軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第198話 黄金の魔女 ★

魔女に乗っ取られた記者会見は質疑の時間になった。

『多い…………じゃあ、右から順番に』

魔女は一斉に手を挙げた記者達を見渡し、嫌そうな顔をすると、右端の記者を指名した。

『先ほど、魔法を使われたようですが、魔法の使用は厳禁なことをご存じですか?』

最初の質問がそれか?

『魔法なんか使ってませんよ。何を言っているのです』

『しかし、あの記者はしゃべることが…………』

『私が黙れと言い、素直にそれに従った。それだけですよ…………ね?』

魔女は先ほど黙らせた記者を笑いながら見る。

『ヒッ! そ、そうです!』

ダメだ。

完全にビビっている。

『そ、そうですか……』

『そうです。では、次の方』

魔女は隣の記者を指名した。

『あなたは何者でしょうか? 本当に日本人ですか? 噂によると、戸籍がないそうですが』

戸籍がない?

「進藤先生ですかね?」

「だろうな。あの人はペラペラとまあ…………」

しゃべりすぎ。

『何者と言われてもね…………エレノア・オーシャンです。日本人です。戸籍もあります』

魔女は堂々と嘘をついた。

『本当でしょうか?』

『しつこいわね。というか、私に戸籍がないなら何だって言うの?』

魔女が開き直っている。

『不法滞在では?』

『もし、そうならしかるべきところが処理するでしょう。そうなっていないのならそうじゃないということです』

『政府が手を回しているという情報もあります』

進藤先生はホントに……

『だったら政府に聞きなさい。私に聞くな。きっと総理大臣が答えてくれるでしょう。はい、次』

魔女が次の記者を指名する。

「総理、ご指名だ」

「以前に答えているんですけどね」

彼女は日本国民だ。

嘘だけど。

『えーっと、フロンティアから招待状が来たこと自体は本当なのでしょうか?』

『じゃあ、嘘ということにしておいてください』

適当だな。

『あの、こちらは真面目に聞いているんですけど…………』

記者は少し不快そうだ。

『真面目? どこが? 先ほどプライベートなので答えられないと言ったことを無視するバカのどこが真面目なの?』

『国民が関心を持っている重要なことなのです』

『だから何? 国民が知りたいと思ったのなら全部開示しないといけないの? バカじゃないの?』

魔女が鼻で笑う。

『あなたは魔女と呼ばれており、皆が危険視しているのです』

『だから何よ? 本当にバカね。話すだけ無駄だわ。次に行きましょう。あなたは黙ってなさい』

魔女がそう言うと、記者は何もしゃべれなくなった。

『あの、これは魔法では……?』

次の記者が必死にしゃべろうとしている隣の記者を見ながら聞く。

『違います。きっとプラシーボでしょう』

絶対に違う。

『そ、そうですか……あの、質問です。あなたは魔女ですか? フロンティア側からの回答では魔女の可能性が高いとあります』

『逆に聞きたいわ。魔女って何よ?』

『魔法を使う女性です』

『そんなもん、冒険者にいっぱいいるわよ』

確かに……

『この場合、悪い意味の魔女だと思われます。世界を混乱に落とすとかそういうのです』

『物語とかに出てくる悪い魔女のことね…………違います。というか、知りません。そんなものは私が決めることではありません』

じゃあ、あなたは魔女です。

「お前は魔女だ」

外務大臣も同じことを思ったらしい。

というか、ほとんどの人がそう思っただろう。

魔女はその後も記者達の質問に答えていく。

「しかし、本当に好戦的だなー」

確かに言葉がきつい。

「まあ、このくらいなら許容範囲です。このまま穏便に終わるといいのですが……」

「そうだといいな」

外務大臣はそう思っていないようだ。

私も思っていない。

『質問は以上で締め切りましょう。いつまで経っても終わりませんからね』

魔女が会見を打ち切ろうしている。

当然、記者達からは不満が漏れるが、魔女に睨みつけられ、黙った。

『私の言葉を遮るなと言ったでしょう? ふふっ』

魔女が不敵に笑った。

どうやら記者全員を魔法で黙らせたらしい。

『皆様が静かになりましたので会見はこの辺りにしましょう。では、最後に皆様に発表があります』

発表?

「この為に会見をオッケーしたんだな」

多分、そうだろう。

しかし、何を言う気だ?

『私はこれまで様々なアイテムを売ってきました。回復ポーションにアイテム袋。特にオークションでは世界中の皆様を驚かせてしまいました。私はこれを深く反省し、もうオークションを開催するのはやめた方が良いと判断しました』

この魔女は何を言っているんだ?

「どういうことでしょう?」

「わからん。こいつは何がしたい?」

この魔女が今更、そんな殊勝なことを言うわけがない。

『ですので、次のオークションを最後にします』

最後?

「おい、こいつ、何を売る気だ!?」

外務大臣が動揺している。

気持ちは痛いほどにわかる。

絶対にヤバいものを売る気だ。

『ただ、これはギルドの許可を得られるかは微妙です。ですので、ギルドを通さない個人のオークションも検討しています。その辺は今後、ギルドと話し合い、詰めていきます』

ギルドの許可を得られない?

「おい、この中継を止めれんか?」

「無理ですね……」

もう止められない。

『それと、これは売るというよりレンタルになります』

レンタル?

どういうことだ?

『私が今回、オークションに出す商品は…………土地です』

土地?

……ま、まさか!

「こいつを止めろ!」

「大臣、もう無理です……」

エレノア・オーシャンは本当に魔女だったのだ。

『エレノア・オーシャン……黄金の魔女の最後のオークションはフロンティアにあるエメラルダス山脈の100年間の使用権です』

この魔女、フロンティアのエリアを売りつける気だ……

『この土地で何をしても構いません。金やレアメタルを採掘しても良し、モンスターを倒し、ドロップアイテムを得ても良し。自由です。ここにその権利書があります』

魔女は読めない文字が書かれた紙を取り出した。

『読めませんね……まあ、これにはエメラルダス山脈の権利が私にあると書かれた契約書みたいなものです。ここにちゃーんと、フロンティアの王であるシャルルさんの名前もあります』

確定だ。

「総理、シャルルとは?」

外務大臣が聞いてくる。

「正真正銘、フロンティアの王の名前です。これは本物です」

各国の代表しか知らない名前だ。

それを知っているということは本物で間違いない。

「クソが! この魔女、何をしやがった!? 何故、そんなことができる!?」

魔女は招待されて、すでにフロンティアに渡ったのだ。

そこであれを手に入れたんだろう。

『これを信じて入札するも自由。信じなくてオークションに参加しないのも自由です。あー、そうそう。落札した場合はゲートから行けるようにしますのでご安心を……あと、そうですねー……可哀想なのでゲートを閉じられてしまった国々も参加できるようにします。その時はゲートを設置しましょう』

何を言っている?

この魔女は一体、何を言っているんだ。

「おい、とんでもないことを言ってるぞ」

「わかってます」

魔女はフロンティアのエリアを国に売りつける気でいるんだ。

一番高値を出した国に……

『詳細はオークションが決まったら説明します。では、今日はこの辺で。個人でもいいし、国でもいいです。皆様の参加をお待ちしております。ふふふ、ごきげんよう……』

魔女はそう言うと、一瞬にして消えてしまった。

「き、消えた……」

「魔女の魔法だろう。魔女のあとをつけた連中もそう証言しているし、間違いない。それよりも総理、どうするんだ? とんでもないことになったぞ」

「わかってます。閣僚を呼んでください」

予算が足りるだろうか……

「ああ……」

「急いでください。各国が参加し、争いになるのは必至です」

アメリカ、中国、ロシア…………

それにゲートを閉じられた国々は何としても落札しようとするだろう。

勝てるか?

魔女め……!

あれは世界を混乱に落とす本物の魔女で間違いない。