作品タイトル不明
モラーザを立ち去る前の一幕
【ルディがモラーザを立ち去る前、ルディ視点】
※エピソード一の謝罪場面がここである。
親族達を騎士に連れて行かれた女達は、今回スタンピードを抑えた俺から口添えが欲しいと、願い出て来た。
民衆の見ている場でも恥ずかしげもなく、土下座してるし。
あのね、犯罪者になってしまった者達を、助ける義理もないし……いくら俺が言ったからって無理だと思うよ。それに……
本当なら同じ犯罪者なのに、自由を許させてるお前達が『赦して』は違うと思うけどな。
「罪は償わないと。お前達が身体売って、親達を買い戻せば良いんじゃないの? 得意でしょ? 勇者君相手に、ヤリまくりなんだから……」
周りの男達は『おお〜』と歓声が上がる。見た目はいいけど……オススメはしないよ。
病気とか平気なのかな? どうしてもの時は保険入っときなよ、保険は異世界には無いのかな? 性病は恐いよ〜。
それにしても、なんで俺を頼って来るかな? 本当にめんどくさい。
「勇者君に頼みなよ。そんな時の為の、勇者君でしょ。今まで役に立ったこともないのに、そんな『勇者君』にケツ振ってまで着いて行ったんだから、最後まで面倒見てもらいなよ。本当に迷惑だから、もう来ないで下さい。お願いします」
正直に言ってやりました。本当に、分かって欲しいモノです。もう、勘弁してくれ〜。
これから学園に勇者君と行くのに、余計な事をしない方がいいと思うけどね。
まあ、コイツらなら助けない俺が悪いとか思いそうだな……と思っていたら。
「そこまでだ。キミ達はもう辞めろ。これは領主様からも聞いた事だ。村長を始め、首謀者達の刑は免れない。俺も勇者として、キミ達を許して貰うので精一杯だったのだ。だからこれ以上を言えば……」
おお、『勇者』のジョブを貰った次に役に立ったと思えたぞ。いいぞ、ランドルフ。勇者として犯罪者を野に放つのは、違うと思うけどね……
めんどくさい女は任せた。俺はその場から立ち去る。
いい加減、諦めて欲しいものだ。
それからはランドルフが説得したのか……女達は大人しくなった。
姿を見る事も、無くなったけどね。
そんな感じでモラーザを立ち去る日を待ちわびながらいたが、俺の元にある冒険者が駆け寄り教えてくれた。
『今、大通りで勇者が刺された』と……
俺は大通りに向かい走り出す。そこで見たのは……
目が血走り、口からはヨダレを垂れ流しながら、勇者ランドルフに向かって罵声を浴びせる中年女性が。
アレはこの前のスタンピードで、俺がぶっ飛ばした中年女性だったはず。
周りの村人は「あの人は旦那と息子を……」とか言っていたからな。スタンピードの原因を作った、勇者ランドルフを赦せなかったのかもな。
その本人は、国の意向でお咎めなし。それどころか、勇者だからと甘い事をしていたら……亡くなった人は、浮かばれないよね。
中年女性にとっては絶対に譲れない状況だね。勇者ランドルフはまさに、因果応報だな。
しかし、勇者に対して、やっちまったこの中年女性はもう……極刑は、免れないだろうね。俺が言った事を、分かってなかったのかもな。責任転嫁しても、死んだ人が生き返るワケでもないのに。それでも……
満足そうな顔をする中年女性は、刺されてうずくまる勇者ランドルフをひたすら蹴り飛ばしている。
普通の中年女性の蹴りなんて、勇者にはダメージにならないだろうが……
本当の殺意を向けられるのは恐いからな。誰も中年女性を止める事が出来ず……騎士が来るまで、勇者は蹴られたままだった。刺された傷も致命傷ではないみたいだ。
最後に騎士に捕まる前に、この中年女性は自らナイフで心臓を刺し自害した。
俺はそんな行為は、好きではないが……中年女性はやりきった顔をして、息を引き取った。
その狂気染みた復讐劇に、俺達は後味の悪さを感じずにはいられなかった。これで満足なのか? 俺はその中年女性に聞いてみたいが……それはもう、叶うことはないのだから。
勇者が刺された……その日のモラーザは大騒ぎ。そして犯人はその場で自害という、前代未聞の事件だった。
そして俺は気付いてしまった。
これは、俺のユニークスキル『運命の輪』の効果ではないのか?
『運命の輪……世界に存在する十番目の超越したユニークスキルで、人生の転換点、大きな変化、チャンスの到来、不可避な運命を教えてくれます。ポジティブな流れ(好転・転機)や運命的な出会い を示唆し、状況が自力では抗えないほど強制的に、あるいは急激に変わるタイミング を表します。これには逆位置も存在して全てが逆転します。しかし、所持者はそれに介入する事が出来る』
そう、俺はこれに介入をした。そして天のささやきは確かに俺にこう告げた。
〘ユニークスキル『運命の輪』の効果が発動しました。運命の輪が逆位置から正位置に変化して回り始めます〙
ということは……運命の輪で介入しなかったら、勇者ランドルフは見事にノーダメージで、今回の事件を乗り越えてた可能性がある。
改めてユニークスキル『運命の輪』の凄さが身に染みた。
「痛て〜よ、血がたくさん出てるよ〜、もう……なんで俺様がこんな目に。イタタ、お母さ〜ん」
周りの人などお構いなく泣き叫ぶ勇者君。無様だね。
だが、運命は勇者を生かす方に転んだらしい。今、目の前でポーションで治療されている、ランドルフを目にしてその場を後にした。後ろからは……
「勇者ランドルフに、手を出す者は極刑に処す。これは、サスーニア海洋国国王陛下よりの沙汰である」
騎士が駆け寄り、勇者を保護して去っていく。
くっ、国が出しゃばってきたが。イヤ、逆に俺の手で勇者にトドメを刺せる機会が出来て、喜ぶべきだな。これで死なれてはつまらんから、次の機会を待つとするか。
勇者や女達には……この左腕や、アオイに対しての振る舞いなど許容範囲を超えたからな。
そして、婚約者含めて奪った全てをお前達に必ず償わせてやるからな。
『これが俺の生き方だ』
アオイを肩に乗せて、俺は復讐を誓って次の地に……再度、復讐を誓って歩き出していく。