軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第497話 変な作物

娯楽には興味がないと言っていたハラリエルさんたちだったが、Switchの魅力には勝てなかったようで、結局深夜まで娯楽室にこもっていた。

娯楽室には必然的に人が集まることもあり、自然と他のみんなと仲良くしていたのは良かったと思う。

早めに部屋に戻るのであれば、今日から働いてもらおうとも思っていたんだけど、昨日は遅かったし、部屋の片付けも全く終わっていないはず。

ということで、当初の予定通り、三人には明日から働いてもらうことに決めた。

明日からは指導に回らなくてはいけないだろうし、今日のうちにやれることをやっておこう。

まずは秋に向けての準備。

育てる作物を減らしていき、秋に育てる作物を考える。

とはいっても、お決まりの作物ではあるため、分かりやすいように分類しておくだけだけど。

地球の作物に詳しくないとできない作業かつ、NPを使う仕事でもあるため、この仕分け作業は私専属の仕事となっている。

私がせっせとNPを消費しつつ、秋に向けて育てる作物の種や苗を購入していると、ヘレナがやってきた。

「マスター、少しよろしいでしょうか?」

「大丈夫ですよ。どうかしましたか?」

「ゴブリン部隊から預かっていたのですが、マスターに見てほしいのです」

そう言ってヘレナが見せてきたのは、アイスアックだった。

何を見てほしくて持ってきたのか分からなかったけど、私はそのアイスアックに触れた瞬間、その意味を理解した。

「――冷たい! えっ? このアイスアックは冷やしていたのですか?」

「冷やしていません。常温で管理していたのですが、この冷たさなんです。マスターなら何か知っているかと思って、ゴブリン部隊から預かってきました」

本当に常温で保管していたのか疑ってしまうほど冷たい。

そもそもアイスアックはミント系の作物で、食べるとスースーするものではあるけど、実自体が冷たくなることはこれまで一度もなかった。

突然変異なのか、それとも何か魔法関連の出来事なのか……。

色々と考えてみたけど、残念ながら私にはさっぱり分からない。

「すみません。全く心当たりがありませんね」

「マスターでも分からないのですか……。このまま放置するのがいいのでしょうか?」

「分からなければそうするしかないと思いますが、とりあえず私の方で色々な方に聞いてみます。何か分かるかもしれませんので」

「分かりました。それではよろしくお願いします」

私はヘレナから冷たいアイスアックを受け取り、早速聞いて回ることにした。

食材ということもあるし、まずはノーマンさんに尋ねるべきだろう。

種や苗の購入を一度止め、冷たいアイスアックを持って、私は『サトゥーイン』へ向かった。

氷のように冷たく、持つのも大変だったが、服を上手く使って『サトゥーイン』までやってきた。

「あれ? また佐藤さんが来た! 今日はどうかしたの?」

「こんにちは、ソアラさん。ノーマンさんに用があって来たんですが、厨房にいますかね?」

「うん! 今はまかないを作ってくれてると思う!」

「ありがとうございます。厨房に行かせてもらいますね」

ソアラさんにお礼を伝えてから、私は厨房へと急ぐ。

厨房には料理人の方々が勢ぞろいしており、美味しそうな匂いが漂う中で調理を行っていた。

「お、佐藤さんじゃないか? わざわざどうしたんだ?」

「ノーマンさん、後でお時間をもらえませんか? 少し尋ねたいことがありまして……」

「尋ねたいこと? それなら今聞くぞ。まかないを作っているだけだし、俺の手は別に必要ないからな」

「大師匠。後は俺らに任せて、師匠の話を聞いてやってくれ」

「ああ、後はよろしく頼んだ」

ジョーさんがそう言ったことで、すぐに話を聞いてもらえることになった。

ありがたい限りなんだけど、邪魔をしてしまったみたいで、少しだけ申し訳ない気持ちになる。

「それで、俺に聞きたいことってなんだ?」

「この作物についてなんです。私にはさっぱり分からなくて、ノーマンさんなら知っているのではと思いまして……」

「ん? アイスアックじゃなくて、別の作物なのか?」

「いえ。アイスアックではあるんですが、ちょっと変わっているんですよ」

口で説明するよりも、実際に触ってもらった方が話は早いため、私は冷たいアイスアックをノーマンさんに渡した。

何がなんだか分からないといった様子のノーマンさんだったけど、触れた瞬間に理解した様子。

「異様に冷たいな。凍らせていたわけではないよな?」

「はい。素の状態がこの冷たさみたいなんです。急に冷たくなるという現象に心当たりはないですか?」

「悪いが、冷たいアイスアックなんて聞いたことがな……あっ! 冷たいアイスアックは聞いたことがないが、変色・変形したクラックドラフが市場に出回ったという噂を聞いたことがある。当時はただの腐ったクラックドラフだと思っていたが、もしかしたら関係があるかもしれない」

ノーマンさんが語ってくれたのは、変色・変形したクラックドラフについての情報。

私も冷たいアイスアックがなければ、ただ腐っているだけではと思っていただろうけど……なんとなく関連があるように思えてきた。