軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第457話 リーダー

私はレイチェルさんに自己紹介を行い、レイチェルさんからも自己紹介をしてもらった。

やはりレイチェルさんは【ドランクバンク】のメンバーの1人のようで、ジョシュ君はここで暮らしている子供らしい。

孤児ではないみたいだけど、お父さんもお母さんも獣人族の国にいるようで、親元を離れているとのこと。

ここに住んでいる他の子も似たような境遇らしく、何となくワケアリな感じがしている。

「——と、玄関前で長話は変だよね。佐藤さん、中に入ってちょうだい」

「ありがとうございます。お邪魔させてもらいますね」

「ちゃんと靴を脱ぐんだぞ! 汚れたら、俺が掃除するんだから!」

この世界にしては珍しく、玄関で靴を脱がなくてはいけないようだ。

日本では当たり前だったし、こちらの世界に来てからは自室と娯楽室以外は靴を履いての生活だったけど、靴を脱ぐ方が馴染みがあるからありがたい。

「佐藤さん、こっちに来て。依頼をこなしていて留守なのも多いけど、リーダーはいるからさ」

「アランさんはかっけぇんだぜ! めっちゃ強いしな!」

「へー、そうなんですね。ジョシュ君はそのアランさんに憧れているんですか?」

「もちろん! 15歳になったら、絶対に【ドランクバンク】に入って、アランさんのように活躍するんだ!」

どうやらリーダーのアランさんは慕われているよう。

ジョシュ君も、レイチェルさんのことは呼び捨てだったのに、アランさんには敬称をつけているからね。

そのアランさんがいるみたいだし、私は楽しみにしながらレイチェルさんの後についていくと、広いリビングのような場所へと通された。

そこでは子供たちがおやつを食べており、一人の強面の狼人族の男性が優しそうな眼差しを子供たちに向けていた。

多分だけど、この方がアランさんだと思う。

ジョシュ君のアランさんに向けている目が、羨望の眼差しって感じだしね。

「アラン、宣伝の依頼者が来てくれたよ」

「俺が見つけたんだ! アランさん、偉い?」

「見つけたっておかしい! ベルが鳴ったのにジョシュが出ただけじゃん! というか、『見つけた』は佐藤さんに失礼だから!」

「まあまあ、そう怒ってやるな。ジョシュも誰よりも早く、お客さんを迎え入れてあげようと思っただけだよな」

「うん!」

「よーし、偉かったな」

アランさんに頭をポンポンと撫でられ、嬉しそうにしているジョシュ君。

微笑ましい光景だからいいんだけど、私を迎え入れようって感じではなかったよなぁ。

何なら敵視されていたぐらいだしね。

「アランは甘やかしすぎ。ジョシュがワガママになっているのは、アランのせいだからね」

「んー? ジョシュは全然いい子だけどね。……と、それよりも、お客さんの前で変な言い争いを見せてしまったよ。僕はアランと言いまして、一応【ドランクバンク】のリーダーをしています」

「私は佐藤と言います。今回は依頼を引き受けていただき、ありがとうございました」

優しい笑顔で手を差し出してくれたアランさんと握手を交わす。

強面だけど、優しさが滲み出ているアランさん。

この方は信用できると、まだ出会ったばかりだけど私は確信した。

「それじゃ、ここだと落ち着いて話ができないから、僕の部屋で話そうか。みんなのことはレイチェルが見ていてくれるかい?」

「えー、私も一緒に話が聞きたかった……けど、仕方がないかぁ」

「レイチェル、よろしく頼むよ」

嘆いているレイチェルさんの肩をポンと叩いてから、移動を始めたアランさん。

私にはできないさりげないボディータッチに感心しつつ、アランさんの後をついていく。

建物の2階へと上がり、一番奥にあった小さな部屋。

この部屋がアランさんの部屋らしく、私はその部屋へと通された。

「いやぁ、色々と騒がしくて申し訳ないね。そこの椅子にかけてほしい」

「全然大丈夫ですよ。私は子どもが好きですので」

「そう言ってくれるとありがたいよ。佐藤さんは紅茶でも大丈夫かい?」

「はい。何でも大丈夫です」

アランさんはそう言うと、魔法で水を沸かして紅茶を淹れてくれた。

まぁ紅茶と言っても、この世界の紅茶は味の薄い、緑臭さのある緑茶のような味。

「それでは早速だけど、依頼についての説明をしてもらっても大丈夫かな? 引き受けたはいいものの、あまり理解できていないんだ」

「もちろんです。分かりやすく説明させていただきますね」

【超越する愛】の2人に行ったような説明を、私はアランさんにも行った。

サンプル用の漫画を渡してからの説明だったこともあり、アランさんも今回の依頼内容についてはすぐに理解をしてくれた。

「なるほど。本当に本の宣伝をしてもらいたいってことなんだね」

「はい、そうです。漫画のプロモーションを行っていただきたいのですが、依頼は引き受けていただけますか?」

「もちろんさ。てっきり怪しいことをお願いされるんじゃないかと思っていたけど、健全な仕事ならやらせてもらうよ」

【超越する愛】の方々と同じように、二つ返事で了承してくれ、私はホッと胸を撫で下ろす。

エクレールさんとセオドラさんほど、漫画にハマっている様子はなかったため、断られたらどうしようかと思っていた。

「他のメンバーには僕から声をかけておくよ。それで、報酬は1ヶ月の宣伝で金貨3枚でいいのかい?」

「はい。1人につき3枚ではないのですが、大丈夫でしょうか?」

「もちろんさ。安全かつ、大した労力もなく金貨3枚をもらえるだけで嬉しいからね。見ての通り、ここには多くの子どもたちが暮らしているから、お金はいくらあっても足らないんだよ」

だからこそ、私の怪しい依頼にも二つ返事で承知してくれたのかもしれない。

私から依頼内容を聞いて、ホッとしていた印象の方が強かったもんなぁ。