軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-26

荒野にバイクを走らせる俺の後ろにはリオレスが立っていた。

座るという選択肢はないのか、と疑問に思わなくもないが、不測の事態を考えるのであれば恐らくこれが正解だろう。

今回俺たちが立ち向かう相手は長射程と高火力の馬鹿でかいレーザー兵器を持つ機械型。

八つの脚部を持ち、高層ビルのような高さを誇るこの中型はその高度から大出力のレーザーを撃ち下ろす。

大型の主砲とそん色のない攻撃力と射程を持つ相手が12体である。

しかも攻撃手段がレーザーなので見てからの回避はほぼ不可能。

巨大な目玉のような球体型の砲台から発射されるレーザーが正確無比なら諸手を挙げて降参しているところだが、その出力故か制御が甘く、命中精度はかなり低い。

但し、味方を巻き込んで薙ぎ払うような攻撃もしてくるので油断は禁物とデータにあった。

唯一の救いはこの巨大なレーザー砲台は一体につき一つしかなく、連続射撃はできない点だ。

常に最大出力で撃つ設定なのか、凡そ八分に一度の発射が限界であり、80発も撃てばエネルギー切れで自壊するらしい。

誰がそれを試すと言うのか?

昔のゲーム攻略本にある「間違ってもそんな攻略はしねぇよ」と言いたくなるネタ情報を思い出す。

しかしこの情報があるということはその状況を作った人物がいる、という証拠でもある。

現存している英霊かどうかは定かではないが、やはり生前「英雄」と呼ばれるだけの実力や功績があるような者は、とんでもない能力を持っているのだと改めて思った。

バイクを走らせていると見えてくるのは球体のレーザー砲台。

その高さ故にこの距離でも見えてしまう。

そして見えている、ということは当然向こうからも視認できるわけである。

こちらは当然射程外。

バイザーに出力されている距離情報から、まだ向こうも射程外のはずである。

とは言え、この速度で近づいているのだから時間の問題だ。

「そろそろ敵の射程に入る」

俺の言葉にリオレスは「わかった」とだけ言ってバイクから飛び降りた。

今回俺たちがやることは至って単純。

最も回避能力が高く、速度を出せる俺が最初に突っ込みレーザーを撃たせる。

そこに第二陣としてリオレスが突撃し、レーザー砲台のターゲットを分散させる。

残ったデイデアラは後方で待機となる。

デイデアラが後方にいる理由はただ一つ、俺たちが前進を続ける中型の排除に手間取り、レーザー砲台の狙いが防御陣地へと向かないようにするための囮役、である。

ケイの防御陣地は高い攻撃力に対しては非常に脆い。

万が一にも撃たれるわけにはいかない。

それ故に、その場に留まり続けることができるデコイは必要なのだ。

とは言え、俺が全部破壊できればその限りではないが、確実に「できる」と言えないのが戦場である。

敵の攻撃手段を考えるとその場から大きく移動できないのは厳しいだろうが、俺が「できないならリオレスに任せる」と言ったところ、デイデアラはあっさりとこの役目を承諾してくれた。

リオレスがバイクから飛び降りて一分もしないうちに一番距離が近いレーザー砲台が光りだした。

見た目でわかるエネルギー充填中のヤバさ。

案の定出現した警告ラインがびっくりするほど太い。

ハンドル切って真っ赤に染まる領域から離れるが、照準を修正しているのか警告ラインがこちらに寄ってきている。

できるだけ前進しつつも離れようとしたのだが、別の警告ラインが俺を飲み込んだ。

十字砲火とまではいかないまでも、角度があるため逃げ先は前にしかない。

更なる加速をしたところで真正面に見えたレーザー砲台が光り始める。

「ふざけんな!」という声はレーザーの着弾にかき消され、巨大な光は地面を溶かしながら俺の斜め後ろを通り過ぎた。

新たな逃げ先が生まれたのでそちらに向かって全速前進。

二発目のレーザーを避けたところで四発目と五発目の予約が入る。

順番を守れば良いというものではない。

三発目を際どい回避でやり過ごせたものの、その余波は俺の想像以上であり、バイクのバリアが大きく消耗。

バイクのエネルギーがごりっと削れたが、乗り換えができる状況ではないのは明らかであり、六発目の警告ラインが俺を飲み込む。

さらに視界にはまだレーザーを撃っていない中型の姿があり、七発目と八発目が飛んでくる方向が明らかとなる。

これ以上はバイクでの回避は不可能と判断。

未だ小型の姿は見えず、こちらの射程にはまだ遠い。

今考えるべきは次の三射の回避手段。

前も後ろも横もダメ。

ならば取るべき手段はただ一つ。

俺はバイクを蹴って飛び上がるとビークルを解除する。

ジェットパックに換装して上空に向かって急加速。

接近を一旦諦め、まずはレーザーを回避することに専念するも警告ラインは再び俺を飲み込んだ。

レーザー砲台はゆっくりとだが動く。

これだけ距離が離れているならば、僅かな動作でも着弾地点は大きく変わる。

下から上へと掬い上げるようなレーザーが俺の真横を通過した。

APの全損によりジェットパックが強制解除され、直後にバイクを出した俺はそれを蹴って真横に飛ぶ。

続くレーザーにバイクが飲まれて爆発し、その爆風をわざと受けることで下方向への加速を得る。

最後の一発は上から下へと振り下ろすような軌道となったが、落下する俺を捕まえることなく空へと消え去る。

「自由落下は最強の回避!」と全く違うジャンルのゲームの戦術を披露しつつ、掠めただけでジェットパックを破壊するレーザーの威力に戦慄する。

着地の衝撃を和らげるためにジェットパックを経由してバイクで着地。

これで半分のレーザーをやり過ごせたわけだが、残り六体の中型の位置が見事に散らばっていた。

こっちはあともう少しで射程内。

後方にいるリオレスも真っすぐに距離を詰めており、俺の選択肢は前進あるのみとなる。

バイクを加速させると七発目と八発目の警告ラインが俺を捉えて交差する。

九発目の発射位置がわかっているが、距離までは正確に見ることができていない。

しかしここはさらに加速して前に出ることを選択。

十発目以降の距離も気になるが、リスクを取らねば最大のリターンは望めない。

後ろを通り過ぎた二本のレーザーに合わせて位置を調整し、俺を飲み込む警告ラインから逃れる。

距離を詰めたことで地上からでも残りの砲台位置を確認できたのだが……立て続けに警告ラインが発生したことで俺は方向転換を余儀なくされる。

大きく左へと進行方向を変え砲台の照準を誘導。

最後のレーザー砲台が俺を捕捉し、四つの警告ラインが重なった。

次の瞬間、放たれたレーザーがバイクを追い越し、その余波がガリガリとエネルギーを削っていく中、右へ曲がってデペスの群れに向かって走り出す。

残り三発。

十射目のレーザーが俺の真横を通り過ぎる。

タイミングが僅かにずれた所為でバイクを解除できずに破壊されてしまうが、ジェットパックでの緊急回避は間に合った。

残り二発。

慣性を維持したまま高度を上げるがレーザー砲台はそれを許さない。

照準精度が悪さをしたか?

それともただただ乱数の悪戯か?

上から下へと叩き付けるようなレーザー照射が俺を襲う。

咄嗟に出した地雷を爆発させ、俺は地面に叩きつけられたかのような衝撃を受けつつ高度を下げる。

ジェットパックのブースターだけでは間に合わないという判断だったが、それでも余波からは逃げられず、地雷の自爆と合わせてAPが二度目の全損を迎え地面に着地する。

残り一発。

高ランクのジェットパックを二つも壊され、最後の一発が俺に向かって放たれようとしている。

警告ラインのど真ん中では慣性を失った今、緊急回避の手段はない。

ならば選択肢はただ一つ。

バトルアーマーへの換装――同時に放たれるレーザーが展開したシールドに着弾した。

凄まじい勢いで減るエネルギーが瞬く間にシールドの維持を放棄させる。

ブーストダッシュでレーザーの直撃から逃れようとするも、途中でブースターが焼かれたのか背中で爆発が起こった。

だが、その衝撃は都合が良い。

どうにか体勢を維持し、押し出されるように地上を滑り、回転しながらレーザー照射から抜け出すことに成功した。

余波によるダメージでバトルアーマーのAPが全損。

強制解除となるが、俺は次のバトルアーマーを装着する。

これで全ての砲台はレーザーを発射した。

次の発射までは最速でも三分と三十秒。

ならば小型の射程に入らない今こそが使い時である。

選択するは「流星」の名を冠する長距離射撃砲。

出現した兵装がバトルアーマーへと接続される。

「ここなら届く」

少なくとも三分間は撃ち放題だ。

展開される砲台を見ながら、初の実戦投入にワクワクが止まらない。

さあ、ロマン砲のお披露目だ。

照準を定めようと思ったが、砲台の展開がまだ終わっていない。

「早くしてくれよ」と焦れる心を抑えながら、ただただ黙ってその時を待つ。

補助アームが砲弾を装填し、発射準備が完了すると同時に俺は引き金を引く。

その砲弾は狙い通りに最初に俺を撃った中型のレーザー砲台に直撃する。

激しい爆発が起こり、その煙が風で去った後に見えたのは崩壊したレーザー砲台。

中型の撃破には至らなくとも、あの砲台を破壊できたのであれば作戦は成功である。

壊れない可能性もあったので保険が必要だったが……それはたった今杞憂に終わった。

レーザー砲台さえ潰してしまえば、あの中型などただのデカブツ。

残る砲台の数は11――止められるものなら止めてみろ。