軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝 第十四話 卒業へ向けて

「フィーン、静かに。前に三頭、後ろに二頭いるよ」

「うん、分かってる。僕が前の三頭を抑えてるから、アルフィーネが先に後ろの二頭やって」

視線の先には、卒業して冒険者なった孤児院の先輩から譲ってもらった使い古しの革鎧に身を包み、木剣と木の板で作った即席の盾を構えたフィーンの姿があった。

一五歳の新年を迎え、あたしが伸ばすようにフィーンの前髪は目を覆うほど長くなり、綺麗に整った彼の容貌を隠すことに成功している。

そして、三年前喧嘩した一件以来、フィーンは常にあたしのことを気にして行動してくれるようになり、朝起きてから寝るまでほとんどの時間を一緒に過ごすことができるようになっていた。

おかげで他の女子とおしゃべりすることや作業することは減り、そっちのモヤモヤは解消されつつある。

そんな関係を築いたあたしたちは、獲物がなくてお腹を空かせ、村の家畜を襲いに来ていた狼の群れの生け捕りを依頼され、冬の山中でやっと見つけたところだった。

卒業後は冒険者になることに決めているため、卒業が近づくにつれ、鍛錬がてら山に入ることは院長先生たちに許してもらえている。

「フィーン、すぐに後ろの二頭は片づけるから、無茶はしないでね」

「ああ、分かってるさ。でも、僕だってそろそろ狼くらいは退治できるさ」

この二年であたしとフィーンの剣の腕の差はさらに広がっている。

あたしが簡単にできることも、フィーンにはとても難しいようで、指導をするたび彼ができないことにもどかしさを感じ、苛立ちを感じるようになっていた。

できれば自分と同じくらいの剣の腕で、自衛できる強さを持って欲しいと焦る気持ちだけが膨らんでいく。

ただ、身長はあたしに追いつき、ほぼ同じくらいまで伸びてくれたので、男子ということもあり体格の向上で剣の腕が上がることを願いたい。

色々と頭の中で考えていたら、前方の狼たちがフィーンの前に姿を現す。

後ろの狼も前の狼に動きを合わせて姿を現した。

「フィーン、いくわよ」

「うん!」

手にした木剣を構えると、お互いが担当することを決めた狼に向かい駆け出す。

目の前に姿を現した狼は、魔物ではないものの、かなり成長した個体だった。

でも、これくらいなら何度も倒してきてる。

動きも読めるし、そんなに手間はかからないはず。

飛びかかってきた狼を想像で予測した通りにかわし、がら空きの胴体に木剣を打ちつける。

「がふっ、がふぅ!」

「悪いけど、村の家畜を襲ったのが悪いんだからねっ!」

飛びかかってきた狼を一撃で気絶させ、もう一頭の動きを探る。

あいつ怯えてる。でも、逃がすとまた家畜を襲い来るだろうし、仕留めないと!

尻尾を下げ戦意を喪失しかけている狼へ駆け寄ると、すれ違いざまに正確に脳天を打ち抜いて気絶させた。

「フィーン! こっちは終わったよ! そっちは!」

背中越しにフィーンの戦況を聞く。

「こっちはまだ一頭! あと、二頭は――そっちに行った! ごめん、頼んでいい?」

「いいよ。あたしが倒す!」

フィーンからの警告で背後の迫る二つの気配を感じ取る。

あたしを無視して逃げるか、襲うか迷ってるみたいな気がする。

でも、悪いけど退治させてもらう!

地面を蹴って後ろに宙返りすると、あたしの両脇を駆け抜けて行こうとした狼の後頭部を見えた。

そこだ! これで終わり!

地面に足を着くと、素早く剣を振り抜き、逃走を図った二頭を気絶させた。

「すっげえ……。毎回思うけど、やっぱアルフィーネの剣技ってすごくないか? 僕、なんかじゃずっと追いつけない気がするんだけど……」

「そんなことないよ。フィーンだってこれくらいきっとできるはずだって! あたしができてるんだもん。練習次第だよ! それより、早く狼を縛っておこう。また、暴れられると困るし」

剣技に見とれてボーっとしていたフィーンに狼を拘束するように声をかける。

「あ、ごめん。すぐに準備する」

村の人からは毛皮を綺麗に剥ぎ取るため、生け捕りを要望されており、口と手足を木の棒に縛って持ち帰る予定だ。

「拘束するのはフィーンに任せるから、あたしは群れからはぐれた狼がいないか警戒しとくね」

「うん、頼むよ。すぐに持って帰る準備を終わらせる」

それからあたしが周囲の警戒をして歩いている間に、フィーンによって狼は手早く拘束され木の棒に吊るされた。

「アルフィーネ、準備終った。村に戻ろう」

「うん、はぐれた狼はいなさそうだし、そうしよっか」

二人で木の棒を担ぎ上げると、麓の村に戻ることにした。

「ふぅ、これでしばらく家畜を襲う狼も出ないだろう。フィーン、ありがとうな! 綺麗に剥いで加工した毛皮の代金の一部は院長先生に渡しておくよ」

「ありがとうございます! そうしてもらえると院長先生もきっと助かります。また、何かあったらすぐに言ってください」

「おぅ、フィーンたちが孤児院卒業して冒険者になったら、依頼で指名するぜ。その時は安くしといてくれよな」

「ちゃんと既定の依頼料はもらいますよ。そうしないと僕たちがご飯食べられませんし。でも、確実な仕事はさせてもらいます」

「フィーンはしっかりしてるなぁ。分かったよ。頼むときはしっかりと仕事してくれよ!」

「はーい! その時はよろしく!」

あたしと違って人当たりのいいフィーンは、村の大人たちとも仲が良く、鍛錬のため山に入るのを許してもらってからは、何かにつけて山の中でしか採取できない物を頼まれたり、野生動物の駆除も頼まれたりしている。

本当なら子供は山に入っちゃダメって言われてるけど、三年前に巨大な熊を一人で倒してからは、院長先生始め、村の大人も山に入ることに文句を言わなくなった。

おかげでこの数年、ほとんど孤児院での勉強はたまにしか顔を出さず、山の中に入り浸って、依頼をこなしたり、剣の鍛錬を続け日暮れに帰ってくることを続けている。

「アルフィーネ、お待たせ。孤児院に帰ろうか。今日の成果を院長先生たちに報告しとかないと」

「そうだね。また、忘れてると呼び出されて怒られるし、ご飯食べて眠たくなる前に報告しとこっか」

山での鍛錬をする許可を出す前提として、一日の成果を必ずダントン院長先生とフィーリア先生に報告する約束をしているため、完全に日が暮れる前に二人に会っておかなければならなかった。

あたしたちは急いで孤児院に戻ると、子供たちへの指導を終え院長室にいると思われるダントン院長先生に会いに行くことにした。