軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝 第十五話 院長先生の不安

「アルフィーネ、フィーン君、お手柄だったようだね。村の人が狼を狩ってくれたことを伝えてくれたよ。狼の被害はこれでしばらくおさまりそうだ」

「できることをしてるだけですから。それに剣の鍛錬にもなりますし……。あ、でも、アルフィーネがほとんど退治したんですけどね」

「フィーンのおかげで、倒せただけだから」

院長室に入ると、すでに狼退治の話は院長先生に伝わっていた。

勧められたソファーに腰を下ろすと、フィーンが報告を続ける。

「毛皮は村の人が綺麗に剥いで売ってきてくれるそうで、代金の一部を孤児院に寄付してくれるそうです。大きな狼でしたので、それなりの金額にはなってくれるかと」

「すまないね。本来ならわたしらが寄付を募って運営資金を捻出せねばならないのに、君らに頼る形になって申し訳なく思う」

申し訳なさそうな顔をしたダントン院長は、あたしたちに深々と頭を下げる。

小さい時からずっと優しく接して育ててくれた人であるし、今の自分があるのは院長先生のおかげであるため、運営を手伝うのは孤児院に生活する年長者としては当然のことだった。

「院長先生には山中での鍛錬を許可してもらってますし、あたしが上手にできることは害獣狩りくらいなので気にしないでください」

あたしの言葉にダントン院長先生は顔をあげる。

その顔はなぜか暗く淀み、苦悩しているような表情が一瞬だけ垣間見えた。

最近になって、ダントン院長先生もフィーリア先生も、あたしの剣術が上達していくのを見て、顔を曇らせてる気がする。

女の子が剣術を上手くなるのは悪いことなのかな……。

あたし以外、剣術やってる女の子を村では見ないし。

院長先生が見せた一瞬の表情に、自分が悪いことをしているのではとの思いが駆け巡る。

「話は変わるが……二人とも卒業後は王都で冒険者になる決意に変わりはないかい?」

いつもの穏やかな表情に戻った院長先生が、あたしたちの卒業後の進路を聞いてきた。

卒業まであと三か月。

村の中で仕事を探しても、孤児院を助けられるほど稼げる仕事はないし、自分が一番稼げるのはやっぱ剣の腕を頼りにやれる冒険者しかないと思う。

フィーンもあたしと一緒についてきてくれるって言ってるし、二人でならきっと冒険者として成功して、孤児院にいっぱいお金を渡せるはず。

そう思って、院長先生夫妻から進路を聞かれた時、冒険者になると答えていた。

「はい、王都に出ようと思います。フィーンも一緒に」

「アルフィーネだけじゃ、心配なので僕も一緒についていくということで話し合いは済んでます」

心配性のフィーンは、冒険者になって命を落とした先輩たちの話を聞いて、村で狩人になる道もあると言ってくれたけど、それじゃあ孤児院は維持できないというと、渋々ながら王都で冒険者になることに賛成してくれた。

フィーンの心配も分からないことはないけど、危険は多いけど冒険者になってお金をいっぱい稼げば、孤児院も裕福になるし、あたしたちもどこかに家を持って安楽に暮らしていける。

フィーンと夫婦になって、村のどこかに家を構えて、子供を育ててゆっくりと歳を重ねるためには、やっぱいっぱいお金がいるし。

脳内に浮かんだフィーンと一緒に子供をあやす自分の姿を見て、頬を火照る気がした。

「そうか……。二人がその気なら、わたしから止めることはできないな……。フィーン君、王都に出たらアルフィーネのことしっかりと頼む」

「はい、分かってます。僕がしっかりとアルフィーネを守りますから安心してください」

「なにかあたしだけ心配されてる気がするんですが?」

「そりゃあ、フィーン君は穏やかで世事に長けて話も上手いから、色んな人が集う王都でも上手くやっていけるとは思うが――」

院長先生があたしに視線を向けると、大きなため息を吐いた。

「アルフィーネ、君は人への好悪が激しいし、人見知りするし、剣術にしか興味がない。しかも、頑固で自分の意見を曲げない性格だ。人が少ない村の中なら周りの配慮で何とかなるが、人の多い王都に行けば軋轢が生まれかねないことを危惧しているのだよ」

子供の時に比べれば多少マシになった気はするんだけど……。

ダントン院長先生から見ると、まだあたしの人との関わり方は心配ってことかな。

フィーンが交渉担当で、あたしは実戦担当って役割を分けておけば、無駄に人と関わらずに済んで軋轢も起きないはずだと思う。

「大丈夫です。なんとかしますから。あたしは黙々と剣を振る仕事をしてれば満足ですし」

「そういう姿勢のことを危惧しているのだよ。ちゃんとフィーン君以外にも、心を許せるお友達を作りなさい。王都に住むなら、絶対にそうした方がいいい」

フィーン以外の友達……?

そんなの絶対に必要ない気がするんだけど……。

なんでダントン院長先生はそんなこと言うんだろうか?

とりあえず心配されてるようだし、作る気はないけど返事だけはしておこうっと。

「分かりました。探してみます」

「そうしてくれるか……。アルフィーネがそう言ってくれるなら、わたしも安心して送り出せる」

院長先生はあたしの返事を聞いて安堵した顔をしている。

でも、フィーン以外に友達なんてできるのかな……。

ただでさえ、知らない人と話すのはおっくうなのに。

卒業にあたり院長先生から出された課題にどう取り組もうか考え出したら、頭が痛くなるのを感じた。

それからあたしたちは卒業までの期間を山中での鍛錬に費やし、卒業の日を迎えることになった。