軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝 第十話 変調

「アルフィーネ、剣は人に向けて使わないってお約束したはずよね? なんで、ロレアルを木剣で殴りつけたのかしら?」

気を失ったフィーンを医務室に運び終えたあたしは、ロレアルの治療をしているフィーリア先生から厳しい口調で詰問された。

あたしは身体中に包帯を巻かれベッドで眠っているフィーンの手を握ったまま、無言を貫き通している。

「フィーン君の状況から見ても、大体の察しはついてるけどね。でも、他の子からの話だけじゃ不公平だからアルフィーネの口からちゃんと説明して欲しいわ。そうしないと、その木剣を取り上げなけらばならなくなる」

ロレアルの治療を終えたフィーリア先生が、厳しかった口調を改めると、そうあたしに問いかけた。

膝の上に置いた血の付いた木剣に視線を落とす。

説明って言われても、あの時のことを思い出すと今でも心がモヤモヤしてくる。

それにあたしからこの木剣を取り上げるなんて酷いよ。

あの時のことを言いたくないわけじゃないけど、上手く説明できる言葉を自分では見つけられない。

フィーンどうしよう、なんて言えばいいか分かんないよ。フィーン。

そんな自分にイライラが募り、自然と指の爪を噛んだ。

「アルフィーネ、黙っていたら分からないわ」

「フィーリア、そうアルフィーネを責めてやるんじゃない。ロレアルもフィーン君に対しやりすぎてたという証言も出ている。過剰だったということはあるが、本人も反省しているようだし、今回は罰として清掃奉仕作業を増やすという形でどうだろう」

困った顔をしていたフィーリア先生をたしなめたのは、他の部屋であの場にいた他の子たちからの詳しい話を聞き取っていたダントン院長先生だった。

話を聞き取って、あの時起きたことを把握したらしい。

「けど、それじゃあ他の子たちに示しがつかないわ。木剣とはいえ人に向けたのよ」

「それはそうだが、誰かを守るために剣を振るうことまでは禁じてはいけないだろ? 明らかにロレアルはフィーン君に対しやり過ぎた行為をしていたのだし、幸いにしてロレアルは見た目は酷い怪我だが、重大な後遺症は残らないのだろう?」

「ええ、まぁ。折れた鼻の骨が曲がってるのが戻らないくらいで、若いから後の傷は回復すると思うわ」

「今回の件はわたしたちの目が行き届かなかったこともあるし、アルフィーネにだけ責任を負わせるのは酷だと思う。彼女に罰を与えるのであれば、わたしらも同じく罰を負わねばそれこそ不公平というものだ」

ダントン院長先生は優しくあたしの頭を撫でてくれてた。

撫でてくれたことで少しだけイライラが収まり、爪を噛むのを止められた。

「う、ううぅん」

「フィーン! 起きたの! 大丈夫!?」

「う、うう。ア、アルフィーネか……おはよう。今日は僕が寝坊したのかい? おかしいなぁ、いつも早起きしてたはずだけど……」

嘘!? さっきあったことを忘れてる?

それともあたしを庇ってくれてるの?

記憶がないフィーンの様子に、焦りを感じたあたしは、フィーリア先生とダントン院長先生に助けを求める視線を送った。

「フィーン君、さっきのことを覚えてないのかい?」

「あ、ダントン院長先生まで。おはようございます。さっきのことって――――」

フィーンの顔が苦痛で歪む。

「いつつ、あ、え、ああぁ、思い出した。ロレアルさんが急に木剣で殴りかかってきて、それを見てたアルフィーネが僕を助けてくれて、やりすぎだからって止めたところまでは思い出しました」

頭を押さえていたフィーンが、さっきあったことを思い出したらしく、フィーリア先生やダントン院長先生にあの場であったことを話してくれた。

「よかった。頭の傷も酷かったし記憶が飛んでるのかと思ったわ」

「フィーン君の話を聞くと、先に手を出したのはロレアルで、アルフィーネはフィーン君を守ろうとしたということでよいかね?」

「はい、アルフィーネは僕を助けようとしただけです」

しばらく無言の時がながれたが、やがてフィーリア先生が大きなため息を吐いた。

「ふぅ、しょうがないわね。今回に限り、木剣を人に向けたことは不問に付します。今まで通り、剣の訓練も許します。だけど、今回の喧嘩の責任は全員に取ってもらうからね」

「はい、ありがとうございます。フィーリア先生」

「アルフィーネもいいわね」

フィーリア先生に念を押されので、しっかりと頷いた。

その後、ロレアルとその取り巻きの男子たちが卒業するまで、あたしたちに近づいてくることはなくなった。

あたしがロレアルのことを木剣でボコボコにしたことが、あの場にいた男子たちによって伝わり、怯えて近づかなくなったらしい。

おかげで他の子たちも、あたしに近づいてくる子はいなくなり、話す相手はフィーンとフィーリア先生、ダントン院長先生だけになった。

その時期から、剣を握ったことで聞こえなくなっていたはずの例の声が、また頭の中で囁き始めた。