作品タイトル不明
急激な温度変化
冒険者ギルド内での『リジェクテッド』からの、追放宣言。運命の輪の、導きだったのだろうな。
俺は失ってしまうだろう、自分に芽生えていたエスナさんとミラさんへの恋心を……破壊する為にスイッチを押す事を決意する。
例え愛した女が、再び不幸になると分かってても。
裏切り者を生かしておく理由には、ならないのだから……
「Gランク冒険者ルディを『リジェクテッド』より、追放を宣言します」
言わなくてもいいのに、大声でアピールするエマール。コイツは本当に、いい性格してるな。
それに反応する、冒険者ギルド内の冒険者達とギルド職員。中にはハイタッチするヤツや、俺に罵声を浴びせるヤツまで。
「ぎゃはは、ざまぁ」「あのすかしたヤツは、前からキライだったんだよな……」「良いモノが見れた、感動した〜」「笑い過ぎて腹イテ〜」
冒険者ギルド内は普段よりも騒がしくなり、誰しもルディに対して憐れみや、侮辱な視線を送るが……何人かは、異常を感じていた。当の本人が、全くブレてない。それどころか……凄みが増していく。
俺は決意した。さあ、復讐劇の幕開けと、いこうじゃないか……
迷宮都市ビギナリアの冒険者ギルドを支えるエース『リジェクテッド』メンバーと、スライム使いルディの勝負だ。徹底的に潰してやるさ。
『これが俺の生き方だ』
完全に敵と、認識したのだから……始めはコレだろうな。大分ご無沙汰になってしまったけど……
「アオイ・アカネ。一心同体解除だよ。二人の御守りは終わりだよ。戻っておいで」
そう、アオイはエスナさんに……アカネはミラさんに一心同体で守って貰っていた。
同じ冒険者パーティーならいいが、完全に敵対した相手を守る必要はない。
俺は上に右手を上げで『パチン』と、指を弾いて鳴らすと……呼ばれたアオイとアカネはすぐさま、二人と合体を解除して俺と一心同体になる。しかも二人から、ジョブもスキルも貰ってきた。
〘ジョブ因子吸引により忍者の吸引に成功しました〙
〘ジョブ因子吸引により盾士の吸引に成功しました〙
うん、いいね。盾士は無かったからね。これはミラさんだな。そして忍者……エスナさんだよな。レアジョブだよ……超嬉しい。
〘罠攻略のスキル因子を確認しました。罠攻略を使用出来ます〙
〘鍵開けのスキル因子を確認しました。鍵開けを使用出来ます〙
〘隠密行動のスキル因子を確認しました。隠密行動を使用出来ます〙
ここまでが、エスナさんから頂戴したスキルの数々だね。流石は斥候でもレアジョブの忍者だけは、あってダンジョン攻略にも活かせるスキルだね。
〘大防御のスキル因子を確認しました。大防御を使用出来ます〙
〘重心安定のスキル因子を確認しました。重心安定を使用出来ます〙
〘受け流しのスキル因子を確認しました。受け流しを使用出来ます〙
ここまでが、ミラさんから頂戴したスキルの数々だね。
ミラさんは盾士だから、防御系が多いね。俺も防御系は弱かったから、嬉しいかも……
アオイとアカネが集めてくれていたんだ。ジョブもスキルもね。
俺も、敵対関係になった彼女達に、容赦する事もないね。特に裏切り者には……
ちなみにブリッツとエドガーはジョブもスキルも良いのが無くて、アオイもアカネも貰わなかったって……ダサッ。約にも立たないなんて。
「そう、分かった。それじゃ、俺はこれからは『リジェクテッド』ではないからね……健闘を祈るよ、迷宮都市ビギナリアのエースパーティーさん」
俺は冒険者ギルドを出る為に、背を向ける。それじゃあね〜、と手を上げてエスナさん・ミラさんと決別した。
「格好つけてんじゃねーよ」
野次馬の一人が、エールを飲み干したばかりの木製のコップを俺に投げつけて来た。俺はそれを右に避けて、キャッチして投げて来た冒険者に投げ返してやった。
身体強化でパワーを上げた俺の投擲に、木のコップはソイツの足に当たり『ボキッ』とイヤな音が冒険者ギルドに響く。
「ぐあああ〜、イテ〜」
コップが当たった箇所を手で押さえるが、ルディはここで追撃する。この場にいる誰も目で追えないスピードで、この冒険者の頭を押さえつけて……近くにあったテーブルに叩きつけた。『ドガッ』冒険者の頭でテーブルを真っ二つにした。
「なんだ? ザコかぁ。『リジェクテッド』のヤツらみたいに、俺にケンカ売ってるのかと思ったら……この程度かよ〜。拍子抜けだな。迷宮都市ナンバーワンさんはどんな感じで、俺に挑んでくるのか楽しみにしてるからね……この程度で、済ませる気はないからね」
テーブルにめり込んでいた、ケンカを売ってきた冒険者をアオイが持ち上げて『リジェクテッド』のヤツらの目の前で見せてやった。その冒険者は意識が無くて、手足はプラプラしている。この冒険者はFランク。ルディの、一つ上のランクだ。それを瞬殺してみせた。
ソイツをドサッと、エスナやミラの前で落としてから冒険者ギルドを後にする。
まるでモーゼが海を割るかのように、俺の去る道が開いていく。
その日、迷宮都市ビギナリアから冒険者が一人、街の外に出ていった。その冒険者は肩に、青と赤のスライムを乗せて、左腕の無い少年だった。その少年は不意に、右手を空にかざして何かを回すような動作をした……
〘ユニークスキル『運命の輪』の効果が発動しました。運命の輪が逆位置から正位置に変化して回り始めます〙
迷宮都市ビギナリアから去るルディの顔は少しニヤけていた。
「さようなら、俺の恋心。さて、もう一人のメンバーを迎えに行こうか……アオイ、アカネ」
『リジェクテッド』とは拒絶されし者。
自分達が拒絶されたのに同じ事を、自分達でやってしまった女性達。自分達を守り導いてきた少年を、自分達の都合で……その日からリジェクテッドの元リーダー……ルディを見かける事は無くなっていた。