作品タイトル不明
141話 運命破棄《フェイト・ディストラクション》
帝都が襲撃を受けている。
その知らせを聞いて、ぼくはルルイエさんを纏った状態で現場へと急行した。
「…………」
帝都が燃えている。
数多くの人たちが倒れ伏し、建物は破壊されていた。
『いやぁ、普通に飛んで半月の距離を数秒でたどり着いたんだ。さすがエレン! すごいすごい♡』
ぼくはフゥ……と吐息をつく。
大丈夫、今のぼくなら、【やり直せる】。
「きゃはははっ! どぉうだぁエレンぅうううううううう! ルルイエぇええええええええ!」
燃えさかる帝都の中心部に、女性の姿があった。
綺麗な人だ。
けど隠しきれない邪悪なオーラが漏れている。
「誰、この人?」
『ユゴス。転生者達を送り込んできた、わるーいわるーい邪神の1体さ』
そう言えば、先日転生者達の襲撃があった。
そっか、この人が……。
「おまえの到着がおっせーからよぉ! ほらたっくさんの人たちが死んじまってるぜぇえええ! きゃはっ! きゃはははっ!」
『どうやらこの女が悪人達を集めて、帝都をめちゃくちゃにしたようだ! なんて悪いやつなんだ! 懲らしめないとね!』
ルルイエさんの言葉に、ぼくはうなずく。
「ひーっひっひぃ! あたしを殺してどうなるんですかぁ~? べっつにいいけどぉ、死んじゃった人たち、壊れたものはもうどうしようもないけどねぇ!」
「そんなこと、ない!」
ぼくはその手に聖剣を出現させる。
「ぼくがいるかぎり……誰の涙ももう流させない! 悲劇も! 惨劇も! ぼくが断ち切る!」
ごぉ……! とぼくの体から、凄まじい量の魔力が吸い取られていく。
ぼくひとりじゃ、決して発動できないこの技。
精霊王(ルルイエさん) と完全に一体化した今でなきゃ使えない、反則級の一撃。
聖剣は黒い輝きを放ちながら、天に向かって上っていく。
「何をするつもりかしらねーけどよぉ! おまえの遅れによって壊れちまったもんはもうもどらねえんだよぉ!」
「そんなことは……ない! ぼくは断ち切る! 悲劇の連鎖を!」
黒い光の剣を、ぼくは振り下ろす。
「【 運命破棄(フェイト・ディストラクション) 】!」
その瞬間、空間にひびが入った。
パリィン! とまるでガラスを粉々に砕いたような音がした。
「はっ! 何をしようが無駄無駄……って、ぇええええええええええええ!?」
ユゴスが驚愕の表情で、彼らを見やる。
「なんでぇえええ!? ぜ、全部! 全部元に戻ってるだとぉおおおおおお!?」
そう、壊れた街も、燃えさかる帝都も……死んでいった人たちも。
すべてが元通りになったのだ。
ぼくは悪人達を転移させ、帝都の外へと連れて行く。
「なんなんだよさっきのはぁ!?」
『ハッ! 聞いて驚け見ておののけ! さっきのは 霊王形態(キング・フォーム) の秘奥義【 運命破棄(フェイト・ディストラクション) 】!』
「ふぇいと……でぃすとらくしょん……?」
『因果に干渉し、エレンが到着する前に起きた、あらゆる悲劇、惨劇を【無かったことにする】必殺技さ!』
愕然とした表情で、ユゴスがぼくらを見やる。
「悲劇を……なかったことにする……? ま、まさか……!」
『そう! この技があれば悪人が行った理不尽な殺傷・略奪による悲劇を。文字通りこの世界において行われなかった、と事象を書き換えることができるのさ!』
どさり、ユゴスが膝をつく。
「そんなの……反則だ! だって、これじゃああたしがいくらどこで人を殺しても、全部無かったことにされるじゃないか! 何もかもが、無意味になるじゃないか!」
涙を流しながら、ユゴスがぼくを見上げる。
「あたしの苦労が水の泡だ! どうしてくれる!」
「ふざけるな!」
ぼくの怒りに反応して、聖剣がさらに黒く光る。
「何が苦労だ! 人の命を理不尽に奪っておいて! ぼくは許せない……あなたたちみたいな悪人を! 絶対の絶対に許せない!」
『ふふ、運命破棄はエレンが望んで作られた、エレン専用のスキル。つまりはユニーク・スキルとも言えるもの。誰にもマネできない、行使できるのはエレンだけさ』
ぼくは不死鳥の翼を広げる。
霊王形態での翼は……漆黒のそれだった。
「悪魔……」
ユゴス達が呆然とつぶやく。
ぼくは黒い翼を広げると、漆黒の羽が周囲に広がる。
「【 黄泉送り(ジ・エンド) 】」
羽が舞い散り、それが悪人達の頭に触れた瞬間……。
ドサリ、と倒れる。
「な、なんだぁ!? 何をしたんだぁあああああああああ!?」
『全生命力を一瞬で奪い、即死させるエレンのユニークスキルさ!』
がくがくがく、とユゴスが体を震わせる。
「なんだそれは……そんなの……そんなの……勇者の技じゃない!」
『ばーか。エレンはもはや勇者を超越しているのさ。この世全ての悲劇を無かったことにし、法で裁けぬ悪人には報いを与える。それを人はなんと呼ぶかな?』
「神……?」
『そう! エレンは神に匹敵する力を現世で持ったただひとりの存在! 言うなれば……そう! 【勇者神エレン】となったのさ!』
ぼくは黒い聖剣を手にして、構える。
「終わりにしよう」
「い、いやぁああああああああ! 待って! 待ってぇええええええええ!」
あれだけいた悪人達は、もうあと数名くらい……というかユゴスだけだ。
「すみませんでしたエレンさまぁあああ! どうかお許しを! お願いします! やり直しますから! お願い、助けて、勇者神さまぁあああああああ!」
ぼくは剣を振らない。
もはや、剣を振らずとも、相手を切ることができる。
因果に干渉し、【剣で斬った】という事象を相手に書きくわえることで、倒すことができる。
『やっぱりエレンはすごいよ! もはや敵無しだよ! すごい! すっごいよぉ!』
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いやぁ、もう神!
エレンは神になったのだ! わーはっはっはー!
いやぁもうね、鼻が高いよ。
僕の可愛いエレンが今や神だもん!
出世したもんだなぁ……!
それを実現させたのが僕との合体って言うのがね、もう最高!
……さて。
え、ペナルティが回避できたと思っているのかい?
ユゴスちゃん、そんなの許されるわけがないんだよ。
君の犯した罪には罰を。
たとえ慈悲深いエレン神さまが許しても、僕が決して許さないからね。
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