軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レッテルを貼られていた少年

モラーザで買い物を終えて故郷に帰ろうとした時に、故郷が魔物の大群に襲われている事を知る。

恐らく冒険者パーティー『クリムゾンダンス』から聞いていた、スタンピードと呼ばれる現象だろう。

スタンピード……原因は様々だが、魔物達が大群になり人々の生活圏を襲う。魔物被害でも一番犠牲者が出る、最悪な状況だ。それは発生地はもちろん、近くの街や村まで広がり、最悪は広範囲で被害が出てしまう。

故郷の村では、冒険者に報酬を払う余裕がないと思われる。(風土病『クラウチダウン』の被害により、蓄えを切り崩して生活している為)

よって、モラーザの防衛の為に、冒険者ギルドは故郷は見捨てられると思われる。

そんな事は俺が赦さない。故郷を潰すのは俺だぞ〜。魔物に横取りされてたまるかよ。

レベルアップやスキルによる効果で、歩いて一日半の距離がある故郷まで約四時間で走り抜けた。

俺が見た故郷は……木の柵は倒されて、空堀には無数の狼型魔物の死体。コゲ臭い匂いが、辺りに立ち込めている。焼かれた魔物の死体だろうか、その中でも少しケモノの匂いも混じっている。

復興しかけていた畑などは再び荒らされて、生き残っていた収穫物などはもう絶望的だろう。人と魔物の足跡で、メチャメチャになっている。

魔物の鳴き声と人のうめき声が不協和音となり、不快な気持ちにさせてくれる。

故郷はキライだった。破壊されたら、どんなに嬉しいだろうと……村人達に迫害されていた時に思っていたが、この感情は……悔しい? かな。

そうか、魔物に先を越されて悔しいんだ。村を壊すのは、俺だと思っていたから。獲物を取られた気分。

その獲物を横からかすめ取った魔物が、目の前にいる。

「いいぜ。俺の八つ当たりに、付き合ってくれよ。獲物を横取りするヤツは、赦す気はないからな。アオイ、行くよ」

「キュイ、キュイ、キュウ」

触手で敬礼している。アイアイサーだって。

『今、最弱の魔物と役立たずとレッテルを貼られた少年がスタンピードに挑む』

一心同体で左腕となり、一緒に狼型魔物に突っ込んでいく。

村を襲撃していたのは川でも戦った、グリーンウルフやそのグリーンウルフよりも、体格が良く能力も高いグレイトウルフなど。そのザコウルフを統率するリーダー種も、数多く村に入り込んでいる。

村の建物もあっちこっち壊され、まさに戦場と呼ぶのに相応しい状況だ。至る所に転がる死体。それを食い漁る狼型魔物。見つけてはアオイの触手で一突き。狼型魔物の脳天を貫く。当然、アオイが魔物の死体を収納していく。

故郷の村は三百人が暮らしていた。小さな村だったからまぁ、全員が顔見知りなわけで……それが絶命している姿は、少しはクルな。

それはそれとして、未だに続いている戦闘音に俺もまだ生存者がいる事を確認出来ている。

勇者のアイツや他の女達もそれなりに戦えるはずだから、全滅はないと思ってはいた。だから音から生存者の確認が出来たのは、良かったかもな。そちらの方向に向かいながら、魔物の数を減らしていこう。

徐々に増えていく魔物達。そのどれもが目がギラつき、大量のヨダレを垂らしている。中には血が滴っているキバを持つ個体までいる。

そして、村のほぼ中心で一番大きな建物につく。

そこはかつての婚約者クリスティの実家でもある。

そう、この村の村長の自宅を拠点に、迎撃をしているようだ。

食料の備蓄や武器の調達などを考えたら、ここで援軍を待つのが正解だからな。援軍が来るようなら、だけど……

ここに来るまで、主に老人の死体が多かった。

恐らくは若い人を逃がす為に、自らおとりになったのだろうな。

狼型魔物に貪られる原型の無い死体が多かったが彼等の顔は若者の礎となり、どこか満足しているような最後を迎えていたのが印象的だった。

村長宅の周りはまさに狼の楽園といった感じで、多くの狼が生息している。散発的に起こる戦闘音。

まだ抵抗をしているようだ。間に合うな。

村長宅の周りにいる狼を蹴散らして、左腕を村長宅の屋根に伸ばす。アオイのスライムな身体を使い、ロープアクションのように屋敷内に降り立つ。

屋敷内はまるで野戦病院のようで、村人でも戦う事の出来ない女性や子供が多いようだ。

戦闘職もほとんど見られなく、狼型魔物にヤラれてしまったのだろうな。

しかし、ヤツらがいないし……村長やウチのオヤジ達もいない? ヤラれたのか?

そう思っていたが……農業のまとめ役のオジサンが、残っていた。話を聞いてみると……

「ハァ? いち早く逃げ出したのか? 村中の財産を持ち逃げしたのか? ヤツらはバカなのか……」

なんと予想のナナメ上を行くヤツらだな。その選択は……まぁヤツらが選んだ結末だから、しょうがないよね。

それはまずは置いといて、この状況を何とかしないとね。

生きている戦闘職で、無事なのは二人だけ。

他は怪我や亡くなったりしている。

男衆ももう三分の一にまで減っていて、今は女性達も撃退に駆り出されている。狼型魔物も頭の良い個体が指揮をしているようで、休みなく襲撃を続けているそうだ。

全く、左腕を無くした時といい……狼型魔物とはつくづく相性が最悪だよな。俺はまとめ役に後を任せると、

「それじゃあ、いっちょヤリますか。派手に暴れようぜ相棒。イッツ、パーティータイムってか」

俺達は眼前を埋め尽くす狼型魔物に向かって……突撃した。