軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百三話 ハンマー商会の結末

王都での騒動と観光の後、迷宮都市に戻りジーナ達とは別行動で迷宮に木材の確保に向かう。迷宮のコアにはきちんと許可を取り、転移ポイントまで作ってもらっての伐採作業。しかも、迷宮の山岳地帯に生えている木は御神木クラスで……正直、これらの木を集めた結果がどうなるか予想できない。でも、ベル達が沢山見つけてきてくれたそうなので、沢山伐採しようと思う。

久しぶりの迷宮探索は地味に楽しかった。

五十六層に転移ポイントを作ってもらったので、別に日帰りの迷宮探索も可能だったのだが、戻ってもジーナ達は居ないし、色々なアリバイの為にも山岳地帯でキャンプをすることにした。

まあ、トルクさんの宿屋に行くと、ダイエット関連の何かしらに巻き込まれそうだから回避した面もあるけどね。ベティーさん、元気かな?

でも、久しぶりに俺と精霊達だけののんびりした時間は結構楽しかった。

毎日野山を、というか山岳地帯を駆け巡り、というか飛び回り、沢山の木を伐採し、疲れるとキャンプで美味しい野外料理を作る。そんな生活。

まあ、カレーを作った時は山岳地帯の大量の魔物が押し寄せてきて、殺戮のカーニバルが開催されもしたが、魔物との戦闘以外は平穏な日常を送れた。

そして、同じ山岳地帯だと思っていたのだが、階層を移動するごとに違う種類の木が生えており、ソニアさんからお願いされたすべての種類の木材を大量に手に入れることができた。

ついでに宝箱もいくつか発見し、更に大量の魔物を虐殺&確保してしまったが……コア、泣いてないかな? 次の訪問時にはもっと沢山のお土産を用意するつもりだ。

「裕太さん、なぜお店に入ってこられないのですか?」

マリーさんの雑貨屋の前で立っていると、入ってこない俺にしびれを切らしたのかソニアさんが迎えに出てきた。

入るのを戸惑っていたのは、色々と大量に確保してしまったからその報告が面倒に思ったからだ。

迷宮を出る前に確保した物を確認すると、自分でも引くほど大量の物を手に入れていた。

このまま魔法の鞄の中に寝かせておけば平和ではあるのだが、必要ない部分を迷宮のコアに返却しないと可哀想なので処理してもらわなければならない。

ただでさえ魔法の鞄の中には表に出せないレベルの品が大量に眠っているから、表に出せる品くらいはちゃんと処理しないといけない。

でも、量が量なんだよな。

「……ソニアさんがそれほど言うのであれば仕方がないですね。申し訳ない気持ちがあって入り辛かったのですが、優しいソニアさんの厚意に甘えさせていただきます」

「私は別にそれほどのことは言っていませんが? もしかして裕太さん、何かやらかしたんですか? 困りますよ、ただでさえ大変な時期なんですから」

ソニアさんが警戒しだした。でももう遅い。俺は覚悟を決めた。

「いえ、別にそんなに酷いやらかしではありませんよ。まあ、中でお話ししましょうか」

そういって応接室への案内を要求する。

「つまり、ゴブリン、オーク、コボルト、オーガ、それらの上位種を含めて、私達が普段利用している特大の倉庫でも収まりきらないほどの数があると?」

事情を説明すると、ソニアさんが呆れた顔で確認してくる。

「まあ、そういうことになりますね」

山岳地帯で木を切ったりキャンプをしたりしていると、魔物が入れ食い状態のお代わりし放題。

収納するだけで一苦労だったのだけど、ベル達が久しぶりの戦闘にやる気になってしまい止められなかった。

「その解体をこちらで?」

「はい、でも雑魚だけじゃなくてキング、ジェネラルクラスも沢山居ますよ?」

「しょうがないですね。解体職員を不眠不休で働かせましょう。それで、木材の方はどうなりました?」

利益になることが確定した瞬間、職員達が馬車馬になることが確定した。なんか申し訳ない。

「木材に関してはソニアさんがリクエストした全ての種類がありましたよ。それも倉庫に入りきらないくらい確保してきました」

ソニアさんの瞳がキラリと光る。

「マホガニー、ウォールナット、チーク全てですか?」

「はい、全部です」

「さすが裕太さんです。褒めてあげましょう」

なんか上から目線で褒められた。

「でも、本当に伐ってからそのままですよ。枝すら払っていません」

「問題ありません。本店の職員達も総動員して下処理をします。倉庫に向かいましょう」

解体職員だけではなく普通の職員、しかも本店というとポルリウス商会の職員か。その人達も馬車馬のごとく働かされることが決定してしまった。本当に申し訳ない。

まあ、いいか、それを望んだのはポルリウス商会のマリーお嬢様だから俺の責任ではない。倉庫に移動するか。

「まさか一本がこれほど大きいとは」

ソニアさんが愕然としている。そうだよね御神木クラスだからね。

「他の木もだいたい同じサイズです。それがまあ、数百本は確保してありますよ」

「…………」

「どうかしましたか?」

「これだけ立派な木材、もったいなくて切り分けられないじゃないですか。裕太さん、いいですか? 家は巨大な柱だけで建てる訳ではないのですよ?」

それくらい知っています。

「もったいないかもしれませんが、沢山確保してありますから切っても良いのでは?」

「これを切るなんてとんでもない!」

なんか、これを捨てるなんてとんでもない、みたいなニュアンスだな。

「これだけの大木、貴族様どころか王族すら食指を伸ばしますよ。裕太さん、お願いします。手頃な木も確保してきてください!」

……追加のお仕事を依頼されてしまった。

俺的に面倒だったし大は小を兼ねると考えていたんだけどね。どうしたものか……。

正直、もう帰りたいんだけどなー。

ソニアさんが俺を凝視している。横に移動しても視点が外れない。

「裕太さんに働いていただいている間に、物凄く解体させておきます。あと、お酒と本ですが、今まで遠くて手が出せなかった場所も従業員を派遣することを誓います」

断ったらとんでもないことをしそうな雰囲気だな。マリーさんといいソニアさんといい、なんでもう少し穏やかに生きられないのか。

そして、お酒の部分でシルフィとドリーが反応した。もう断われない。

「分かりました」

ジーナ達にはメルのところにでも遊びに行ってもらうか。お酒を対価にされたら俺は非常に弱い。

***

「裕太さん、緊急で倉庫を用意しました。少し離れていますが、お付き合い願えますか?」

手頃な木材を確保して戻ってきたら、新たな倉庫が用意されていた。俺に預けておけば場所は取らないが、木材としての加工もできないから言葉通り緊急で用意したんだろう。

NOと言えない雰囲気だったので、大人しく頷くと馬車に乗せられ何ヶ所も倉庫を巡ることになった。

本当に緊急で用意したようで、他に商品が並んでいる場所の隙間に木を置いたりもした。

一本でも多く手元に置いて商売に活用したいという意思が垣間見える。

でも、御神木クラスの木はそれほど卸していない。あのクラスをバラ撒くと値崩れが起こるとのことで、高値を維持しつつ儲けるために量を絞るのだそうだ。

でも、木材の使用には時間がかかるので、田舎の方に木材用の倉庫を建てることも検討しているらしい。馬車の中でソニアさんが熱心に話していた。

ソニアさんの立場ってどの程度なのか凄く不思議だ。マリーさんの秘書的な役割だと思っているのだが、それにしてはエリックさんを躊躇わずに生贄にしようとするし、今回も主導的な立ち位置に居るから結構謎な存在だ。

「裕太さん、本日はありがとうございました。あと、少し報告があるのですが、お時間を頂けますか?」

「……もうそろそろ本拠地に戻りたいのですが、仕事の依頼ではありませんよね?」

実は迷宮で木を伐っている間に、楽園でやりたいことを思いついた。その為の買い物もしたい……ああ、でも、マリーさんの雑貨屋なら必要な物が売っているかも。

なかったとしても、報告を聞いている間に買いそろえてもらえそうな気もする。どうしたものか。

「裕太さんにお願いしたいことは沢山ありますが、今回はハンマー商会のその後について報告が届きましたので、お知らせしておこうかと。無用でしたか?」

「いえ、それは知りたいです」

俺の手を離れたと認識しているが、それでも関わったのだから結末くらいは知っておきたい。買い物はソニアさんにお願いして揃えてもらうことにしよう。

「ハンマー商会は王命で潰され、商会長を含め幹部のほとんどが処罰されました」

処罰の部分でソニアさんが首を斬る仕草をした。もしかして処刑されている感じですか?

専制君主国家怖い。王命の効力がハンパないよ。ことが起こってから、まだ十日程度だよ? 貴族の処罰には時間がかかるみたいだが、平民だと豪商でもサクッと処理されちゃうんだね。

そういえば、王様、マジ切れしていたな……。

「ハンマー商会はそんなに酷いことをしていたのですか?」

「ハンマー商会の後ろ盾の貴族様が貴族倶楽部という集まりのメンバーで、そこに女性を納品していたのがハンマー商会を含め、いくつかの商会だったようです。それが王様の怒りに触れたようで、問答無用で処罰されたようです」

理解した。王様、貴族倶楽部の名前が出た時、殺気が漏れていたもんな。

貴族倶楽部が潰された時点で大人しくしておけばよかったのに……まあ、貴族は美女に脳がやられて、ハンマー商会は貴族を後ろ盾に得る利益に脳が焼かれていたのかもしれない。

「処罰されたのはハンマー商会だけですか?」

「いえ、名前が出た商会にも捜査が入っています。そのおかげでマリーは大忙しだそうです」

まだ手を広げるつもりのようだ。将来、ポルリウス商会は本気で財閥化しそうだ。

「処罰されているのは商会だけですか?」

「いえ、貴族様にもかなり手が入っているようです。王都は大騒ぎですよ。しばらくは落ち着かないでしょう」

大変そうだけど、悪い人が減るのは良いことだ。

「それで、フィオリーナさんが裕太さんに大変感謝していました。建築に全力を尽くすと言伝を預かっています」

おお、たぶん、あの女性冒険者さんが俺のことを良く言ってくれたんだろうな。

フィオリーナさんが確実にハンマー商会に狙われていたし、結果的に自分が俺に救われたと感謝してくれたのかも。

もしかして、恋が始まる予感ですか?

ふむ、次に会う時にはお洒落をして、手土産も豪華な物に……いや、彼女はいきなりガツガツ行くと引くタイプだな。

ゆっくり距離を詰めていくことを考えるべきだ。焦りは禁物。

「まあ、同時に王様と対等に話していたことを護衛の冒険者に聞いて、かなり怖がっているようですが。でも、裕太さんは気にしませんよね」

いや、気にしますが?

女性に怖がられることを気にしない男は少ないと思います。というかそれ、誤解を基に判断しているよね。

恋が始まる予感は気のせいで、やはり警戒を解く作業から始めないといけないようです。

物語だと、普通感謝の感情が恋に変わる物なのでは?

なんか納得がいかないが、ソニアさんが必要な物を揃えてくれたので、楽園に戻ってゆっくり作業することにしよう。