作品タイトル不明
生き抜く術
俺は以前に拠点を置いていた、川沿いの丘の上に来ている。
『クリムゾンダンス』のメンバーからそれぞれの冒険者としての役割や、キャンプの注意点や、夜の見張りなどのサバイバル的な事。
個人的な剣士、盾士、斥候、魔法使い、僧侶などの戦い方など……
そして、何より勉強になったのが狩った魔物の解体の仕方や、植物や鉱物などの採取の仕方など、独学では限界があるような内容まで余す所なく彼らは教えてくれた。ありがたい事だ。
そして、彼らに師事して六ヶ月が経ち、今は最終試験という名の模擬戦だ。それは俺対クリムゾンダンスという変則模擬戦。見方によってはイジメだよ〜。いや、マジで。
俺は模擬刀で、後衛の魔法使いリリンと僧侶ダニエルを速攻で狙い強襲する。多人数を相手するには先に人数を減らすべき。まぁ、お約束ってヤツだね。
身体強化を全開にして、突っ込んだ。
後衛の二人ともビックリした顔をしていたが……
『ガキーン』と模擬刀と模擬刀がぶつかる音が響いた。斥候で猫人族のキャシーだ。今の俺のスピードについて来れるのは、彼女だけだからね。
しかし、小柄な彼女では俺の一撃でふっ飛ばされいる。その隙を突こうとするがベルナールさんの斬撃が俺の顔のすぐ近くを通り過ぎ、続いて盾士ジャンさんが盾を構えて突っ込んできた。
シールドバッシュと呼ばれる技だ。
やはり手数が違うね。シールドバッシュを避ける所にキャシーさん、ベルナールさん、リリンさんが狙っているのが分かる。俺はこの状況を逆に利用する。
左腕を前に突きだしてシールドバッシュを受け止める……いや、違う。
シールドバッシュの勢いを殺して盾に吸い付く。
そう、アオイのスライムな身体で……盾に吸着。
避けると思っていた四人は、いつまでも避けない俺に不思議がっていた。
このチャンスを逃すことなく近づいていたキャシーさんに、一撃を打ち込んで反動で後衛に迫る。
魔法使いのリリンさんは水魔法を使い牽制してくるけど、スピードと模擬刀で迎撃しながら機会を伺う。
圧倒的な魔法の弾数に押されて始める。
くっ、ならば……左腕のアオイが近くの木に伸びて掴む。それを利用して逃れてゴムの要領で避けた反動で、リリンさんに突っ込んだ。
そこに一撃を叩き込んだがダニエルさんがメイスで受け止める。しかし俺の反動を利用しての勢いに押されて飛ばされる。その隙にリリンさんに一撃。女性達は退場となる。
そして倒れたダニエルさんも一撃。コレで三人目。
後は盾士のジャンさん、剣士のリーダーベルナールさんのみ。
俺は迫りくる二人にスピードで翻弄する。特に盾士のジャンさんはスピードという点では、全くついてこれない。その大きな盾と身体が邪魔になり、俺に一撃を貰う。
そして遂にベルナールさんとの一騎打ち。俺は最後にアオイにも離れて貰い、純粋な剣術のみで勝負を挑んだ。
繰り出される斬撃、規則的でありながら変則的な攻撃。フェイントを利用した、フェイントの数々。
どれも俺が憧れた冒険者の姿がそこにはあり、俺は攻撃をさばきながらも視界がボヤケてくる。
この半年間で習った事。笑い合った事。時にはぶつかり合った事も。冒険者としても人としてもベルナールさんに憧れて追いつこうと、もがいた半年間だった。
全てが良い思い出だ。この勝負がいつまでも続いて欲しいという気持ちと、ベルナールさんを越えてみたいという気持ちがぶつかり合い、俺は……越えていく。
憧れと命の恩人という人を、越えて俺は先を目指す。
ベルナールさんが突きだした剣を、下から弾き飛ばし、ベルナールさんの首に……模擬刀を当てた。
それをダニエルさんに回復されながら、俺達二人の勝負を見ていたメンバーからは歓声が上がる。
「お見事だ、ルディ君。俺達の完敗だな。大きく強くなった。これで君に教えられる事は無くなった。戦闘力では新人の域を越えている。確かにキミは左腕を無くしたかもしれないが、それをバネにここまでになれたのは尊敬するよ。成人したら是非、冒険者になって活躍して欲しい。最後にキミに師匠として言葉を贈らせてくれ。確かにハンデがあるキミでも『挑戦する事に関しては平等』なんだ。だから何事も、挑戦し続けて欲しい」
クリムゾンダンスのメンバーはそういうと去っていく。
ああ、やっぱりカッコいいな。あの背中を忘れないように瞳に焼き付けて、ベルナールさんの言葉を忘れず『挑戦し続ける』冒険者として成り上がってやる。
俺の名声が彼らに届くように精一杯やらないとね。
今回の依頼を達成したクリムゾンダンスは、この国を離れて大陸の自分の国に帰るそうだ。今回の事で稼ぐ事が出来たから、一度故郷に帰るらしい。
歩む道は別々になるけど、またどこかで道が交わるように……その時に彼らが胸を張ってコイツは自慢の弟子だっと、言えるように頑張るしかないな。
まだ成人まで後、半年間ある。これからはクリムゾンダンスに教えて貰った事を独自に発展させたり、クリムゾンダンスがいて出来なかった事を実験しよう。
冒険者としてこれからやっていく準備に取り掛かろう。
アオイとの連携をさらに深めて、スキル『スライム』の特性をさらに理解していこう。
冒険者としてお金も欲しいけど、やっぱり仲間だよね。
クリムゾンダンスみたいに、信頼し合える仲間が欲しいな。
「キュキュ、キュイ」
「ああ、分かってるさ。アオイは特別だな、なぁ相棒」
俺達は冒険者として成り上がってやるさ。それが『俺の生き方だ』