軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第494話 エルフと天使

部屋の中も気に入ってくれたみたいで、ナハスさんは早速荷解きをしながら、自分好みの部屋へとレイアウトし始めた。

本当はナハスさんも一緒に、ハラリエルさんとヴァルステラさんの家へ行こうと思っていたんだけど、家から出る気がなさそうだったため、ここからは三人で『サトゥーイン』近くの家へと向かう。

「急に山道になりましたね。自然豊かでいいとは思いますが、この先に家なんて建っているんですか?」

「もちろんです。この道の途中に『サトゥーイン』という宿がありまして、その近くに家が複数棟建っています」

「この先に宿があるんですか。宿泊客が来るのか心配になりますね」

「普通は来ないと思う。村も、畑以外は何もなかったからな」

「今は何もないですが、イベントを多く行っているので宿も大盛況なんですよ。村の特産品もいくつかありますしね」

そう説明したんだけど、ハラリエルさんもヴァルステラさんも信じていない様子。

わざわざ来ないと思うのが当たり前なんだろうけど、全く信じてもらえないのは少し悲しい。

「噂をすれば、見えてきましたよ。あそこがこの村唯一の宿になります」

「おお。意外にも立派な宿だな」

「本当ですね。この場所にはもったいないくらいの……いえ、失礼しました」

ほぼ言い終えた後に、言葉を呑んだハラリエルさん。

あそこまで発言してしまったら、言葉を呑み込んだ意味を全く成していないと思うけど……気を使ってくれたことに感謝しよう。

「ちょっと覗いていきますか?」

「ん? 別に見たくはな――」

「せっかくなので見させてください。内装が気になりますので」

断ろうとしたヴァルステラさんを一発どついてから、『サトゥーイン』を見たいと言ってくれた。

ハラリエルさん的には気を使ってくれたのかもしれないけど、本当は見たくないというオーラがひしひしと伝わってくる。

とはいえ、ハラリエルさんにはここで働いてもらうわけだし、紹介をしておいたほうがいいだろう。

「こちらが入口ですね。お客さんがいますので、くれぐれも失礼なことだけはしないでください」

「本当に客がいるのか?」

「ええ。先ほどの言葉に嘘偽りはなく、結構賑わっているんですよ」

まだ疑い気味の二人だったけど、『サトゥーイン』の中に入るなり、見えたお客さんの数に口を開けて驚いている。

従業員も大人数配備しているし、外が裏山だと忘れてしまうくらい、内装は一流の宿だと思う。

「ほ、本当にお客さんが多いですね」

「従業員の数も多いな。それに……エルフが働いているのか?」

「天使族の方々もエルフはご存じなんですね。まぁエルフではなくダークエルフなんですが、移住して働いてくれているんですよ」

「佐藤さんは龍族だけでなく、エルフ族とも交流があるのですね。やはりヴェレスを従えているだけあり、ただ者ではありません」

「来るものを拒んでいないだけです。エルフ族以外にも、魔物やドワーフ族、獣人族や巨人族、リザードマン族も引っ越してくる予定ですね」

多種多様な種族が住んでいることに驚いた表情をしている二人。

そんなこんなで入口で話していると、私のことを見つけたソアラとルナが駆け寄ってきた。

「あっ、佐藤さんだ! 隣の人はだれ? 見たことないかも!」

「なんか変。羽が生えてる」

「ほんとだ! 羽だけじゃなくて、頭にも変なのがついてる!」

笑顔で私に近づいてきた二人だけど、私よりもハラリエルさんとヴァルステラさんに興味を持ったようで、周りを回りながら興味深そうに凝視している。

天使の二人はエルフ族を知っていたけど、ダークエルフの二人は天使を知らないようだ。

「こちらの二人は新しく越してきた方です。軽く自己紹介をお願いします」

「……天使族のハラリエルです。よろしくお願いします」

「同じく天使族のヴァルステラだ」

「えー! 天使なんだー!? 確かに似てるかも!」

「あれ? ソアラさんは天使を知っているんですか?」

「ゲームに出てくる。私のお気に入りキャラ」

「そうそう! この世界にもいたのは初めて知った!」

あー、なるほど。確かにスマブラのキャラに天使がいた。

ファンタジーのキャラを知ってから、この世界で本物に出会うという、私と同じ出会い方をしたから、こんなにも興奮していたのか。

「気に入ってくれたなら良かったです。ハラリエルさんは『サトゥーイン』で働いてもらう予定ですので、ソアラさんとルナさんは仲良くしてあげてください」

「えっ? 私はここで働くのですか?」

「文字が読めて、計算ができる人材は貴重ですからね。ヴァルステラさんとナハスさんは畑で働いてもらう予定です」

「畑っていうと、さっきのところか。確かに遠い」

少し不満そうにしているけど、希望したのはヴァルステラさんだからなぁ。

果樹園でもいいんだけど、既に人手は足りている。

『サトゥーイン』に宿泊してくれるお客さんの半数ぐらいが、果樹園での食べ放題を利用してくれるため、収穫作業が少なく済んでいる。

もう少し果樹園を大きくするなら、ヴァルステラさんにも果樹園で働いてもらってもいいんだけど……今のところはその予定がない。

「えー! 一人だけなんだー!」

「一人でも十分。天使の生態が分かる」

「くれぐれも変に扱わないでくださいね。ハラリエルさんも何かあったら言ってください」

ルーチアさんがいれば問題ないとは思うけど、ソアラさんとルナさんの行動には気を付けないといけない。

まぁ馴染めないということはなさそうなのは、一安心できる点かな。