軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第087話 ミレイユ街道

俺はヨシノさんとリンさんの3人でミレイユ街道にやってくると、ゲート前で連携の確認をすることになった。

「じゃあ、冒険を始める前に決めておくけど、まずは大事な報酬のこと。沖田君はどう分けたい?」

リンさんがパーティーを組む際に最も大事なことを聞いてきた。

パーティーで一番揉めやすいのは報酬の分配なのだ。

「どういう分け方がオーソドックスなんです?」

「まずは等分。単純に人数分で割る。簡単だけど、功績で揉めやすい」

これはわかる。

極端な話、何もしなくても三分の一がもらえてしまうため、頑張った人は不満だ。

「それはやめとくわ。あなた方と俺とではキャリアが違うし、俺はどちらかというとお客様だもん」

実力云々以前に今日は初めて来るエリアに連れてきてもらっている立場だ。

むしろ、金を払う立場だし、等分はない。

「じゃあ、ラストアタック制にしよう。単純に倒した人の物」

これで揉めやすいのは以前の高校生連中にいちゃもんをつけられたハイエナがある。

HP100の敵を一生懸命HP1にまでしたのに、それまで何もしていなかった奴がトドメを刺せば、報酬がそいつの物になってしまう。

「それでいいの?」

「まあ、少なくとも、私達はほとんど一撃で倒せるしね。ここは大型の魔物は出てこないし」

一撃か……

だったらラストアタック制がいいかもしれない。

実際にエレノアさんがナナポンとやっている時もラストアタック制を採用している。

スケルトン、よえーし。

「じゃあ、それでお願い。ここのモンスターの強さがよくわからんし、それでいい」

ぶっちゃけ、今日は偵察である。

俺のメインの活動はナナポンとだから今日はナナポンでもいけそうかどうかのチェックでしかない。

「わかった。連携は…………全員、剣士だね」

リンさんが俺とヨシノさんを交互に見る。

「リンさんもヨシノさんも魔法を使えるんでしょ?」

「使えるがほとんど使わない。ここだとグレートイーグルに使うくらいだ」

あくまでメインウェポンは剣ってことか。

「交代でやればいいんじゃない? 見ている2人がグレートイーグルを含めたモンスターの奇襲を警戒すればいい」

ヨシノさんが提案してくる。

「俺もそれでいい。無理そうなら助けを呼ぶわ」

「じゃあ、そうしよう。まずは言い出しっぺの私が先にやるよ」

最初はヨシノさんがやってくれるらしい。

「おねがいします」

本日の冒険のあれこれを決めた俺達は冒険を始めることにし、ヨシノさんを先頭に街道を歩き始めた。

街道は石張りの道で歩きやすいし、天気も良く、暖かくて気持ちがいい。

俺は強化ポーションのためにその辺に生えている草を調べたいなーと思いつつもさすがにそれはできないため、ヨシノさんの後ろ姿を眺めながら歩いている。

「リンさん、そういえばだけど、他のメンバーはどうしたの? 確か、サツキさんの元パーティーメンバーがいるんだよな?」

俺は2人しかいないことが気になっていたため、聞いてみる。

「私達だけじゃ不満か? もっと女が欲しいと?」

俺はそんなハーレムを求めていない。

「いや、この前の新人指導も2人だったし、どうしてんだろって」

「私らはそんなにパーティー単位で活動しないんだ。正式なパーティーメンバーは全員で7人いるけど、多いんだよ」

「確かに7人は多いね」

報酬を7等分にしないといけないと考えると、儲からない。

「もっと言えば、あんたみたいな正式メンバーじゃないのが20人以上いる。私達はそういう人達とバラバラに組むんだよ。誰かが適当に募集かけて、行きたいヤツが行くって感じ。ぶっちゃけ、正式メンバー全員で冒険に行ったのって1年以上前になるね」

大丈夫か、それ?

「仲が悪いの?」

「いや、私もヨシノも26歳になる。他の人達も30歳前後。十分、ベテランなんだよ。中には結婚した人もいるし、もう一生懸命、冒険をするって歳じゃないんだ。たまに後輩と行って、先輩風をふかすって感じ」

「なんか部活とかサークルみたいだ」

「実際、そんな感じだね。一応、リーダーはヨシノだけど、特に指示もせずに好き勝手やってる。ヨシノはソロが多いしね」

そういえば、俺もヨシノさんはソロの活動が多いって聞いたな。

実際、俺と会った時も1人だった。

「思ったより緩いんだなー……」

「まあね。だからあんたもそこまで気を張らなくてもいいよ。同級生だし、適当にやろうよ」

同級生がベテランかー……

こう言われると、俺って本当に遅いルーキーなんだな。

「リンさんは辞め時を考えてる?」

「私はもうちょっとやるかな。30歳くらい?」

お!

俺と一緒だ。

「30歳で辞めるんだ?」

「子供が欲しいしな」

俺も欲しい!

一緒!

「彼氏いんの?」

「旦那がいる」

…………既婚者だったようだ。

一緒じゃなかったわ。

「え? マジ? 結婚してんの? 旦那さんがよく許可を出したね」

普通、こんな危ない仕事は反対しそうなもんだ。

「そういう条件でプロポーズをオーケーしたからな」

へ-……

「それにしても、もう結婚してんのかー。大人だなー」

「26歳だぞ。別に早くもないだろ」

まあ、ちらほら結婚しだす年齢かね?

「言われてみればそうだわ」

「だろ? あ、だから私は夕方以降と土日は付き合わないからな」

旦那さんがいればそうなるか。

「俺もカエデちゃんが休みの日と夕方以降は行かない。カエデちゃんの夜勤があれば行くかもだけど」

「カエデのストーカーみたいだな…………」

せめて、バカップルって言え!

「ハァ…………後ろの2人が私の士気を下げてくる」

前にいるヨシノさんがため息をついた。

「ヨシノさんには10代のアイドルの子がいるでしょ。中学生だっけ?」

「大物司会者の愛人だろ」

俺とリンさんはヨシノさんを慰める。

「全部、嘘に決まってるでしょ…………私はvtuber命だから」

そこも従姉と一緒かい……

俺達が適当に話しながら歩いていると、ふと、街道から左に逸れた平原に黒い塊が見えてきた。

よく見ると、犬っぽい。

「あれがハイウルフと見た」

俺は立ち止まると、犬がいる方向を指差す。

「正解。ヨシノ、1匹だよ」

リンさんも立ち止まり、ヨシノさんに声をかけた。

「わかっている」

ヨシノさんは腰から剣を抜くと、構える。

しばらく待っていると、ハイウルフがかなり接近してきた。

ハイウルフは大型犬くらいの大きさであり、ヨシノさんに向かって駆け寄ってきている。

もちろん、撫でてほしいわけではない。

その証拠にハイウルフの目は殺気を帯びており、鋭い牙を見せながら全力疾走をしていた。

ハイウルフがはっはっという荒い息遣いが聞こえる程度まで近づいてくると、ハイウルフは地面を蹴り、ヨシノさんに向かって、飛び上がる。

ヨシノさんは特に動揺することもなく、横に身体を動かすと、ハイウルフの飛びかかりを躱しながら剣を上段に構えた。

そして、隙だらけのハイウルフの胴体に向けて、剣を振り下ろす。

「――ギャン!」

ハイウルフは鳴き声を発しながら胴体を斬られ、煙となって消えていった。

「こんな感じだよ」

ヨシノさんはハイウルフがドロップした20センチくらいの白い牙らしきものを拾いながら言ってくる。

「あんま強くないね。エデンの森のウルフが大きくなっただけって感じ」

「実際、そんなもんだよ。ただ噛みつかれたら本当に危ないから注意だね。君、ジャージだし」

「一応、インナースーツは着てますよ」

「じゃあ、大丈夫。腕を食いちぎられることはないと思う。ケガする程度」

ケガする程度と言うが、重傷だろ。

まあ、回復ポーションがあるから大丈夫だとは思うけど、痛そうだ。

少なくとも、ナナポンは泣くな。

「そのドロップアイテムはいくら?」

「8000円くらいだったかな? ちょっと覚えてない」

Aランクはこの辺の素材の値段に興味がないようだ。

もっと稼いでいるだろうしなー。

「スケルトンよりかは強いし、そんなもんか……」

「ハイウルフは基本的には1匹だけ出る。でも、夜になると、群れていることがあるから注意ね」

あれが群れでいるのか……

ナナポンのことを考えると、夜は無理だわ。

せめて、もう1人、ナナポンを守れる人材がいればいいけど、俺一人ではナナポンを守りながら群れのハイウルフは対処できない。

「夜は無理かな」

「それがいいと思うよ。夜は暗いし、危ないからね」

カエデちゃんが夜勤の時もやめた方が良さそうだ。

と言っても、一緒に住み始めて、カエデちゃんが夜勤だったことはない。

「そうします」

「うんうん。それでどうする? 次は君がやるかい? それともリンに任せる?」

うーん……

別にやってもいいけど……

「リンさん、先にお願いしてもいい? 見てるだけでも勉強になるわ」

やっぱりネットで調べるよりも実際に教えてもらった方が良い。

俺一人なら問題ないけど、後衛のナナポンのことを考えると、色々と教わっておきたい。

「いいよ。じゃあ、次は私」

リンさんは快く承知してくれると、ヨシノさんが下がり、代わりに前に出た。

「リンが剣を振るのを見るのは初めてだよね?」

俺の隣に来たヨシノさんが聞いてくる。

「そうだな。Bランクかー。強そう」

「まあ、強いよ。あまり活動してないからBランクなだけだし」

この言い方だと、実力はAランク級ってことだ。

「人妻剣士だもんね」

「その呼び名は止めようよ………」

しゃーない。

事実だもん。

ジャージ剣士。

おっぱい剣士。

人妻剣士。

いやー、すげー弱そう……