軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪徳三人衆!

リアムが滞在する高級ホテルに集められたのは、御用商人の三人だった。

リアムともっとも付き合いの長いヘンフリー商会のトーマス。

首都星で商売をしているクラーベ商会のエリオット。

帝国で手広く商売をしているニューランズ商会のパトリス。

三人とも随分と焦っていた。

「だ、大丈夫なのでしょうか? バンフィールド家の主力商品はレアメタルです。これの取引が出来ないとなれば、大打撃ですよ」

トーマスが不安そうにしていると、パトリスが苛立ちながらも返す。

「こちらも大打撃ですよ。ニューランズ商会内での私の立場がありません。今すぐに、私ごと切り捨てるべきと言っている幹部たちもいるんです」

エリオットは落ち着いたように見せているが、内心は焦っているようだ。

「こちらも同じですね。当主交代を幹部たちが話し合っています。それにしても、ライナス殿下を敵に回すとは――いったい何を考えているのか」

リアムの理解不能な行動に、三人は振り回されていた。

しかし、トーマスはこれまでにも色々と経験しており、リアム絡みの揉め事にはなれていた。

「それなのですが、リアム様は口では色々と言いますが義理堅い方です。ロゼッタ様の件もありますし、もしかすると今回もその可能性があります」

パトリスが鼻で笑う。

「その程度の義理人情で潰れてもらっては困ります。私の見る目がなかった証拠ですもの」

敵はバークリー家のような貴族ではなく、皇位を争っている皇子である。

今までのようにはいかない。

それに、ライナス派閥の貴族たちも敵に回っている。

リアム一人ではどうにもならなかった。

エリオットも目が冷たかった。

「これは本気で考える必要がありますね」

リアムを見捨てることも視野に入れる二人だが、トーマスだけは少し違う。

「――私は今回の件、リアム様に何か考えがあるのではないかと思うのです」

「何かとは何ですか?」

エリオットが尋ねると、トーマスは答えに困る。

だが、何かリアムが企んでいる気がするのだ。

「それは分かりませんが、何か大きな――」

三人が待っている部屋に、ズカズカとリアムが入ってきた。

「よく集まってくれた!」

笑顔のリアムを見て、パトリスもエリオットも笑顔を張り付ける。

「この状況下で随分とご機嫌ですね、リアム様」

「ライナス殿下と争っているとは思えませんよ」

二人の刺々しい言葉に、リアムはまったく動じなかった。

「第二皇子か? あいつはどうでもいい」

そもそも、眼中になどなかった。

リアムがソファーに座ると、トーマスがギスギスした二人に代わって質問する。

「リアム様、今回の一件はどうするおつもりです? 領地に経済制裁が加えられたと聞いておりますが?」

「経済制裁? あぁ、あれね。俺が第三皇子を全面的に支援すると言ったら、第二皇子が喧嘩を売ってきた結果だ」

それを聞いた三人の背筋が一気に寒くなった。

リアムは微笑んでいる。

「俺はクレオ殿下を皇帝にする。お前らも手を貸せ」

トーマスは目眩がした。

この人は一体何を言っているのか? 一伯爵が皇帝を決めるなど恐れ多いと言うよりも、無礼な話なのだ。

「し、しかし、それが本当に可能でしょうか? そもそも、リアム様は経済制裁を受けて収入が――」

「それならいくつか考えがある。別に帝国だけが取引相手じゃない。この世界は広いんだ――いくらでも取引相手がいるだろ?」

トーマスは口がパクパクと動いている。

「そ、それはつまり、帝国が指定しているレアメタルを他国に流すという意味ですか? へ、下手をしなくても重罪になりますよ!」

いくつかの貴族は他国にもレアメタルを流しているが、その量はあまり多くない。

隠れてコソコソやっている程度だ。

しかし、リアムの領地で取り扱っているレアメタルの数は莫大だ。

それだけの量が動けば、帝国だってすぐに気が付く。

「俺に喧嘩を売ったライナス殿下が悪い。まぁ、犯罪者になるつもりはない。指定を受けていない金属や商品を取り扱うだけだ。トーマスとパトリスは、外国とも取引をしていただろ?」

トーマスはリアムの御用商人となるまでに、色んな国で取引をしてきた。

だから伝もある。

「は、はい。しかし、取引と言われましても、定期的なものとなると少し問題があります」

パトリスも同様だ。

「こちらも太いパイプがあるとは言えませんね。取引相手を見つけるだけでも大変です」

外国の――しかも帝国と取引したい国があるだろうか?

あったとしても、堂々と取引できるか?

隣国とは戦争中であり、下手をすれば利敵行為と見られる。

軍だって黙っていない。

悩む二人に対して、笑みを浮かべるのはエリオットだった。

「――ありますよ、リアム様」

「なんだ、エリオットの方がやる気みたいだな」

リアムがエリオットの方に体を向けて話を急かす。

エリオットは、首都星で聞いた話をするのだ。

「これは首都星の宮廷貴族たちの噂なのですが、信憑性は極めて高いと思われます。帝国周辺の国々ですが、どうやら内部に問題が発生しているようでしてね」

「続けろ」

リアムも興味を持ったようだ。

「戦争で使用する資材やら色んなものをかき集めているのですよ。それこそ、敵側である帝国にも協力を求めてきています」

なりふり構っていられない状況にある。

それは帝国の上層部も関知していた。

敵が大規模な動きを取れないため、カルヴァンやライナスがこうして派閥争いを激化させているというのも理由の一つだ。

周辺国が動けないのを利用して、継承権争いをしている。

「帝国軍の動きは?」

「協力もしないが、攻撃もしないというところですね。何しろ、何が起きているのか詳しく分かっていませんから。ですが、何かが起きているのは事実ですよ」

トーマスはエリオットの話を聞いて思った。

(これだ。リアム様には時折、天が味方するかのような時がある。この絶体絶命のピンチに、帝国の周辺国が慌ただしいなどと――まさに天運ではないか)

これがいつもと変わらない状況であれば、リアムは詰んでいたかもしれない。

まるで大いなる何かが、リアムを勝たせようとしているようだった。

「お前ら三人で儲けられるように周辺国に支援しろ。物は俺が用意してやる」

リアムがそう言うと、パトリスが頭の中で計算を終えたのか笑みを浮かべていた。

儲かると確信し、この状況を楽しんでいる様子だった。

「後でリストを用意します。その前に、リアム様のお力をお貸しください」

「俺の力?」

「我々の護衛です。数百隻で構いません」

エリオットは少し残念そうにしている。

「私のところは外に伝がありませんからね。物を用意するのは手伝いますけど――そうですね。私は個人的な護衛を増やして欲しいですね。幹部たちが騒いで仕方がない」

リアムは頷くと、すぐに護衛の用意をするため命令を出す。

「トーマス、お前にも護衛が必要だろう?」

「お、お願いできれば」

「当たり前だ。お前に死なれると困るだろうが」

リアムはすぐに軍部と細かい打ち合わせをするため部屋を出ていくが、残った三人は儲け話をはじめるのだった。

エリオットがすぐに必要物資を確認する。

「レアメタルが駄目となると、その他になりますね。大量に用意すればいずれライナス殿下に知られてしまいます。ダミーを用意する必要がある」

「ダミーではないが、こちらの取引先に物資を欲しがっている貴族たちがいる。そこに売りつければ言い訳も出来るわ。それから、取引先は私に一任して欲しい」

「そちらに? 懇意(こんい) にされている方でも?」

「現場に乗り込むのは私とトーマス殿だ。取引相手を決めるくらい許されるだろう?」

「そこは儲けられる方、と言い直した方がいいのでは?」

二人が先程とは違って活き活きとしていた。

トーマスも何とか会話に加わる。

「私の方は以前取引した相手と話をしてみます。それにしても、帝国の周囲が一気に慌ただしくなりましたね」

不気味なほどだった。

内乱など珍しくもないが、大きい内乱が同時に起きる事はこれまでに少ない。

パトリスが思い付く。

「そうよ! 帝国軍よ! 帝国軍も長く続く争いに嫌気がさしている艦隊がいる。これを機に、秘密裏に停戦協定を結べば、帝国軍にも恩が売れる!」

帝国軍も一休みが出来る。

戦いたい連中ばかりではないし、軍も一呼吸置きたいというのが本音だ。

エリオットは知り合いに数人心当たりがあった。

「知り合いに話してみましょう。ですが、主戦派が黙っているでしょうか?」

「そこは敵が弱るのを見ていればいいとでも言うわ。大攻勢の前に、一休みと言えば様子を見てくれるわよ」

実際のところはどうなっているのか分からない。

だが、そこにチャンスがあると三人の嗅覚が告げていた。

そして、同時に三人には後がない。

このままリアムが負けてしまえば、自分たちの地位や命が危ないのだ。

何としてもこの危機を乗り切る必要がある。

そして、希望も見えている。

あとは勝利をつかみ取るだけだ。

トーマスが喜んでいる二人に釘を刺す。

「あまり派手に動いて、リアム様のお怒りに触れないでくださいよ。リアム様は、あれで義理人情には敏感です。大義のない方と取引したと知れれば、いったいどうなるか」

パトリスが慌てて取り繕う。

「も、もちろんよ。その辺りもしっかり調査して取引するわ」

エリオットも同様だ。

「儲けばかりを見て、組む相手を間違えてはいけませんからね。ですが、帝国にとって都合のいい相手を選ぶのは認めてくれるのでは? リアム様は実利も重視しますからね」

自分たちに儲けろと言ったのだ。

商人たちがどうして動くのかよく理解している。

商人に義理人情で商売しろと言わない辺り、理解しているだろう。

「それはそうですが――これまでの行動を見ていると、下手な相手は選ばない方が得策です。一度怒って敵と判断すれば、バークリー家のように滅ぼしてしまう方ですし」

二人がここは長年付き合いのあるトーマスの意見を尊重する。

「いいわ。大義名分が立つ方を支援しましょう。どのみち、争ってくれるのなら都合が良いもの。こっちは顔も恩も売れるからね」

パトリスの意見にエリオットも頷く。

「私はお二人が支援する方を支持しますよ。だから、しっかり選んでくださいね」

それはつまり、お前らの責任は重大だぞと告げていた。

そしてエリオットが笑みを浮かべる。

「運が良い。実に運が良い。これはとても重要ですよ。この大事な場面で、リアム様は運が味方をしていますからね。第三皇子の件もまだ不安ですが、幸先は悪くない」

三人にしてみれば、リアムが健在でいることが重要だ。

パトリスも同意見だ。

「失敗したとしても、外国に支店を出せるチャンスだ。私は喜んで参加させてもらうよ」

そして、他国との繋がりも出来れば実においしい。

ついでに、今まで誰も手を付けなかったクレオという存在を勝たせることが出来れば、その見返りは莫大だった。

パトリスもエリオットも、その賭けに興味が出ていた。