作品タイトル不明
139話 ユゴス、皇子を利用し帝国を支配する
勇者エレンが精霊界へ向かって、3ヶ月が経過した。
王国の隣にある、マデューカス帝国。
帝城の地下牢にて。
現・皇帝はとらわれの身になっていた。
「ぶざまだねぇ~父上~」
地下牢に、ひとりの男がやってきた。
「グスオ……!」
彼の名前はグスオ。
元皇子である。
聖女クレアを追放し、 毒竜(ヒュドラ) によって帝都を危機におとしめた罪で、追放された皇子だ。
「貴様! 命を取らないで追放処分で済ませてやった恩を忘れ、クーデターを企むとはどういう了見だ!?」
先日、帝都の城を、このグスオが率いる軍勢が占拠。
現皇帝は捕らえられ地下牢へ。
そしてグスオがクーデターを成功させ、新たに皇帝の座についた次第だ。
「僕を理不尽に追い出した父上が悪いんだよぉ~。ね~ユゴス~♡」
グスオの隣に立つのは、息をのむような美しさの女性だ。
扇情的な衣装に、起伏に富んだ体つき。
並の男ならその美貌に惹かれて、ほいほいと言いなりになってしまうであろう。
「貴様……! 皇族ともあろうものが、こんな女の言いなりになるとは! 嘆かわしいぞ!」
グスオはフンッ、と小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「なんとでもいえよ。どうわめいたところで僕に逆らった元皇帝の派閥の人間は、【連合】が全員始末した」
「そ、そんな……」
ユゴスの周りには、多数の魔族の姿があった。
彼女が集め、束ねて作った連合の構成員達だ。
「よもや魔族と手を組むとは……! 皇族の恥さらしめぇ!」
がんがん! と皇帝は牢屋の鉄格子を殴る。
「まるでお猿さんみたいだね、ユゴスぅ~♡」
「ええ、そうねグスオ」
ふたりは見せつけるように熱いキスを交わす。
「おお……なんということだ……こんな女にたぶらかされるなんて……」
とは言え偽聖女ベラドンナに騙されていたこともあったので、これで二度目だ。
「じゃあね父上。帝国は僕とユゴスがよりよい国に作り上げてあげる。そしていずれは世界を征服してみせるよぉ~」
「ま、まさか……! 帝国の民を使って他国と戦争を起こすつもりではなかろうな!?」
「そのまさかさ! 見せてあげるよ、現皇帝グスオ様が、世界を1つにまとめる姿をなぁ!」
ユゴスによっておだてられ、グスオはすっかり増長していた。
あなたは特別だと、あなたにならできると。
ユゴスはベッドでグスオに何度もささやいた。
その結果、彼は調子に乗って叛逆を起こし今に至った。
「なんてことだ……帝国は、もうおしまいだ……」
がっくりと肩を落とす皇帝。
一方でグスオは邪悪な笑みを浮かべていう。
「おしまいなものか。これが始まりですよ父上~。帝国が全てを支配するという、最強国家の幕開けがねえ!」
ぎゃはぎゃはと耳障りな笑い声をあげながら、グスオはユゴスとともにその場を去る。
元皇子の隣を歩くユゴスは、常に微笑をたたえている。
だがその腹の中では、勇者と精霊王に対する憎悪の炎が渦巻いていた。
「(見ていろ勇者ぁ! 精霊王ぅ! おまえらがいないあいだにこの世界をメチャクチャにしてやるぅ!)」
ユゴスが行おうとしていることは、端的に言えば嫌がらせだ。
エレンが守った世界を、帝国を使ってめちゃくちゃにする。
悪人達を束ね作った連合と、同じようにエレン達に恨みを持つこの元皇子とが結託し、新たなる混沌とした世界を作り上げる。
勇者は自分の居ない間に世界が壊滅し、多くの人々が死滅したことを絶望するだろう。
その結果ルルイエに始末されるとしてもいい。
「(ルルイエぇ! てめえの大好きなエレンをあたしがぶっ壊してやるよぉ! ぎゃははははは!)」
グスオの心を掌握し、クーデターを起こさせ、帝国を手に入れた。
次なる目標は、帝国の民を使って、エレン達の住む王国に打って出させることだ。
「(エレン達は帰ってこない、今がチャンスだ! こわして、こわして、壊し尽くしてやるからなぁ! ぎゃははははは!)」
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ま、僕のエレンがそんなことさせないんですけどねー。
しかしこのバカ女神も学ばないね。
この世界で起きていることは、精霊達の目を通して僕に知らされるというのにさ。
さて……と。
お膳立てどうもありがとう、咬ませ犬のユゴスちゃん。
さぁ、修行を終えた勇者の凱旋だ。
思う存分、無様をさらしてくれよ、女神ユゴスちゃん。
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