軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第7話:災害級の魔物ドラゴン出現

クドナック王国に激震が走る。

辺境地区に災害級の魔物ドラゴンが出現したのだ。

フーカの悪い予感が当たった。

大山脈からよりによってドラゴンが来襲するとは。

ドラゴンは攻撃力や防御力が高いだけでなく、性格が凶暴で機動力があるときている。

最も被害が広がりやすい魔物とされているのだ。

幸い辺境の中心の町ロセナは、王都冒険者ギルドの管理下にある転送魔法陣が設置されているところだ。

ドラゴン出現の報告が王都にもたらされるのは早かった。

直ちに討伐隊が組織されたが、現地到着までには二〇日ほどかかることが予想された。

「冒険者ギルドの転送魔法陣で兵を送ることはできぬか?」

「転送魔法陣は万能ではありません。一日に数十人の転送がやっとです。一〇〇〇人単位の転送などとてもとても」

「戦力の逐次投入は被害を増やすだけだ。転送は情報の伝達に使うべき」

「現地の領兵が対応に当たっていますが、ムリです! 前線は崩壊しています!」

「僕達が行きます!」

第三王子アーノルドとフーカのパーティーが名乗りを上げた。

魔物退治ならば兵士よりも冒険者が適しているのは明白だ。

しかしアーノルドとフーカの実力を正当に評価していたのは、冒険者ギルドの職員達だけだった。

お偉方も冒険者達も、所詮王子のお遊びだと思っているから。

「アーノルド様、危のうございますぞ!」

「様子を見てくるだけだ。僕の目から見て有効な方策があったら、すぐに連絡を寄越そう」

アーノルドは議論するだけムダだと思い、軽く笑った。

「そ、それならまあ」

「魔法陣を起動してくれ」

「お兄さん、ありがとう」

「えっ、何が?」

「ここあたしの故郷に近いでしょ? どうしてもドラゴン倒したい」

フーカはやる気満々だった。

自分の授かった風の神の加護は、ドラゴンを倒すためだと思ったくらい。

アーノルドもまた偵察だけで終わらせる気はなく、自分の力を見せつけてやろうと考えていた。

「あれがドラゴンか」

「でかーい!」

ランクA冒険者のアーノルドとフーカにして、これまで見たことのあるどんな魔物よりも遥かに巨体だった。

グオオという自らの強さを誇示するような咆哮に、二人はビリビリとプレッシャーを感じる。

「移動する気かな?」

「集落に飛ばれると被害が広がるな。フーカ」

「なあに?」

「ドラゴンの鱗はやたらと硬いんだ。フーカの風の技ではダメージが入りにくいと思う」

「うーん、そうか」

「ただ目は別だ。目に攻撃を集中することと、何とかやつを地面に引きずり下ろすことを考えてくれ」

「引きずり下ろすのは難しくない?」

「いや、あの巨体が翼の羽ばたきだけで飛べるわけがない。おそらくは飛行魔法を併用してるはず」

「お兄さん頭いい! わかった! じゃ、あたし先行してるね」

フーカが飛んでいき、アーノルドは付近を警戒していた守備兵達に合流する。

「君は?」

「王都の冒険者だ。助っ人に来た」

「助っ人と言っても。注意を引きつけて集落に行かせないようにするのが精一杯なんだ。飛ばれちゃ何もできない」

「今僕の相棒がやつを地上に落とす」

「ど、どうやって?」

「見ていればわかる」

ドラゴンがバランスを崩したように落ちた。

フーカが凪の技を用い、ドラゴンの飛行魔法を無効化したのだろう。

そして目に攻撃しているため、ドラゴンは嫌がるように首を振り始める。

とともにフーカが降りてきた。

「ただいまー」

「御苦労さん」

「そ、空から? 天女?」

「フーカじゃねえか!」

「えへへー、久しぶりだね。飛行の技覚えたんだ。ところでケガ人いるなら治しちゃうよ」

フーカを知っているロセナの冒険者もいた。

守備兵の一人が笛を鳴らし、仲間を呼び集める。

「重傷者は後方に下がっているんだ。でも全員が多かれ少なかれ……」

「癒しの風!」

「おお? ケガが治った!」

「回復魔法か?」

「祝福の風!」

「やたらと体が軽くなったぞ!」

「何でもできる気がする!」

守備兵の士気が上がったところでアーノルドがフーカに問う。

「ドラゴンの様子はどうだ?」

「目にケガは負ってるけど、まだ見えてるんじゃないかな」

「よし、逃がすと厄介だ。倒すぞ」

「「「「「「「「おう!」」」」」」」」

アーノルドとフーカはドラゴンに対抗する方針と有効な攻撃を持っていた。

冒険者達の士気が上がる。

「フーカは執拗に目を潰してくれ。ブレスを吐くから要注意だよ。もし飛んで逃げようとしたら落として」

「了解!」

「僕達はまず防御力の低い翼をボロボロにし、飛んで逃げる気をなくしてしまおう。強弩で攻撃してくれ」

「「「「「「「「おう!」」」」」」」」

「翼にならあたしの攻撃も効きそうだけど?」

「いや、余裕があるくらいならドラゴンの攻撃に注意しててくれ。危なそうだったら風の盾を張ってくれるか」

「任せて!」

フーカが飛び、ドラゴンの頭部に再びカマイタチで範囲攻撃!

ドラゴンがメチャクチャに暴れ出す!

「撃て!」

アーノルドの指揮下に強弩が斉射される。

全矢命中!

「なあ、兄ちゃん。翼じゃ当たったって倒せねえだろ。胴体に向かって撃ったほうがよくねえか?」

「いや、弩程度じゃ当たったところでドラゴンの鱗は貫けない。ならば確実に翼を奪う。そしてドラゴンの意気を阻喪させよう」

「やつをへこませるってことだな? わかったぜ!」

ドラゴンはフーカの攻撃を嫌がり、その無秩序で自暴自棄な動きは確実に体力を消耗しているように見える。

一方で翼はもう穴だらけだ。

フーカが降りてくる。

「もう目は見えてないと思うけど」

「フーカはよくやってると思うぜ? しかし決定的なダメージを得る手段がねえな」

「いや、ある」

「お、おい兄ちゃん。いつの間に……」

アーノルドはドラゴンにも効果のある氷魔法を剣にまとわせていた。

得意のエンチャントマジックだ。

「フーカの祝福もあって、僕の攻撃力は何倍にもなってる。こいつで攻撃すれば、たとえドラゴンだろうと首の骨を叩き折れると思う」

「ええ? 近接攻撃かよ。危ねえぞ? しかも首だって?」

「おいおい、可能か? そんなの」

「フーカ、圧縮空気で首を下に押しつけられないか?」

「大分力が弱って動き鈍ってきたからできると思う。やってみるね」

フーカの圧縮空気により、ドラゴンの頭が地面に叩きつけられた。

ドラゴンはフラフラしている。

チャンス!

アーノルドが駆け出し、ドラゴンに肉薄する!

ドラゴンもまた、視力を失いながらも自分に迫る危機を察知し、アーノルドにブレスを放たんとした。

「危ねえ!」

「でやああああああああ!」

寸前でフーカの圧縮空気がドラゴンの横面を張り、ブレスはアーノルドを逸れた!

アーノルド渾身の一撃がドラゴンの首にヒットする!

「グオオオオオオオオオオオオ!」

「や、やったか?」

ドラゴンは生きてはいた。

が、もう首は折れて身体を動かせず、死を待つだけだった。

「フーカ、憎むべきドラゴンとはいえ、苦しませると可哀そうだ。首の傷口からカマイタチを撃ち込んで太い血管を切断してくれ」

「はーい!」

フーカのカマイタチが連続して放たれる。

ドラゴンの命の灯は消えた。

冒険者達が騒然とする。

「ま、マジでドラゴン倒しちまったぞ?」

「ドラゴンスレイヤー万歳! フーカとその彼氏万歳!」

「剥ぎ取りは明日だな。まず王都に報告しなきゃいけない」

「そんなの誰かがやるでしょ。お腹減っちゃった。後方に下がってる重傷者のところに案内してくれる? 癒してから御飯食べようよ」

アーノルドは『フーカとその彼氏』という発言に少なからず動揺していた。