なんて……圧倒的な……力……くそ……くそぉ……」
消え失せようとするメタトロンはぼくに憎しみをこめていう。
「おまえのその力は……いずれ必ず破滅をもたらす……それでも持ち続けるのか……?」
「当たり前だ。ぼくはこの力で世界を救う。何があっても、ぼくは 精霊王(ルルイエさん) を手放さない」
ふっ……と煙のようにメタトロンは消滅するのだった。
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※ 作者(ルルイエ) 急病のためコメントお休みします。
原因は「旦那からの愛の告白による心臓発作」とのこと。
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