軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

55.屋敷

ゲリオット街の地下にある【地下迷宮】で魔物の大群を殲滅した俺たちは、返り血で真っ赤になっていた。

アルトとレインはしょんぼりとした顔つきで、隣に居たザッシュは顔面蒼白だった。

「アルト、ちょっと疲れたね。アルトが居てくれなかったら途中で帰ってたよ」

「俺の方こそ助かったよ、レイン」

「コイツらと一緒に居たら、俺の命が何個あっても足りねえ……」

そんな俺たちのことを、屋敷のメイドが見つける。

「ぎゃぁぁぁっ! お化けぇぇぇっ!」

そう叫んで、メイドが走り去っていく。

俺たちはお互いの顔を見合わせる。

(……あっ、返り血で真っ赤だ)

「……お化けだってさ。可哀想だね、ザッシュ」

「お前もそのうちの一人だよ!」

「アハハ……お風呂に入りましょうか」

レインが目を輝かせ、両手を万歳する。

「アルトの? やったー」

「うん。ザッシュさんも嫌じゃなければ、どうですか?」

「……なんだ? 特別なお風呂ってか?」

「はい。疲労回復効果もあるお風呂なんですよ」

「はぁ? そんな万能な風呂がある訳ねえだろ……」

「まぁまぁ、ぜひ入ってみてください」

ザッシュが疑心暗鬼になりながらも、付いて来る。

ザッシュさんも頑張ったんだから、ちゃんと疲れは取らないとね。

それに、返り血で魔物臭い身体でウルクやレアに会えない。

あの魔物の大群で知ったこともゆっくり喋りたいし。

俺たちは別々にお風呂を済ませた。

風呂上りに3人で横並びに屋敷を歩いていると、ザッシュは開口一番叫ぶ。

「はぁ~! スッキリしたなぁ~! 疲れまで吹き飛んじまったぜ~! 万能風呂だなこりゃ!」

それに便乗するように、隣を歩くレインが言う。

「だから言ったでしょ。アルトが凄いんだって」

レインも満足げに髪の毛を揺らしていた。

アルトがザッシュへ軽く微笑んだ。

「気に入ってもらえたなら、嬉しいです」

少しだけ俺のことを眺めて、ザッシュが言う。

「正直疑ってたぜ。ようこんなアイデアが思いつくもんだ」

そう褒められると、少し恥ずかしい。

ザッシュは歩きながら、呟くように言う。

「……アルト、悪かったな。急に襲ったりして……いつもだったらちゃんと確認してたんだが、苛立っていたんだ」

「いえ、気にしてませんから。 猛毒花(ラトルス) の針だって、実は解毒薬を持ってるんですよね?」

ザッシュは目を丸くして、乾いた笑い声をあげる。

「なんだよ、気付いてたのか。そうだよ、あんな危険なもの、解毒薬も持たずに持ち歩くはずねえだろ」

猛毒花(ラトルス) は確かに人を殺す毒で、最も毒の回りが早く相手の動きを止めることができる。

当ててしまえば最強の脅しになる。

「あれは脅しだ。俺は武器商人だが、人殺しはしねえ」

「……なるほど」

確かに合理的ではある。

武器商人なんて命懸けの商売だ。それくらいやって当然だろう。

「平和に暮らしてえなぁ……田舎町の一軒家でも買って、農業とかやるのも楽しそうだ」

「やらないんですか?」

「ハハハ! お前さん、苦労してないだろ。働くってのはそんな簡単じゃないんだぜ? 天才様よ」

「多少なら、その気持ちは分かります」

ザッシュが不思議そうな顔で俺を見る。

「アルト! 帰って来たのか!」

廊下の向こう側からウルクが走ってくる。

何やら汗を掻いていて、焦っているようだ。

「ウルク? そんなに焦ってどうしたの?」

「どうしたも何もない! メイドたちが血塗れの人を見たと騒いでいたぞ!」

「ごめん、それ俺たちだ。魔物の返り血が酷かったから、お風呂を先に済ませたんだ」

「なんだ……そうだったのか。てっきりアルトが大怪我を負ったのかと不安に思ったんだぞ!」

「ちゃんと報告すれば良かったね……心配かけてごめん」

「良いんだ……怪我がなかったのなら、私は構わない」

アルトが軽く微笑む。

ウルクも安堵した表情をする。

そんな様子を、ザッシュがポカーンと口を開いて見ていた。

ザッシュが思う。

(な、なんだコイツら……デキてるのか?)

ザッシュがレインに小声で耳打ちする。

「なぁ……コイツら恋人同士か?」

「ううん、違うよ。二人とも、ただの『恋愛ポンコツ』だよ」

「あぁ……なるほどな……」

妙に納得したザッシュが声を掛ける。

「おい、イチャイチャしている暇ねえだろ」

「イチャっ……! 誰もイチャイチャなどしていない! なんだお前は……どこから入ってきた」

レインが横から紹介してくれる。

「ザッシュだよ。【地下迷宮】で出会ってアルトに、 猛毒花(ラトルス) の針で攻撃したよ」

レインが隠すことなく、真実を告げてしまう。

ウルクが声を張り上げる。

「なっ! 猛毒花(ラトルス) だと!? お前、アルトを殺そうとしたのか!?」

ザッシュが後頭部を掻きながら言う。

「……反省してるよ。もうしない」

「ウルク、本人もこう言ってることだしさ」

ウルクが俺のことを見ながら、ため息を漏らした。

「アルト、お前は優しすぎるぞ。ちょっとは怒れ」

「全員怪我なく帰って来れたから、俺はそれだけで十分だよ」

「……まったく」

「それより……」と俺は言葉を進めた。

「【地下迷宮】で見つけたことがある。ウルク、みんなを集めてくれ」

俺の真剣な顔つきに、ウルクが首を縦に振った。