軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第088話 この前買ったサングラスをかけようかな?

人妻剣士ことリンさんが前に出ると、俺達は再度、街道を歩き始めた。

「あんまりモンスターが出ないんだな」

俺達がゲートから街道を歩いてきて、15分程度経っているが、遭遇したモンスターはいまだにハイウルフ1匹だけだ。

「街道沿いはそんなもんだよ。街道から逸れたらいっぱいポップするよ。今日は沖田君が初めてだし、3人だからね。まったりやる予定」

気を使ってくれたわけだ。

いい人だなー。

「ありがとうございます」

俺はお礼を言い、隣のヨシノさんにぺこりと会釈をする。

「うん。あのさ、ちょっと苦言を言ってもいいかい?」

「苦言?」

なんだろ?

「まず、そのアイテム袋って10キロじゃないでしょ」

あ、エレノアさんと電話した件だ。

「いえいえ、10キロです」

「エレノアに聞いたよ」

「あー…………あのー、誰にも言わないでもらえると……」

演技って大変だわ。

演技しかしていないエレノアさんで慣れておいて良かった。

「言わないよ。でも、気を付けてね? そんな高い物を初心者丸出しのジャージ姿で安易に使っちゃダメ。冒険者の中には悪いことを考える人もいるんだから」

「はーい……」

そんなの返り討ちにしてやるってイキってた僕が悪いでーす。

「あとさ、君、警戒してる?」

「してますよ」

「そう? ちゃんと上も見てる? 君、さっきの頭を下げた時もだけど、どこ見てるんだい?」

…………だって、魅了の魔法が。

「気を付けまーす」

俺はなるべく、ヨシノさんの方を見ないようにし、上を見上げた。

上を見ると、雲一つない青空が広がっており、とても穏やかな気持ちになる。

すると、青空の中に急に黒い物が現れた。

「あ、出た」

俺は空を見上げながら言う。

「んー? あ、ホントだ」

ヨシノさんも見つけたようだ。

「あれがグレートイーグル?」

「だね。リンー」

ヨシノさんがリンさんに声をかける。

「わかってるよー…………こっちこーい!」

リンさんが空を飛んでいる鳥に向かって叫んだ。

「何あれ?」

「君も持っている挑発。ヘイトを買ったわけだ」

へー……

リンさんも持ってるんだな。

やっぱりイキってるんだ。

「あんなんでいいの?」

「いいよ。別にモンスターが言葉を理解してるわけじゃないと思うけど、そういうもん」

「ふーん、ヨシノさんも持ってるでしょ」

「…………持ってる」

やっぱりね。

しかし、『ざーこ、ざーこ』じゃないんだなー。

まあ、同い年で人妻のリンさんが言ったらちょっと引くけど。

「レベルは?」

「2…………でも、リンは3だね」

「あんたら、うるさい!」

挑発レベルをバラされたリンさんが怒った。

どうやら挑発のスキルってイキリレベルみたいだわ。

頑張って、1で止めておこう。

俺が心の中で決心をしていると、さっきまでは黒い点だったグレートイーグルがかなり近づいてきていた。

「大きいなー」

グレートイーグルは羽を広げているが、サイズはゆうに2メートル以上はある。

マジででっかい鳥だ。

「たまに上空に連れ去られることもあるから注意ね。特に軽装の女子」

「男子で良かったー」

「男子の場合はあのするどいくちばしで脳天を刺してくる」

そっちの方が嫌だわ。

「女子が良かったー」

やっぱりこのエリアはエレノアさんだな。

「まあ、気を付けてさえいれば問題ない。あと、夜は出ないから安心」

鳥目だもんね。

でも、もし、夜に出てきたら脅威度がヤバいわ。

夜の空とか見えねーもん。

俺がヨシノさんから情報を仕入れていると、グレートイーグルがリンさんに向かって滑空しだした。

リンさんはそれを迎撃するために剣を構える。

グレートイーグルが滑空し、リンさんをくちばしで突こうとした瞬間、リンさんが3000万円のショートソードを振った。

しかし、グレートイーグルはリンさんが剣を振る前に攻撃を止め、上空へと上がっていく。

そのため、リンさんの剣は空振りに終わった。

あれ?

剣を伸ばさないの?

俺はてっきり、剣を伸ばして、斬るのかと思ったが、リンさんはそれを選ばなかった。

だが、リンさんはすぐにリンさんに後ろを見せながら上空に逃れようとしているグレートイーグルに向かって手をかざす。

「アイスニードル!」

リンさんが魔法名を言うと、リンさんの手のひらから1メートル近い、氷の槍が現れ、グレートイーグルの背後を襲った。

グレートイーグルは後ろから来る氷の槍にまったく気付いていなかったため、リンさんが放った氷の槍はグレートイーグルにあっさりと突き刺さる。

すると、氷の槍が刺さったグレートイーグルが地面に落ちてきた。

グレートイーグルが地面に落ちると、少し、羽をバタバタさせていたが、すぐに動けなくなり、煙となって消えていった。

その場には青色の液体が入ったフラスコが残された。

「もしかして、ポーション?」

俺は見覚えのあるフラスコを指差し、ヨシノさんに聞く。

「多分、そうだね。あれはレベル1の回復ポーションだろう。普通は羽根をドロップするんだけど、リンは運が良かったようだね」

ということは、リンさんはすでに50万円を稼いだわけだ。

すごいな。

リンさんは剣を鞘に納めると、ドロップした回復ポーションを拾い、俺達の下に戻ってくる。

「今日はツイてるわ。いきなり回復ポーションが出た」

リンさんが俺達にポーションを見せびらかすように自慢してきた。

「すごいなー。売るの?」

俺は感心したように頷き、尋ねる。

「いや、回復ポーションは売らない。大事なものだからね」

それもそうだわ。

簡単に売るという選択をするのはエレノアさんくらいかね?

しかし、何気に回復ポーションが本当にドロップするのを見るのは初めてだ。

「確かにそうだな……あ、あとさ、なんで剣を伸ばさなかったの? 確か、2、3メートルは伸びるんでしょ? だったらあの鳥が避けた時に伸ばせばよかったじゃん」

グレートイーグルはリンさんの剣をギリギリ避けていた。

剣を伸ばせば間違いなく、当たっていただろう。

「さっきのはあんたにグレートイーグルの倒し方を見せたんだよ。グレートイーグルはこちらが構えていると、ああやって上空に逃げようとする。でも、逃げてる時は背を向けてて、隙だらけだから背後を魔法か何かで攻撃すれば楽。それがグレートイーグルを倒すセオリーなんだよ」

この人、多少、口が悪いけど、ホントにいい人だなー。

わざわざ実践して教えてくれたらしい。

「ありがとうございます」

「あんたが1人でここに来る場合はマジックワンドでも弓でも何でもいいから遠距離攻撃ができる武器を用意することだね」

俺というか、エレノアさんにはナナポンがいるから大丈夫だな。

それにエアハンマーが使えるマジックワンドもある。

「わかった。用意しておく」

1人で来る時はマジックワンドでいいや。

「一応、さっきのハイウルフとこのグレートイーグルがここの主要モンスターだよ。あと、たまにゴブリンとか色々出るけど、強くないから問題ない。それでどうする? 次は沖田君がやるかい?」

ヨシノさんが聞いてくる。

「そうだなー。丁寧に教えてもらったし、やってみるわ」

ミレイユ街道の冒険のやり方はだいたいわかった。

それにしても、この人達、新人指導をやってるだけあって教え方が上手いわ。

実際にやってみせて、注意すべきポイントを解説する。

とてもわかりやすい。

正直、ナナポンも連れてきたかったわ。

「じゃあ、私達は後ろにいるからよろしく。君は大丈夫だと思うけど、何かあったら言って」

ヨシノさんが俺の肩をポンと叩いた。

「お願いします」

俺はヨシノさんに向かって頭を下げる。

「謙虚だなー。もっとイキれよ。早くレベル4になれ」

リンさんが言うレベル4とはもちろん、挑発レベルのことだ。

「そんなことより、君さ、もう頭を下げなくていいよ……」

ヨシノさんが呆れたように言ってきた。

チラッと見たのがバレたようだ。

ごめんなさい。