軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第491話 和やかな空気

お茶会も終わり、全員が満足そうな表情を浮かべている。

先ほどまでのピリついた雰囲気はなく、和やかなムードになったのはありがたい限り。

「それでは、先ほどの話の続きをしたいのですが、大丈夫でしょうか?」

「……ん? ああ、そういえば話し合いがメインだったな。再開して構わんぞ」

誰よりも満足そうな表情を浮かべているクリカラさんは、私の言葉に適当な返事をすると、再び上の空となった。

おそらくだけど、先ほど食べたパンケーキのことを、いまだに考えているのだと思う。

「食べていただいたので、ご理解いただけたと思いますが、私がナハスさんたちにプレゼントしたのは先ほどのようなお菓子です」

「これほど美味しいものであれば、ハラリエルが全て食べてしまったのも頷けます」

「うっ……。私が全て食べたわけでは――」

「それと、ヴェレスが佐藤さんに従っている理由もよく分かりました。私も先ほどのスイーツを餌にされたら、何でもしてしまいそうなので」

文字通りの意味なのだろうけど、ラファエルさんは舌なめずりをしながら発言したため、なんというか、いかがわしい言葉に聞こえてしまう。

変な想像をしないように無心になりつつ、言葉の続きを聞く。

「気に入ってもらえたなら良かったです。ヴェレスに関しても、私がいる限りは安全だと思っていただければ嬉しいのですが……」

「まあ、そうですね。スイーツを食べているときの表情や、佐藤さんへの態度を見ている限りでは、何か問題を起こすとは思えません。とはいえ、ヴェレスが危険因子であることに変わりはありません。それで、一つお聞きしたいのですが……佐藤さんは一体何者なのでしょうか?」

うーん、何者と聞かれると返答に困る。

隠すことではないし、無難に異世界人であることを伝えるのが一番だろうか。

「何者と聞かれると、普通のおじさんと答えたいところなんですが、唯一普通ではない点は、私が異世界からやってきた人間だということです。先ほど振る舞ったスイーツはパンケーキといいまして、異世界の料理なんですよ」

「なるほど……! 噂には聞いたことがありましたが、佐藤さんが異世界人だったとは思いませんでした。見たことも食べたこともない美味な料理が出てきたのも、異世界人なのであれば納得です」

「まあ、異世界から来たということ以外は、一般人と比べても何もできませんが」

「そんなことありません。佐藤様は、人間の中でも最上位に位置する人物です」

「そうなのじゃ! 佐藤は凄いのじゃ!」

私の言葉を即座に否定してきたヴェレスさんと、そんなヴェレスさんの言葉に便乗したヤトさん。

嬉しいけど、本当に異世界人であること以外は並み以下。

「いやいや。能力も子供以下ですし、周りの方々に恵まれているだけです」

「周りに恵まれるというだけでも、立派な才能だと思いますよ。それに、料理の才だけでも誇れる能力だと思いますからね。レシピを知っていたとしても、私には到底作れるとは思えません。一つ気になったのですが……食材は何を使用しているのですか?」

「食材は異世界のものを使っています。私のスキルと関係しているのですが、異世界のものを手に入れることができるんですよ。それなりの対価を支払わないといけませんが」

【異世界農業】のスキルについて簡単に説明をしたのだが、その説明を聞いた瞬間、ラファエルさんはなんとも言えない表情を見せた。

これまでとは違い、どこか企みを含むようなその表情に、少し引っかかりを覚えた。

「ラファエルさん。確かに、先ほどの料理やお菓子は素晴らしかったですが、相手はヴェレスです。ここで態度を軟化させるような姿勢を見せたら、他の天使たちに――」

「ハラリエル、少し黙っていろ。――佐藤さん、申し訳ありません。ヴェレスは危険ですが、それ以上に佐藤さんと友好関係を築く方がメリットが大きいと私は思いました。私が天使族の説得に当たりますので、今後は関係を築いてもらえませんか?」

ハラリエルさんへの注意の仕方も相まって、ラファエルさんが凄く怖い。

これまでの人たちとは違い、純粋に私の料理に感動したからといった感じではなく、メリットを感じて動いているのがひしひしと伝わってくる。

ラファエルさんは長いこと生きているから、食べ物に釣られないというだけなのかもしれないけど……ヴェレスさんは釣られているからなぁ。

ともかく、交渉できるだけよしと思ったほうがいいか。

「もちろんです。天使族の皆さんとは関係を築いていきたいと思っていましたので、これから仲良くさせていただけたら嬉しいです」

「そう言ってもらえて安心しました。それでは、早速の提案なのですが……佐藤さんの村に天使を何名か住まわせてもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」

いきなり交渉を始めてきたラファエルさん。

素直に受け取るなら、友好関係を築くためにということだろうけど、十中八九、見張り役だろう。

とはいえ、私の村には既に多種多様な種族の方が住んでいるし、怪しい動きを取っているわけでもないから、天使族の方が来ても問題ないんだけどね。

「もちろん大丈夫です。いつでも来てください」

「いつでもいいのですか? それなら……こちらの三名をこのまま向かわせてもいいですか?」

「――えっ!?」

ラファエルさんに指名されたハラリエルさんは、とんでもない声を上げた。

この反応から見ても、ラファエルさんが独断で決めたことだということが分かる。