軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第199話 もうこんな歳か……って毎年言ってる気がする

俺は記者会見を終えると、サツキさんとヨシノさんが待つ池袋のギルドのサツキさんの部屋に戻ってきた。

「おかえり。お前、とんでもないことをするなー……」

さすがのサツキさんも驚いているようだ。

「でしょ? 冒険者を引退するし、最後に退職金をもらおうと思ってね」

前職はそんなもんなかったし。

「なあ、沖田君、いつの間にフロンティアの土地を手に入れたんだ?」

ヨシノさんが聞いてくる。

「TSポーションと交換したのよ」

「はい? あんなもんと土地を交換? それ、大丈夫か? ぼったくりにもほどがあるでしょ」

「TSポーションって伝説級のアイテムらしいわよ。王様が文献でしか見たことがないって言ってたしね。私は小麦粉と水で作れるけど」

最初から作れたし、非常に安価だ。

「だからと言ってねー……」

「需要があったのよ。詳しくはアルクから聞きなさい…………あ、アルク、もう姿を現してもいいわよ」

俺はそう言うと、カバンから透明化ポーションを取り出した。

すると、すぐに透明化ポーションが俺の手の中から消える。

「いやー、何をさせられるかと思ったら君、とんでもないことをするね。これで完全に魔女確定だよ」

アルクがそう言いながら姿を現した。

「あー……さっきの記者を黙らせた魔法や転移はアルクがやっていたのか」

「そうよ。私にあんな魔法は使えないもん。アルクに透明化ポーションを飲んでもらって、傍に控えてもらってたの」

だから俺は魔法を使っていないと主張したのだ。

だって、使えねーもん。

「本部長はどうした? 一緒に記者会見をする予定だっただろ?」

サツキさんが聞いてくる。

「邪魔しそうだったから控室で眠ってもらった。ヨシノさんも本部長さんも魔女からもらったお茶を飲んではダメよ」

眠り薬を盛ったお茶を渡したら何も疑わずに飲んでくれた。

多分、まだ寝てると思う。

「本部長に一服盛るなよな…………後でフォローが大変だな」

ヨシノさんが呆れている。

「私がしゃべりだしたら絶対に途中で会見を打ち切ると思ったからね」

「まあ、そうするだろうね」

ヨシノさんが頷いた。

「だから眠らせた。私に記者会見をさせるのが悪いのよ」

「私達に一言あっても良かったとは思うけどね」

「仕方がないでしょ。本当はここで相談しようと思ったのに急に記者会見なんだもん。まあ、いい機会だから宣伝と世間への認知させておこうと思ってね」

本当はカエデちゃんを呼んで、ヨシノさん、サツキさんの4人で話し合おうかと思っていたのだ。

まあ、あと一応、ナナポンも……

「宣伝はわかるが、認知?」

「フロンティアのエリアをオークションにかけるって言ってもギルドが許可しないでしょ。下手をすると、政府が出てきて、安値で買い取られるわ」

「安値ってことはないだろうが、オークションよりかは遥かに安いだろうね」

「でしょ? だから世間と世界中の国々に認知させたの。これで政府もギルドも内緒で私から買い取ることはできない」

国はドケチだから安価で買おうとする。

といっても、フロンティアのエリアを買おうとするのは民間ではなく、国になる。

やっぱりオークションで国々に競わせるのが一番だろう。

「しかし、ギルドも大混乱だろうねー。当たり前だけど、前例がない」

あってたまるか。

「別にギルドのオークションじゃなくてもいいわよ。勝手にやるし」

「私の取り分は?」

サツキさんが聞いてくる。

「5パーセントは約束するわよ」

「ならいいや。私はどっちでもいいぞ」

まあ、あなたはそう言うでしょうね。

「でも、オークションなんてどうやって開催するんだ? 君、そんなノウハウある?」

「ないわよ。その時はクレアに頼む」

「クレアねー…………クレアってアメリカの手先でしょ」

「どっちでもいいわよ。別にアメリカがオークションを開催してくれてもいい。不正したら王様に言って、ゲートを閉じてもらうだけよ」

という脅しでいこう。

「うーん、まあ、その辺を本部長に話して、ギルドでやってもらうように言うか…………」

「そうしてもらってもいいわ。あなたの立場があるでしょうし」

「そうだね。しかし、とんでもない額になりそうだねー」

「でしょうね。楽しみだわ」

兆に届くかね?

「となると、早いうちに本部長に話しに行くか……」

「それでもいいけど、アルクをどうするのよ?」

アルクはヨシノさんの家に滞在することになっている。

こっちの世界のことを全く知らないアルクを置いてはいけないだろう。

とはいえ、本部長のところに連れていくわけにもいかない。

「あー、ちょっと君の家で預かってくれない? 私はこれから本部長のところに行く」

「いいけど、どうやって帰ろうか…………アルク、私の家に転移魔法で飛べる?」

無理な気もするけど、一応、聞いてみる。

「行ったことないし、知らない場所は無理だね」

やっぱりか……

「私が車でアルクを君の家に送ろうか? その後、君を迎えにいってもらえばいい。今、君は外に出るべきではない」

「なるほど……アルク、それでいい?」

「いいけど、車って? 馬車的なもの?」

車の説明って難しいな……

「速い乗り物ね。乗せてもらえばわかるわよ」

「うーん、乗ってみたいし、それでいいよ。ここに飛んで戻ってくればいいんでしょ?」

「そうね」

便利だな、この子。

よし、弟子2号にしてやろう。

「じゃあ、そうしようか。ヨシノ、行こう」

「ああ」

ヨシノさんは頷くと、アルクを連れて部屋を出ていった。

「エレノア、あの子は本当に王族の子か?」

ヨシノさん達が出ていくと、サツキさんが聞いてくる。

「ええ。王様の唯一の子らしいわ。フロンティアのことを聞きたい?」

「唯一? そうだな。聞かせてくれ」

俺はサツキさんにすべてを話そうと思い、フロンティアの現状、錬金術師のこと、アルクのこと、そして、アルクが何故、地球にやってきたかを説明していく。

「つまり、アルクは視察に来たんだな?」

「そうね」

半分はあってる。

もう半分は旅行だけど。

「しかし、フロンティアがそんな状況だったとはな…………お前を呼んだのは錬金術師に援助をお願いしようと思ったわけだ」

「まあ、見返りは十分にもらうけどね。金の延べ棒が大量よ?」

「それは嬉しいな。正直、円より金の方がいい」

まあ、使う分のお金は十分にあるし、資産として価値が安定している金を持っていた方が良い。

「原価が数千円のものが金の延べ棒になるんだからね。私は本当の意味での錬金術師になったわ」

「錬金術師な…………お前も世界を滅ぼす存在になれるんだな」

「ならないわよ。冗談じゃないわ。アホらしい」

俺は魔王じゃないっての。

「他の者が錬金術のスキルを手に入れる可能性は?」

「今のところはない。王様が言ってたんだけど、ユニークスキルは被らないらしい。だけど、逆に言うと、ユニークスキルを持っている人が死ねば、また出てくる可能性があるらしいわ」

これを昨日の夜に聞いた。

王族は国民のステータスカードを管理し、ヤバいと思われるユニークスキルを誰が持っているのか管理すると共にユニークスキルのデータを収集しているらしい。

「お前が死ねば、次の錬金術師が現れるかもしれないってことか」

「そうね。まあ、私が死ぬ時はあなたも他の人も死んでるかいい歳でしょ。気にしなくていいわ」

子供世代が考えてくれ。

「この話をギルドが知れば、いずれフロンティアのようにステータスカードを管理する時代が来るかもな」

「というか、すべきよ。問題は死体が残らないってやつだけど」

「だな。私だってそれは気になる。私も冒険者時代に冒険者の死を見たことがあるからな」

やっぱりあるのか……

まあ、Aランクだしな。

「どうする? ギルドに報告する? 錬金術のことは言わなくてもユニークスキルについてはそろそろ認知が必要じゃない?」

「お前は引退するからそれでいいかもしれんが、ヨシノやナナポンのことがある」

「ナナカさんも辞めるって言ってるわよ」

「辞めさせない。冒険に行かなくてもいいが、籍だけは残しておく必要がある」

やっぱりそうなるのか。

「私というか、沖田君は?」

「カエデに断固反対された。錬金術で物を作るのはいいが、冒険に行かすのはNGだそうだ」

心配性だなー。

「愛かねー?」

「お前はその内、他のAランクにも噛みつきそうで怖いそうだ」

愛、かねー……?

「まあ、そうするわ。どっちみち、年齢的にきつくなりそうだし」

「そうだな。私もお前くらいで引退した。まだ余裕はあったし、続けられたとは思うが、そうやって引き際を間違えた先人が多いからな」

アラサーって微妙な年齢だもんな。

肉体的にも精神的にもまだ大丈夫だが、下り始める歳であることは間違いない。

「それ、ヨシノさんにも言ったら?」

「あいつは大丈夫。ここ1、2年は難易度の高い第一線のエリアには行ってないし、本部長の仕事や後輩の指導がメインだ」

よく知ってるね。

なんだかんだで従妹が気になって、調べてたな。

「じゃあ、いいわ。あと、あまりナナカさんをイジメないでね」

「せんわ。あいつ、すぐに逃げるか、お前に泣きつきそうだし」

わからんでもない。

ナナポンって楽な道にいこうとする人間だもん。