軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七百四話 DIY

マリーさんから頼まれた木材の確保。御神木クラスの質が高い木材を集めすぎて、ソニアさんにもう少し質を落とした木材を確保してくるように依頼される。ようやくそれを熟して戻ると、ハンマー商会消滅の報告を聞き、その後、一瞬恋が始まりそうだったが気のせいだった。

迷宮都市でマリーさんのお願いを済ませ、予定よりもだいぶ長くなってしまったが楽園に帰ってこられた。

本当なら建築家さんに挨拶してちょっと観光して戻ってくるはずだったのだけど、その間に何故か王様に会うことになり、一つの商会が潰れ、いくつかの商会に強制捜査が入り、貴族もいくつかがヤバいことになった。

そして、マリーさんとソニアさんがイキイキと暴走をはじめ、色々と荒れ気味な王都の縄張りを食い荒らそうと動き始める。

このように短期間の旅行で色々とあり過ぎたので、しばらくは楽園で迷宮探索中に思いついたアイデアをゆっくり実行していこうと思っている。

まあ、その前に、すぐに戻ってくると言ったのに、結構長い間離れてしまってご機嫌を損ねてしまったサクラの機嫌を取らないといけない。

「あう!」

「ああ、ごめんごめん、それで、色々あってこれだけ時間がかかったんだよ」

俺の胸にへばりつき話をねだるサクラに、王都であった出来事を色々と報告する。

サクラのマネをして俺にへばりついているベル達も会話に入ってくるから、結構しっちゃかめっちゃかだけど、サクラは楽しそうだ。

「そういえばラエティティアさんは遊びに来てくれたりした?」

「あう!」

コクコクと嬉しそうに頷くサクラ。小さくて可愛らしい指を三本立てたということは、三回遊びに来てくれたようだ。

ラエティティアさんはかなりサクラを気にかけてくれている。

経験豊富な精霊樹の先達であるラエティティアさんの存在は、ドリーがついてくれていると言っても大変心強い。

まあ、サクラを向こうに遊びに行かせると、エルフのお爺さんお婆さんに甘やかされまくるから、結構危険なんだけどね。

注意はしたけど、あのエルフ達は呼吸をするようにサクラを甘やかすからな。

「そうか、良かったね。楽しかった?」

「うきゃう!」

満面の笑みだ。楽しかったのなら良かった。

機嫌が回復してきたのか、遊ぼうとちょっかいをだしてくるベル達に反応を始めた。そっと両手で持ち上げてサクラをベルの前に差し出す。

「さくらきたー」

「あい!」

ガバっとベルがサクラに抱き着き、その行為に喜んだサクラがふわりと浮き上がる。

そんな二人にレイン達が合流し、立派なお団子が完成する。こうなったらこっちのものだ。

お団子はそれぞれに楽しみを見出し、機嫌よく遊び続ける永久機関になる。

「師匠も大変だな」

俺が額の汗を拭っていると、ジーナが苦笑いをしながら話しかけてきた。

帰ってきたとたんにサクラが突撃してきたから、まだ家に入ってすらいない。

「まあ、みんな良い子だからそれほど大変でもないよ。あ、待たせてごめんね。ジーナ達も自由にしていいから、ゆっくり休んでね」

俺がサクラをあやすまで待ってくれていたジーナ達を解放し、ホッと一息つく。

シルフィに運んでもらっただけだから肉体的な疲労はそれほどないのだが、精神的に疲れることが色々あったから、楽園に戻ってきたことを実感すると力が抜ける。

この楽園がしっかり俺の帰る場所になったということだろう。

「裕太はこれから休むの?」

「あー、うん、休む前にやっておきたいことがあるんだよね。シルフィ、悪いけどディーネとイフを呼んで手伝ってくれる?」

待ってくれていた弟子達と対照的に、俺の帰還に集まってくれた大精霊達は、長くなることを察した時点で解散して離れていった。

まあ、王都でも迷宮でも顔を合わせているから、出迎えの時点で大袈裟なくらいなんだけどね。

「あら? 何をするの?」

「迷宮で確保した木を使えるように加工したいんだ。シルフィにお願いしたいのは枝払いだね。ディーネとイフには木材の乾燥や脂なんかの除去をお願いするつもり」

「了解、呼んだからすぐにくるわ」

シルフィの言葉通りディーネとイフはすぐに来てくれた。

事情を説明すると、それくらいなら簡単だと二人とも請け負ってくれた。

広場にスギの巨木を大量に取り出す。

これからやりたいことにどの木材が向くのか分からなかったので、花粉をバラまきまくるほど植林されたスギを選んだ。

沢山使われるということは、それだけ広い用途に使われるという推測というか勘だ。

「じゃあ、剥いちゃうわね」

シルフィが軽く手を振ると、巨木が浮き上がり剥くという言葉通り木材が剥かれるように枝葉が取り払われていく。

「じゃあお姉ちゃんはこっちの木の水分を抜いちゃうわねー」

「お、じゃあこっちは任せな」

サクサクと剥かれ、サクサクと処理されていく木材。開拓ツールもそうだけど、精霊術も林業の人達に喧嘩を売っている能力だよな。

「まあ、こんなもんだろう。あとは一晩寝かせれば熱も落ち着いて使える木材になるぜ」

「お姉ちゃんも終わったわー。こっちも少し寝かせたら残した水分が落ち着くから使えるようになるわー」

「みんなありがとう。今晩はお酒を出すから、家に集まってね」

「お姉ちゃん、今からが良いわー」

シルフィとイフも俺をジッと見つめる。

まあ、帰ってきたばっかりだし、まだおやつ時だけど……構わないか。

魔法の鞄から酒樽を取り出す。再び視線が集中したので、二樽ほど追加する。

「さあ、呑むわよ」

シルフィの力強い宣言と共に大精霊達は去っていった。

……俺も夕食まで休むか。

***

楽園に帰還してからの翌朝、ジーナ達やベル達を送り出し、時間が空いたところでさっそく計画を始動させる。

「よし! やるぞ!」

昨日乾燥させてもらった木材の前で、魔法のノコギリを手に気合を入れる。

「裕太、結局何をするつもりなの?」

「あ、まだ言っていなかったね。広いウッドデッキを作ろうと思うんだ」

迷宮で木材を確保している時に、ピカンと閃いた。

お洒落になった楽園の村、そんなお洒落な村にキャンプ場にあるような、大きなウッドデッキがあったらとても素敵だと。

で、ウッドデッキであれば、開拓ツールがあるし俺でも作れるのでは? という安直な考えの元に実行に移すことにした。

まずは巨大な丸太を板に加工することから始める。

……どうやって切ろう?

テレビで見た時は、加工場で巨大な丸鋸でキュイーンって感じで板にしていたな。

そうか、開拓ツールの切れ味なら簡単だと思っていたが、まっすぐ切るのが大変だな。あと、厚みも合わせないといけない。

あ、まっすぐ切れるように台を作ればいいのか。丸太を横に寝かせて、大きめの台にノコギリのお腹をピッタリと引っ付けて切れば水平にできる。

厚みも台の幅で測れば均一にできる。いや、いちいち木材を移動させるのは面倒だな。

ノモスに台を作ってもらう時に、横向きに使える巨大なノコギリガイドを作ってもらうか。

さすがの開拓ツールの中にも、ノコギリガイドは入っていなかったからな。

シルフィにお願いしてノモスを呼んでもらう。

「なんじゃ?」

こういう理由でこういう台とノコギリをガイドさせるものが欲しいと説明する。

「別に裕太が切らんでも、シルフィに頼めば綺麗に切り分けてくれるんじゃないのか?」

説明が終わった瞬間、ノモスが身も蓋もないことを言う。たしかに効率を考えたらそのとおりなのだが、今の俺はDIYがしたい気分なのです。

まあ、それなら全部自分でやれよって話なのだが、台を作るところまではやりたくないんだ。

「まあ、かまわん」

ちょっと疑問に思っただけだったらしく、俺が理由を説明する前にノモスが勝手に納得した。

ノモスがふいっと右手を振ると土がモコモコと動き出し、立派な台と、水平に使える巨大なノコギリガイドが完成する。

相変わらず武骨でデザイン性の欠片もないが、板を作り終わったら土に戻してもらうものなのでなんの問題もない。

「ありがとうノモス」

「うむ、ではな」

俺がお礼を言うとノモスはそのまま去っていった。

今回はお酒の要求すらされなかったな。昨日は結局大精霊全員が集まり宴会をしていたから、今日は遠慮してくれたのかもしれない。

あと、俺だったら、この作業でポイントは貰えるのかって聞くんだけど、シルフィ達は聞かないんだよね。

この程度の作業でポイントがもらえると思っていないのだろうが、そういう判断ができるのは素直に尊敬する。

「裕太、この台に自力で木材を載せるの?」

シルフィに盲点を突かれた。

そこまで考えていなかったが、レベルが上がって力持ちになった俺ならこの巨木を持つことも可能かも。

「自力と言えば自力だけど、魔法の鞄を使うよ」

一瞬挑戦しようかと思ったが、魔法の鞄を使えば無理に苦労する必要がないよね。

魔法の鞄に乾燥させたスギの丸太を収納し、台に置き直す。

ノコギリのガイドに魔法のノコギリを設置して、ギコギコと反復運動をするとスルスルと刃が丸太に食い込んでいく。

手応えがほとんどないが、もし手応えがあったら板を作る作業だけで心が折れる気がするので、有り難いことだと思っておく。

一段目を切り終え、二段目に魔法のノコギリを載せる。こうするだけで水平で厚みも均一にキレるから大助かりだ。

サクサクと一本目の丸太を切り終え、丸太の確認をする。

表面がやすりを掛ける必要が無いほどツルツルだ。大工道具一式、塗料とかヤスリ、クギ等をソニアさんに用意してもらったが、ヤスリはあまり必要ないかもしれない。

それにしても素人が作るウッドデッキだから、最初から板は頑丈で厚みを大きくしようと考えたんだけど、かなり分厚いな。

スノコ板の三倍くらいだから、俺の指四本分くらいの厚みがある。板というよりも角材に近いので木材を無駄にしている感じが凄くする。

でも、丈夫なことは良いことだし、こまめに手入れをすれば一生物になると信じている。

さて、大体の工程は理解した。

この板を更に切り分ける作業もあるが、先に全部丸太を板に加工してしまおう。

……なんかチビッ子精霊達が興味津々で見ているんだけど……え? もしかしてレンガ並べの時のようなことになる?

チビッ子達が興味を持つ可能性を考えて、道具類も沢山用意してもらったけど、さすがに切り分けや釘打ちは無理だよね?

釘とか、この分厚い板用に用意しているから、かなりぶっといし……。