作品タイトル不明
その10 東京タワー
昭和◯◯年◯月◯日
TVを観ると、東京タワーが映っている。
カメラがアップになる――タワーの脚の部分にへばりついている男。
当時名物だった、東京タワー男だ。
若い人は当然知らないだろうが、当時はたまにあったイベントだった。
タワーにしがみついてなにをするのかといえば――「逃げた女房を連れてこい!」みたいな、しょうもない話。
こち亀の中でもネタにされていて、若い人が「親に車を買わせろ!」みたいなことを叫んでいた。
もちろんギャグなので、こういう要求をしてたやつがいたわけでもない。
東京タワーを警察、TV局、野次馬がなん重にもとり囲み、ワイワイとやっているのが中継されている。
江戸っ子にとっては祭りみたいなものだ。
説得のために、田舎から犯人のオカンが呼ばれて拡声器でなにか叫んでいる。
「◯◯男~! こないなことは止めてけれ~!」「お前のお母さんは泣いているぞ~!」
まるでギャグなのだが、これが本当に行われていたという昭和。
東京タワー男だけではなく、立てこもり事件などでも、よく両親を連れてきての説得というパターンが多かった。
アニメや漫画のシーンでも、そういうシーンが定番のように出てきたが、やっぱりTV放送で流されたシーンの影響があるものと思われる。
そんな大騒ぎになった東京タワーだが、当然逃げた女房が出てきたこともない。
半日ぐらい鉄骨にしがみついて、暗くなったら、寒くて降りたとか、小便が我慢しきれず降りた――みたいな、つまらん終わり方。
面白がっていた見物客も、バラバラと帰っていく。
TVで全国中継するから、模倣犯が出るんだよ。
鉄骨にしがみついても上手くいかないとわかったから、東京タワー男はいつの間にかいなくなった。
まぁ、そんなのあたり前田のクラッカーだよな。
昭和◯◯年◯月◯日
TVに物騒なニュースが流れる。
東京の電話ボックスの中に置いてあった、瓶コーラを飲んだ人が亡くなったというニュースだ。
コーラからは、青酸カリが検出されたという。
野犬駆除に使う毒饅頭が撒かれてた時期なので、落ちているものを食うなと徹底されていたのだが、東京では違ったのだろうか?
親からは、再度「落ちているものは口にするな!」と厳命された。
そのあとも、自販機に缶コーラが残っていて、それを口にした~みたいな事件もあった。
たしか、どちらも犯人は捕まっていなかったはず。
「どくいりきけんたべたらしぬで」のグリコ森永事件もあったな~。
なぜか、◯ッ◯だけは、被害にあわないやつな。
なんでやろうな~。
不思議やな~。
――と、こどもの頃も思ってました。
身代金の受け渡しで、警察が初動にミスって犯人をあと1歩のところで取り逃がしたんだよね~。
その頃から、子どもの誘拐事件の話も聞かなくなりました。
やっぱり成功率が低いし、割に合わないと思われるようになったのではないか。
海外じゃ普通にあるみたいだけどね~。
日本の治安が悪化すると、また誘拐などの事件も増えるかもしれない。