軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第456話 好印象

持ってきた漫画を手に取り、無言の時間が続く。

読み始めたときは、2人ともワーキャー言いながら見ていたんだけど、今は完全に無言で集中しきっている。

漫画に熱中してくれている証拠でもあるため、私にとっては非常に嬉しい時間。

そして、約30分が経過したところで、2人とも漫画を読み終えたようだ。

「何この本っ!? 凄く面白かった!」

「読むって感じじゃなくて、見るって感じだったわね。正直、軽く眺めるだけにしようと思ってたけど、全部読んでしまったわ」

「私も! 気づいたら全部読んじゃってた! というか、続きが読みたいくらいだもん!」

「続きは私も読みたい。……あったりするの?」

期待するような目で見てくるエクレールさんとセオドラさん。

期待に応えてあげたいところだけど、2巻はまだ完成していないどころか、最低でも半年はかかってしまうと思う。

「すみません。まだ1巻しか作れていないですね。続刊を出せるかも売上次第にはなりますし、私も続きを作成したいので、こうしてプロモーションをお願いすることにしたんです」

「そ、それはそうよね。売れなければ、続きを作ることなんてできないものね。……この続きを読むためにも、全力で宣伝させてもらうから」

「私も! 続きを読むためにもなって、お金も手に入るって凄すぎるお仕事だもん!」

「確かにこうなってくると、お金をもらうのが申し訳なくなってくるわね」

「申し訳ないなんて思わなくて大丈夫ですよ。乗り気になってくれたことは、私にとっても嬉しい限りなので」

エクレールさんとセオドラさんが、漫画を好きになってくれたのは嬉しい。

良いものであると思ってはいたけど、普段本を読まない層が評価してくれるかは分からなかったから、私としても大きな自信になった。

身を入れてくれそうなのもありがたく、全力でプロモーションしてくれると思う。

まさにWin-Winな関係。

「最初は変な仕事って思ってたけど、こうして直接佐藤さんとお話をした限りだと、凄く考えられた仕事だよね! 今回の宣伝に関しては、違法なものどころか素晴らしいものだし!」

「でも、私たちの宣伝にお金を払うまでの価値があるかは未だに謎だけどね。確かに他の冒険者と比べたら人気はあると思うけど、だからといってこの漫画を買ってくれるかは別だし」

「手に取ってもらうことが重要ではなく、認知してもらうことが大きいんです。それに読んでくださったから分かると思いますが、認知してもらえれば売れる自信はありますので」

そう。知ってもらえれば売れる自信がある。

大ヒットに至るかは未知ではあるけど、まずは知ってもらうことが最優先だからね。

「凄い自信ね。まぁ、この内容の本なら自信を持つのが普通か」

「全部が絵だったもんね! 内容も面白かったし、絶対に売れると思う!」

「私もそう信じています。ですので、エクレールさんとセオドラさんのお力もお貸しいただけたら幸いです」

私は深々と頭を下げながら、2人にお願いをした。

「もちろん! 私とエクレールだけじゃなくて、みんなにも全力で宣伝させるから!」

「ええ、お金をいただく以上は全力でやるわ。お互いに頑張りましょう」

2人と握手を交わし、これで契約が完了。

こちらからの指定は、漫画の表紙を身につけてもらうことと、『ニールマート』で売られていることを周知してもらうことだけ。

後の動きに関しては、【超越する愛】の皆さんにお任せしているため、どう動いてくれるかも楽しみ。

手応え抜群だったこともあり、私はホクホク顔で【ドランクバンク】との集合場所へと向かった。

予定の時刻通りに、指定された集合場所に到着。

街の外れの場所だけど、かなり大きな建物。

庭のような場所もあるし、一体どんな建物なんだろうか。

私は首をひねりながらも、入口に設置されているベルを鳴らした。

すると、間を置かずに建物から誰かが飛び出してきた。

「わーい! ギラードが帰って――え? おじさんは誰っ!?」

私を見るなり、不審者を見るような目を向けてきたのは、5、6歳の幼い獣人の男の子。

耳の形や毛の感じからして、恐らく犬獣人の子供だと思う。

「私は佐藤と言います。決して怪しい人物ではなく、ここに呼ばれて来たんですよ」

「……本当? ここには滅多にお客さんなんて来ないよ?」

「本当です。私は怪しくありませんよ」

「……怪しくないって言ってるところが怪しい」

終始疑われており、弁明すらも疑われている八方塞がりの状態。

私があたふたと犬獣人の男の子に弁明をしていると、建物からさらに誰かが出てきた。

背の高さからして大人であり、私はホッと胸をなで下ろす。

「こらっ! ジョシュ! 勝手に出るなって言ってるだろ!」

「あー、レイチェル! 怪しい人が訪ねてきたんだ!」

「怪しくない! 私たちのお客さんだっての!」

ジョシュと呼ばれた犬獣人の少年は、コツンと頭を小突かれた。

レイチェルさんと呼ばれた兎獣人っぽい女性は、私のことを知っているようだし、【ドランクバンク】のメンバーだと思う。

建物の大きさ、生活感のある場所、ジョシュ君の存在。

恐らくだけど、この建物は獣人族を受け入れている場所なのだろう。