軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

明かされる過去

新人研修会での模擬戦で、斥候職としての能力を見せていたエスナさんには致命的な欠陥があった。人との接触を、異様に嫌がっている感じがした。

それは攻撃を避けるときも、目を瞑ったり身体が硬直したり……

俺は怪我する危険な攻撃を、横から割り込んでその攻撃で気絶していまう。

その理由を同じ女性で専属受付嬢のフィオナさんが、聞き出してくれる事に……翌日に来てみると理由を聞き出してくれたフィオナさんから、覚悟を問われていた。

多分、かなり深い理由なんだろうな。これも何かの縁だ。フィオナさんには、受付カウンターから別室に案内されてそこで聞くことになる。

フィオナさんに着いて行くと、別室には既にエスナさんも待っていた。その表情はどこか暗く、落ち込んでいるようだった。そして、諦めているように感じた。

「……ルディさん、昨日は、すいませんでした。私を助けてくれて、ありがとうございました。昨日、庇ってくれたルディさんならと、私も覚悟してお話させて貰う事にします。その上で……お願いします。助けて下さい。うぇ〜ん」

あちゃ、泣き出してしまった。まだ、聞いてないんだけど……フィオナさんの方を見ると、任せて下さいとばかりに。

「大丈夫です。昨日、私がエスナさんから聞いてますから。多分、泣いて話が出来ないから、私から説明して欲しいと言われてますから……」

良かった。理由を聞くのに、何時間もかかるかと思ったよ。でもって、フィオナさんから説明してくれるみたい。

「イヤな話になりますけど、ルディ君は『鬼腹』ってご存知だったりしますか?」

なんだろう? 『鬼腹』って。鬼のお腹……分からん。

「すいません。ちょっと分かりません」

「ん〜……そうですね。ルディ君もご存知だと思いますが、ゴブリンやオークなど女性の天敵ともいえる魔物がいます。彼等は女性を攫い、その……繁殖します」

そうだね。この世界でも、ゴブリンやオークなどの主に鬼族は人を攫い繁殖にする。鬼族? まさか……

「鬼腹ってまさか?」

「分かりましたか? そうなんです。ゴブリンやオークに攫われて、孕まされた女性の蔑称です」

やっぱり、冒険者でも魔法とかで妊娠しないようにかけるのは、こういう鬼族の習性の為だ。それは一般の村人なんかは犠牲になると……想像するだけで怒りが。

「彼女のお母様が、そうらしいです。そして、冒険者などでゴブリンやオークの巣が討伐されると、稀に攫われていた女性が見つかる事があるのです」

うん、なんか見えてきたけど……激重じゃん。

「冒険者に助けられた女性は……死ぬような環境だったはずですが、地獄は助けられた後も……地獄が続くのを、知ってる人は少ないかもしれません」

あ〜、そういう事かぁ〜。ある意味スキルで迫害されていた、俺と同じなのかも。

「多分、分かったと思いますが……攫われて戻って来た女性に、この世界で優しい所などありません。彼女のお母さんも村で迫害され、その……エスナさんも父親が誰か分からないそうです」

…………キツイな。

「当然、エスナさんの扱いも、村ではヒドイモノだったらしいです。普段から暴力を……それが原因で、向かって来る相手に対して目を瞑ってしまい、身体も動かなくなるそうです」

なるほど、暴力によるトラウマだね。これはなかなか、治すのがキツイかも……

「今回、エスナさんはお母さんも亡くなり家族と呼べる人もいないので、村を出て冒険者になる為にここ迷宮都市ビギナリアに来たとの事です」

俺は現在も泣いている、エスナさんに近づいて……抱きしめた。

「そうだったんだね。辛かったね。良く頑張ったね」

同じ年とは思えない程、背も低く痩せすぎな身体が、さらに痛々しく感じる。恐らく、栄養失調気味なんだろう。ただ、ここまで生きてこられたというのは、お母さんから愛されていたのだろうね。

幼い顔を歪ませて、泣きじゃくるエスナさん。

俺に体重をかけて、寄りかかるように泣いていた。

その体重の軽さに、俺までウルッと来た。

「事情は分かったよ。それなら俺と一緒に、冒険者をやろう。エスナさんのトラウマも克服出来るように、俺が協力するよ」

幼子のように泣いているエスナさんと、冒険者をやる覚悟が出来た。辛い思いをした分、これからは良い事があればいいさ。

「ルディ君、ありがとうございます。私もそうして貰えると安心です。せっかく頑張ろうとしているのに、こんなのってあんまりです」

フィオナさんも優しいね。自分の事のように……

そうだね。一応、トラウマ克服に策がないワケでは無いからね。上手くすれば、エスナさんは優秀な斥候職になれるはずだし、このダンジョンが多い迷宮都市ビギナリアでは貴重な戦力になるはずだ。

「分かりました。エスナさんもそれでいいかな?」

泣いているエスナさんは、顔を上げて……

「よろしくお願いします。ルディさん」

出会って始めて笑顔を見せてくれた。その顔は、笑顔と泣き顔の中間で……でも、俺には笑っている顔に見えたんだ。トラウマ克服を頑張って、二人でダンジョンにも挑みたいしね。

そこは、新人冒険者が集まる迷宮都市ビギナリア。

冒険者登録を終えたばかりの冒険者に成り立てホヤホヤの新人冒険者パーティーが、また一つ新たに誕生した瞬間だった。