軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第498話 突然変異

とりあえず分かったことは、この世界には突然変異の作物が存在する可能性が高いということ。

そして、世間的に認知されているものではないということも分かった。

地球でも突然変異の作物はあっただろうけど、さすがにここまでの変化はなかったと思う。

魔力が関係しているのかは分からないけど、面白い匂いがプンプンとする。

「そのクラックドラフってどうなったんですか?」

「あまり覚えていないが、普通に売られたという記憶だ。普通のクラックドラフよりは高値で売られていたようだが、それでも大した額ではなかったはず」

「そうなんですね。今、王都の市場を探せば、変わった野菜が売っている可能性はありますかね?」

「可能性は低いとは思うぞ。俺が聞いたことがあるのは、そのクラックドラフだけだったからな」

となると、突然変異が生まれる可能性自体が低いのか。

異世界転移してきてから、もう結構な年月が経つけど、変わった作物は今回のアイスアックが初めてだったしね。

何か条件のようなものが分かれば、様々な作物を突然変異させてみたいと思ったんだけど……条件を探るのも難しそう。

トマトやナスといった地球の野菜も突然変異させられたなら、面白いと思ったんだけどなぁ。

「そうなんですか。それなら、今回のアイスアックについて調べた方が原因を探れそうですね」

「そのアイスアックはここで採れたものなのか?」

「はい。まだ詳しい話は聞けていないのですが、ここで採れたものみたいです」

「なるほど。よければだが、そのアイスアックを俺に譲ってくれないか? 調べたら何か分かるかもしれない」

「もちろんノーマンさんにお譲りしますよ。私も原因を突き止めたいので」

私が持っているよりも、ノーマンさんに渡した方がいい。

ということで、冷たいアイスアックはノーマンさんに調べてもらうことにした。

「ありがとう。ちなみに、佐藤さんはなんで原因を知りたいんだ? 単純な好奇心か?」

「はい、好奇心ですね。皆さんは異世界のものを面白いと言ってくれますが、私はこちらの世界のものの方が面白いんです。それに、変異した原因を突き止めることができれば、様々な作物を変異させられると思いませんか?」

「……なるほど。冷たいアイスアックを量産することではなく、いろんな作物を変異させたいってことか。やはり佐藤さんの発想は面白いな」

私の発想に共感してくれたのか、ノーマンさんは楽しそうに笑っている。

食への探求心は日本人由来のものだと思っているけど、ノーマンさんにも近しい気質があって非常に助かる。

「はい。そういうことですので、少しずつ解明していきましょう。この世界の作物が爆発的に美味しくなる可能性もありますし、異世界の作物がさらなる進化を遂げるかもしれません」

「まだ想像もできない食材に触れられると思うと、ワクワクが止まらんな。改めて、佐藤さんについてきて良かったと思っているよ」

「こちらこそ、ノーマンさんが来てくれて心から感謝しています」

私とノーマンさんは握手を行い、改めて感謝の気持ちを伝え合った。

それから、私はすぐに『サトゥーイン』を離れ、ゴブリン部隊のもとへと向かう。

詳しい話を聞いてみたいし、もし土地に由来しているのであれば、忘れてしまう前に収穫した場所を聞いておきたいからね。

早足で畑へと戻ってきた私は、ゴブリン部隊のリーダー役でもあるシレイのところにやってきた。

「シレイ、アイスアックについて聞きに来ました。少しお時間をもらってもいいですか?」

「もちろんです。詳しいわけではないんですが、何でも聞いてください」

初めて出会ったときは会話ができなかったシレイが、今では流暢に喋ることができている。

ライムの進化も凄まじいけど、ゴブリンたちの進化も負けず劣らずのもの。

ちゃんと会話ができるのはシレイとヴィレジャーだけだけど、他のゴブリンたちもカタコトなら喋れるようになっているからね。

……と、今はゴブリン部隊の進化速度ではなく、アイスアックについて尋ねないといけない。

私はシレイに冷たいアイスアックについて、知っている限り教えてもらった。

話を聞いて分かったことは二つ。

一つ目は、冷たいアイスアックが採取できたのは一つだけということ。

二つ目は、これまでも同じ場所に植えていたが、今回のみ変異したということ。

正直、何も分からないということだけが分かっただけであり、一切の進展がなかった。

魔力オーロラが見えたとか、銀雨が降ったとかの話も出たけど、原因に繋がる情報は分からずじまい。

色々な人に聞けば聞くほど知りたくなってきたけど、これ以上調べると仕事にも影響が出てしまうからね。

ノーマンさんと話したように、突然変異の作物については少しずつ解明していくとして、今は気持ちを切り替えて秋の作物の準備に戻るとしようかな。