作品タイトル不明
第487話 訛り
翌日にはエデルギウス山を離れ、別荘へと戻ってきた。
ヴェレスさんには全てを話し、天使族と話し合いをするということを伝えた。
凄く申し訳なさそうだったけど、ヴェレスさんはもう仲間だからね。
この場所も守りたいし、私にやれることはやるつもりでいる。
そうこうありつつ、クリカラさんからの連絡を待つこと約二日。
思っていたよりも何倍も早く、クリカラさんの使いの方が別荘へやってきた。
「はじめまして。俺はクリカラ様に仕えとうバルザードたい。あんたが佐藤ね?」
黒髪でがっしりとした体格の男性で、ウニのようにツンツンとした髪型が特徴的。
訛りもこの世界では初めて聞く感じで、どこか博多弁を彷彿とさせる。
「はじめまして。私が佐藤です。バルザードさん、よろしくお願いします」
「おう、よろしくな。そいでやけど、話し合いが明後日行われることになったっちゃが、佐藤は来られるとか?」
「もちろん行かせていただきます。それにしても、随分と急な日程ですね」
「倶利伽羅様はそういう人やけんな。予定ば後回しにするのを嫌うとよ。まぁ来られるなら良かったわ。俺が乗せていくけん、例の堕天使も連れてきてくれ」
「分かりました。連れて行ってもいいのは、ヴェレスさんだけですか?」
「俺が乗せられるとは二人までたい。龍人族が乗せていくっち言うんなら、別に何人来ても大丈夫やないか?」
「分かりました。諸々話してきますので、バルザードさんは家の中で待っていてください」
私はバルザードさんを別荘へと案内し、紅茶とクッキーを用意した。
渋い男性ということもあってコーヒーと迷ったものの、紅茶なら甘さも自分で調節できるため、無難に紅茶を選ばせてもらった。
「こちらをどうぞ。このミルクやハチミツを入れると甘くなりますので、お好みで調節してくださいね」
「丁寧にありがとうな。ヤト様が行きたかって言いよった理由は、これなんかね?」
紅茶とクッキーを見ながら首を傾げているバルザードさんを置いて、ひとまずシーラさんの下へ向かうことにした。
確実にシーラさんには話を通しておいた方がいいからね。
「シーラさん、お仕事中のところすみません。先ほどクリカラさんの使いの方がやってきまして、ヴェレスさんと一緒にエデルギウス山へ行ってきます。シーラさんはどうしますか?」
「心配ですし、ついていきたいです! ……と言いたいところですが、さすがに畑を空けすぎていますので、私は残って農作業を行います。ヴェレスさんもいますし、エデルギウス山での話し合いなら、私がいたところで変わりありませんからね」
「私としてはついてきてもらった方が心強いんですが、確かに空けすぎていますよね。シーラさん、いつもすみません」
「いえいえ。良い報告をお待ちしています」
シーラさんには多方面で助けられてばかり。
深々と頭を下げてお礼を伝えてから、すぐにヴェレスさんを呼びに向かった。
前々から事情を伝えていたこともあり、ヴェレスさんは二つ返事で了承してくれ、急いで別荘へと戻った。
バルザードさんをかなり待たせてしまっているため、もしかしたら機嫌を悪くしている可能性もあると思ったんだけど……。
「おお、佐藤さん! 待っとったばい! この紅茶とクッキー、最高にうまかったぞ!」
別荘に戻るなり、とびきりの笑顔で出迎えてくれたバルザードさん。
どうやら紅茶とクッキーのお陰で上機嫌になってくれていたみたい。
「バルザードさん、お待たせしてすみませんでした。お口に合っていたなら良かったです」
「こげん美味かもんを食べさせてもろうたけん、いくらでも待てるばい。それに、そげん遅うはなかったしな。そいで、今回向かうとは二人だけなんか?」
「はい。私と……こちらがヴェレスさんになります」
「はじめまして。ヴェレスと申します」
「……なるほどな。こりゃ天使族も騒ぐはずたい」
ヴェレスさんを見て、その強さを推し量ることができたのか、そう呟いたバルザードさん。
強者だと、一目見るだけで強さが分かるのか。
「私たちはすぐにでも向かうことができますので、よければ乗せていってください」
「分かった。俺も戻れるなら早めの方がいいからな。すぐにエデルギウス山へ帰るとしよう」
「バルザードさん、よろしくお願いします」
「できれば、ヴェレスは乗せたくねぇんだけどな。俺がいなくても来れるだろ?」
「そう意地悪は言わないでください。佐藤様をお守りしなくてはいけませんので」
本気で嫌がっているようだったけど、結局ヴェレスさんも一緒に乗せてもらうことになった。
バルザードさんもドレイクさんやアシュロスさんと同じく龍人族のようだけど、龍化した状態が一番ドラゴンに近い。
クリカラさんに重宝されているだけあって飛行能力も高いようで、ドレイクさんよりも速く、そしてヤトさんよりも安定した飛行を見せてくれている。
非常に快適な空の旅を満喫しつつ、私は数日ぶりのエデルギウス山へやってきたのだった。