軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

137話 女神復活し、悪人を集め連合を作る

勇者エレンが精霊界に旅立ってから、2ヶ月ほどが経過したある日のこと。

エレン達の拠点、トーカの街にて。

「金……金金……くそっ、どこかに金は落ちていない物か……」

垢のついた肌に、腐臭を漂わせる。

彼の名前は【ランページ男爵】。

否、元男爵。

かつては貴族として名前をはせていた。

だが幽霊屋敷騒動の際、エレンともめ、その結果全てを失った経緯があった。

「見てあれ……ランページ男爵じゃね?」

「うわっ、マジだ。今じゃ落ちぶれたもんだなぁ」

「ぷっ、きもーい、くさーい」

通行人達はみな、ランページの身なりをあざ笑う。

プライドの高い彼にとっては、耐えがたい苦痛であった。

「くそぉっ!」

自分を馬鹿にした通行人に、殴りかかろうとして……やめる。

「……くそっ」

脳裏に想起させられるのは、彼に刃向かった結果どうなったかということ。

勇者エレンにたてつき、その結果土地神の怒りを買ってしまい、全てを失った。

「……肩身が狭い世の中だ」

ため息をつきながらふらふらと歩いていると、吟遊詩人が子供達相手に物語を言い聞かせていた。

「魔王を打ち倒した勇者エレン! 彼のおかげで世界は今日も平和なのでした、めでたしめでたし」

「「「えれんさまかっけー!」」」

今やエレンは平和の象徴だった。

人々に希望を、そして悪人には……絶望を与える。

勇者という存在が、犯罪の抑止力に働いていた。

何か悪事を働けば、不死鳥の翼を広げて、自分の前に現れるのではないか……と。

「……嫌な世の中だ、まったく!」

と、そのときだ。

「ほんと、その通りじゃわい」

誰かがランページに声をかけてきた。

「なんだ貴様は……?」

「わしは奴隷商人の【スレイヴ】。……まあもう全て失い、ただのスレイヴ、じゃがな」

その瞬間、ランページは理解する。

このスレイヴという男もまた、エレンに刃向かって、身を滅ぼした男だということを。

ふたりは意気投合し、人気のない路地までやってきた。

「わしだけではない。勇者エレンの不興を買い、不幸になった人間をわしは大勢知っておる」

「そ、そんなにいるのか……?」

この世には法で裁けない悪というもの複数が存在するのだ。

「どうだ、わしと手を組まぬか、ランページ元男爵?」

「手を組むって……具体的にどうするんだよ?」

にんまり、とスレイヴは笑うと言う。

「ついてこい。良いところを紹介してやろうぞ」

スレイヴの高圧的な態度にイラッときたが、しかしどこか自信に満ちあふれた笑みを浮かべていた。

ランページは不審に思いながらも、彼と2人トーカの街を出る。

馬車を使い王都へ向かうと、貧民街へとやってきた。

「なんだねここは?」

ガリガリに痩せ細った子供達や、濁った目をした大人達がうつむている。

「貧民街じゃ。孤児、借金を背負い居場所を失った物、そういうクズどもの吹きだまりじゃ」

「こんな薄汚れた場所で、いったいなにをするというのかね?」

「くく……まあついてくれば自ずとわかることじゃよ」

薄暗い路地を抜け、やってきたのは1軒のバーだった。

カウンターで特別な注文をすると、奥の部屋へと通してもらった。

そこには、数多くの男達がひしめき合っていた。

「な、なんだこいつらは?」

「みな【彼女】のステージを楽しみにしている、同胞達じゃよ」

「彼女……?」

ほどなくすると、部屋の中央にはステージがあって、そこがスポットライトで照らされる。

現れたのは、扇情的な踊り子の衣装を身に纏った、仮面の女だった。

「おお! なかなか美しい女ではないか。して、スレイヴよ、これはなんだ?」

「愉快なショーじゃよ。なぁに、楽しむが良い」

しばらく怪しげな音楽に合わせて、仮面の女は踊り出す。

乳房も尻も惜しみなく見せつけながら、男達の性欲をかき立てるような踊りをする。

男達は女の踊りを見て興奮していた。

誰もがメリハリのある美しい体の、この女をむさぼりたいと思っている様子だった。

かくいうランページも、久しぶりにあんな美麗な女を抱いてみたいという欲求に駆られた。

ややあって。

「お集まりの皆さん、こんばんは」

仮面の女がステージの上で言う。

目の部分を隠すだけのような仮面だ。

口元をほころばせる。

「ここに居る方々は、世間に不満を抱いている方が多いと思います。……特に、勇者の存在が目障りではありませんか?」

男達は女の言葉に耳を傾け、熱心に首を縦に振る。

よく見れば、みなランページと同じ目をしていた。

世間を、正義を、そしてなにより 勇者(エレン) の存在を憎むものたち。

「わたしもまた勇者エレンに恨みを持つ……あなた方の同志です。あやつのせいで辛い日々を送ってきたことでしょう、肩身の狭い思いをしてきたかと思います。お気の毒に……」

女が親身に語りかけ、しかも自分の思っていることを口にしてくれた。

ランページは次第に、彼女に心を開いていく。

「我々ひとりひとりの力は弱い、しかし力を合わせれば、あの憎い勇者を倒せるやもしれません。どうでしょう? おたがい手を取り合いませんか?」

微笑んで、女が言う。

「わたくしはあなたたちを最大限サポートいたします。何でも申しつけください」

「なんでも……」

「ええ、なんでも。必要とあらば閨もともしましょう」

ごくり、とランページが生唾を飲む。

ここにいる大半の犯罪者達は、みなこの肉感的な女性に虜になっていた。

「お、おれ……協力しよっかな」

「わたしも!」「わしもじゃあ!」

ランページもまた、名乗りを上げる。

女は蠱惑的に笑う。

「では我ら【連合】を名乗り、全国から同胞を募りましょう。巨大な勢力を作り上げるのです」

「「「はい!」」」

「ツテのあるかたはそれを使い、そうでないかたは各街へ回り、同じ境遇の人たちを見つけてくるのです。多く見つけてきた方には、それだけご褒美を用意しておりますわ♡」

「「「おおぉおおお!」」」

男達はすっかり、女の言いなりになっていた。

犯罪者達は発奮し、バーを出て行く。

やがて、ひとりだけになったステージの上で、女は仮面を取る。

「……今、あの目障りな勇者と邪神がいない。世界を掌握するなら、今のうちよね」

そこにいたのは……女神ユゴスだ。

一般人に成り果て、正気を失ったはずの彼女。

再起し、彼らに復讐を誓ったのだ。

「覚えておけよ勇者エレン、邪神ルルイエ! わが【連合】が世界をめちゃくちゃにしてやる! そして自分の不在で世界を壊してしまった罪の重さに押しつぶされるが良いわ!」

高笑いする元女神は、まるで魔女のようであったのだった。

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うわ、ユゴスまだ生きてたの?

キショいんですけど。

ゴキブリみたい。

ま、どうでもいいや。

少し放っておいてやるよ。

修行を経て強くなったエレンの、咬ませ犬役が必要だからね。

ま、せいぜい頑張ってザコを集めなよ。

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