軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝 第十二話 喧嘩

「フィーン、あの子たちと一緒に家畜の世話をするなんて、あたしに言ってなかったよね!」

「アルフィーネは院長先生からの用事をしてたし、僕は暇だったから手伝っただけだよ」

「なんで勝手にあの子たちの誘いを受けるの。酷いよ! フィーン! フィーンはあたしをひとりぼっちにするの!」

「アルフィーネ? なんで、そんな話になるのさ? 僕はここにいるだろう? アルフィーネをひとりぼっちにしてないって」

戻ってきたばかりのフィーンは、初めて怒りの言葉をぶつけたあたしに戸惑いの表情を見せる。

フィーンに言いたい言葉はもっと違う。

でも、上手く言い表す言葉が見つけられなくて、イライラが募り、爪を噛む。

「アルフィーネ、また爪を噛んでるって! やめなよって言ったよね?」

「分かってないよ! 分かってない! フィーンの馬鹿! もう、知らない!」

持て余した感情を上手く処理できず、フィーンに強い言葉をぶつけて、あたしは部屋から飛び出した。

きっかけは些細なことだった。

フィーンが他の女の子たちと動物の世話をしているのを見て、自分の中で溜まっていたモヤモヤを部屋に戻ってきた彼にぶつけてしまった。

小さい時からずっと一緒に生活してきたけど、あたしが自分の制御できない感情を初めてぶつけたことで、フィーンも戸惑いの表情を見せて、喧嘩になってしまったのだ。

フィーンに初めてぶつけた自分の強い言葉に自己嫌悪して、その場にいることができず、彼の制止を振り切り孤児院を飛び出すと、村の大人たちに入るなと言われた村を囲んでいる山の中に入っていた。

そろそろ、日が暮れてきちゃう……。

でも、戻ってフィーンと顔を合わせるのは気まずい。

頭を冷やしてから戻らないと、またフィーンと喧嘩しちゃいそう。

山中から日暮れ間近となり、明かりの灯った孤児院の様子を見ると、その場を離れ、さらに山中深くにわけいることにした。

人の気配の一切しない山中は、薄暗さがあるものの、孤児院の生活で常にあたしを覆っていた不安感を和らげてくれて、逆に居心地の良さを感じている自分がいる。

これでフィーンが隣にいてくれたら、気分も最高で、余分なことも考えず、楽しく生活していくことができそうなんだけどなぁ。

山中を歩いていると、不意に喧嘩したフィーンのことを思い出し、心臓の部分がズキリと痛む。

なんで、あんな意地悪なことを言っちゃったんだろう。

フィーンだって、たまには自分のやりたいことをしたい時もあるのは分かるし。

でも、その時隣にいるのがあたしじゃないのが、不満だったのかな……。

色々と喧嘩した時のことを考えつつ歩きながら、野営の焚火を作るため、枯れた木の枝と石を集めていく。

その途中、食べられる茸と木の実を見つけたので、一緒に採るとポケットの中に詰め込んだ。

しばらく歩くと、山からの雪解けの水が湧き出た水源も見つかった。

この前、野営技術を教えてくれた冒険者の人から、生水は飲むなって言われてるけど、あたしもフィーンも生水には一度も当たったことないし、大丈夫だよね。

湧き出していた湧き水に口を付けると、雪解けの冷たさで歩いてきて火照っていた身体が一気に冷える。

うん、変な味もしないから大丈夫そう。

今日はここで野営しようっと。

野営の場所を決めたあたしは、手早く拾ってきた石を並べ、枝を細かく折っていく。

準備ができたから、種火を作らないと……。

火打石は拾ったから、モコモコの冠毛が付いてる草はあるかな。

時期的に見つかりにくいかなと思ったけど、モコモコした冠毛を生やした草が残っていたので、丁寧に集めると枯草をまとめた物の上に置く。

火打ち石から飛び出した火花が、モコモコの冠毛に着火し、周りの枯れ草を巻き込んで火種となっていた。

「よし、できた。この前習ったとおりにやったら、意外と簡単だ」

火種になって赤い光と煙を吐き出し始めた枯草の塊を、折った小枝の山の下に入れると、空気を吹き込み火勢が強くなり、大きな枝にも着火して焚火が安定して燃え上がった。

「これで焚火はできた。茸は枝に刺せば焼けるよね」

一〇歳になった時から、フィーリア先生に料理の手ほどきをしてもらっているけど、一向に料理の腕は上がっていない。

フィーリア先生によれば、食材を切るのはとても上手いらしいけど、問題はあたしの味付けが独特すぎるみたい。

きちんと先生に言われた分量を守ってて、自分で味見するとちょうどいい味なんだけどなぁ。

もしかしたら、何か他に味を足してみた方がいいのかもしれない。

孤児院を出てフィーンと二人で暮らすためには、料理はきちんと習っておかないといけないし。

そうだ! 頭を冷やして孤児院戻ったら、フィーンに謝罪の気持ちのお菓子作って食べてもらおう。

それがいいよね。甘い物は正義だし。

でも、お砂糖は高くて使えないから、明日から数日かけて山に生えてるベリーを採取して孤児院に帰ろう。

ちょっと時間はかかるけど、自分の頭を冷やすにはちょうどいいくらいの時間になるかも。

メラメラと燃え上がった焚火で木の枝に刺した茸をあぶりながら、フィーンとの仲直り方法を考えた。

茸を食べ終えると、周囲の草を集めて山盛りにし、その中に身を埋め、焚火を燃やしながら、まだ肌寒い春の夜を過ごした。