軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第492話 移住の提案

ナハスさんとヴァルステラさんは、まだ理解が追いついていないようで、ぽかんとした表情のまま。

ハラリエルさんが二人に耳打ちをしたことで、ようやく理解した様子。

「――おい、ふざけんな! なんで俺が人間の村で暮らさないといけねぇんだよ!」

「俺も絶対に嫌だぞ。たとえラファエルさんの命令だとしても」

「拒否権はありませんよ。いただき物を勝手に全て食べた件。この件を私が上に報告すれば、問答無用で命令が下されるでしょうからね。さすがに堕ちたくはありませんよね?」

「……ぐっ!」

ここで、勝手にお菓子を食べた件を引き合いに出したラファエルさん。

初対面ではおっとりした美人というイメージだったけど、相当な切れ者で、めちゃくちゃ怖いということが分かった。

私としても、嫌々住んでもらいたくはないんだけど、どうあがいても流れが変わることはなさそう。

余計な口出しをして、ラファエルさんから反感を買いたくないため、黙ることに決めた。

「これは私の温情でもあります。ここで引き受ければ、勝手に全て食べたうえに黙っていたことを見逃してあげます。ただ、拒否するのであれば、上に勝手に食べた件を報告したうえで命令が下されます。どちらがいいのかは言うまでもありませんよね?」

「くっそぉ……! ずりぃぞ!」

「ずるいのはあなたたち三人です。黙っていなければ、拒否権はあったわけですから」

もはや反論のしようもないようで、三人は諦めた様子を見せている。

悪いのはハラリエルさんたちとはいえ、ラファエルさんは本当に恐ろしい方だ。

「ということですので、佐藤さん。この三人をこのまま連れて帰り、村に住まわせてあげてくれませんか?」

「えっ? このままですか? 荷物も必要ですし、さすがに一度帰った方がいいのではないでしょうか?」

「いいえ、いりません。ハラリエル、大丈夫ですよね?」

「……はい、問題ありません。佐藤さん、よろしくお願いします」

「できれば、前向きな方に来てほしかったのですが……決まってしまったことですもんね」

「ええ。そもそも、天使族に前向きに人間の村に住みたいと思う者はいません。この三人ならば、まだ利点を見出せますからね」

利点と聞いても、ピンと来ていない様子の三人。

私も、勝手に食べたことをなかったことにできるという意味かと思っていたけど、ラファエルさんが口にしたのは、もっとシンプルな利点だった。

「佐藤さんの村で暮らせば、異世界の料理を食べることができるのですよね?」

「――そ、それは本当か!? あんなに美味しい料理が毎日食えるなら、確かに短期間なら暮らしてもいいかもしれない!」

「毎日は難しいですが、数日に一回は振る舞えると思います」

「数日に一回でも嬉しすぎますね。……ヴェレスの気持ちが分かってしまうのが歯がゆいですが」

「その代わり、暮らすとなったら働いてもらいます」

「もちろんです。客として扱うつもりはありません。佐藤さんの部下として、三人をこき使ってください」

ラファエルさんはそう言うと、楽しそうに笑った。

さすがにこき使うことはしないけど、最低限の仕事はやってもらいたい。

何はともあれ、異世界の食事のお陰で乗り気になってくれたのはよかった。

ずっと嫌々だったら、一緒に過ごしていても楽しくないからね。

「話し合いは無事に終わったようだな。なら、お開きとしても大丈夫か?」

「はい。クリカラさん、ありがとうございました」

「これぐらい礼には及ばん。美味いスイーツもいただいたしな」

クリカラさんに改めてお礼を伝え、話し合いは終了となった。

私たちは翌日に帰ることになり、ラファエルさんのみ先に天使界に戻るらしい。

「話し合いの場を設けていただいただけでなく、友好的に進めていただき、ありがとうございました」

「私はまだ何もしていませんよ。これから天使界に戻り、皆を説得するのが大仕事ですから」

「一番大変な仕事が待っているんですね。ご迷惑をおかけしてすみません」

「まぁ、任せてください。必ず説得いたしますので。ハラリエル、ヴァルステラ、ナハスをよろしくお願いします」

ラファエルさんはそう言うと、翼を広げて大空へと飛び去っていった。

終始、怖い印象を持っていたけど……私にとっては良い方向に進んでいると捉えていいんだよね?

色々と勘繰りたくなる気持ちはあるけど、本音を隠すようなことはしていなかったから、そうだと信じたい。

ひとまず私にできることは、ハラリエルさん、ヴァルステラさん、ナハスさんに村の素晴らしさと、ヴェレスさんに危険がないということを伝えること。

まぁ、特に意識せずとも、普通に過ごしているだけで伝わるとは思うけどね。