軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-25

「確かに『向こうが先』とは言ってなかったけど、勘違いさせる方向に誘導したのはよくないわね」

アネストレイヤが詰め寄るとケイが居心地悪そうに視線を逸らし、こちらを見て助けを求めているが当然俺はこれを拒否。

首を横に振ると「そんな馬鹿な」とでも言いたげな表情で驚愕していた。

相当チョロいと思われていたのかもしれないが、そのポジションは魔女一人で十分である。

ともあれ、事情が変わったのでデイデアラを探すことにしよう。

状況を把握した今ならば、あのおっさんが暴走する前に止めることも不可能ではない。

ケイに関しては彼女らに任せ、俺はデイデアラが行きそうな場所を探すことにする。

こういう時に通話できれば楽なのだが、予想通りと言うべきか、あのおっさんは端末を持ち歩いてすらいない。

通話できるかどうか以前の問題である。

ちなみにリオレスも持ち歩いておらず、マリケスはたまに忘れるくらいには所持しており、意外なことに最も使用頻度が高いのがクドニクだった。

「これがあったらな」と声を漏らしていたことから、生前にこのような通信技術があったらよかったのにと思っていたのだろう。

そういった観点からも、クドニクは使えそうなものは積極的に使っており、彼のグループの者たちも使う努力をしているらしく、既にアプリを使って情報共有も試みているとのことである。

最近はジョニーとも連絡先を交換し、エデンの内部情報にも手を伸ばしており、大規模作戦の修正内容や大まかな予定もクドニクは知っていた。

なお、ジョニーは連日連夜のリサイクル作業でだいぶやつれているらしい。

デバイスを用いた長距離録画然り、彼はエデンの救世主になり得るのではないか?

そんなジョニーの連絡先も俺は持っているが、今から使用する相手はクドニクである。

先ほどあったことを伝え、状況を正確に伝えることで無駄な衝突を未然に防ぐ。

問題があったとすれば、デイデアラを見つけたのがマリケスで、こいつが今日は端末を持ち歩いておらず、俺が二人を発見した時には既に衝突済みだったことである。

「ああ、無常」という言葉が頭の中で静かに響く。

お互いまだ手を出していないようだが、言い争いは続けば熱を帯びるものである。

二人の間に割って入り、両手でそれぞれを押し戻す。

「スコール1、こいつを止めるのを手伝ってくれ」

「おう、お前もそっち側か、スコール1?」

二人が同時にこちらを見る。

まずは状況説明。

この件、元々の原因はケイにも存在しており、デイデアラを一方的に責めるのはフェアではないこと、また女性陣にも言い聞かせてもらい、二人の争いを終わらせるために協力してもらっていることも話す。

するとマリケスはバツが悪そうな顔をして、デイデアラは勝ち誇ったかのように踏ん反り返っている。

「ほら見ろぉ、俺様悪くねーんだよ」

「いや、お前に問題がないとは言っていない」

おっさんのドヤ顔がイラっと来たので即座に否定。

というより「お前が問題を起こしすぎるからこうなったのだ」と俺たちが問題の収拾に当たった理由を教える。

「そんな大したことはしてねぇだろ……」

これまでならばそうだったのだが、居住区に入ろうとしたのはまずかった。

この件をエデンが非常に問題視しており、第八期全体の評価を落としかねないとクドニクが危惧し、俺はそれに同意する形で動いていることも伝える。

するとデイデアラは不満そうな顔を見せるも、居住区の重要性が想定をはるかに超えるものであると理解し、一応納得したという意思を示す。

「あの一件がなければクドニクも止めようとは思わなかっただろう。かつての配下がここにいたことが嬉しいのはわかるが、いい加減少しは落ち着け」

俺の言葉に「は? ベルの奴がいたこととか関係ないし?」と過剰な反応を見せるデイデアラ。

ベルクシオが言うには今のデイデアラは「生前のあの頃に戻ったようではしゃいでいる状態」である。

そこを突けば、と思ったが予想以上に反応してみせた。

これにはマリケスもにんまりと笑っている。

騒ぎを大きくするならベルクシオに言いつけるぞ、という手札を前に「ぐぬぬ」と歯噛みするデイデアラ。

本心では迷惑をかけてもOKなのだが、表向きそうではないとする姿にはどこか男子小学生を彷彿とさせるものがある。

ともあれ、俺はこの件を解決するためにこの場にいるのだ。

今回の件を辿ると無断で制作された俺の動画が根元にある。

それに続く人気投票という目立ちたがり屋には最高のイベントが発生。

やる気の空回りか、それともただの考えなしの行動かはこの際置いておくとして、この部分こそが問題の解決に繋がると俺は思っている。

結果が振るわない可能性は高い。

ただ、本人を納得させるには良い方法がある。

「これを見ろ」

俺は手にした端末の画面を見せる。

そこ映るのはケイのフォトカード。

続いてデイデアラのカードを見比べさせ、自分には何が足りないのかを誤認させる。

酷い言い方かもしれないが、足りていないのはアピールだけではないのだ。

そんな訳で自分のやるべきことの方向性が定まったデイデアラが早速行動に移る。

俺はアリスへの手配を担当する体でこの場を立ち去り、映像のための模擬戦をマリケスに押し付けることに成功。

マリケスとの模擬戦で良い絵が撮れることを期待しているのだろうが、それを商品のラインナップに追加するだけのポイントをデイデアラは確保しているのだろうか?

そもそも個人でフォトカードを作るにもポイントが必要となるはずである。

その後、フォトカードを作成するポイントが足りず、マリケスに泣きつくデイデアラの姿が目撃されたが、俺は我関せずを決め込み距離を取ったことで事なきを得た。

デイデアラは提案した俺を見つけることができなかったのだ。

本当に忍者は便利な存在である。

未だ結果は出ていない人気投票ではあるが、現在の順位から大きく変わることはないだろうと予想されており、デイデアラの努力は無駄に終わると見てよい。

ちなみにケイにも「間食禁止」の処分が下ったらしく、女性陣がアリスも巻き込んで目を見張らせており、これがきっかけで「屍の山を築きし殺戮の王VSお散歩要塞」の対戦カードが地下闘技場で組まれたらしい。

慌ただしくも騒がしい日常の風景はこうして終わりを迎える。

騒ぎが落ち着いた、というのも理由の一つだが、もっと簡単にこの件を流す出来事があったからだ。

そう、デペスの襲撃である。

廊下に鳴り響くアラームが駆ける足音をかき消す。

折角のランチタイムを潰された俺は心の中では激おこであり、この苛立ちを敵に思いっきりぶつけるつもりでいた。

作戦室には八期の面々とジェスタが既に状況を説明中。

珍しく遅れた俺をデイデアラが指差し笑うが勿論無視する。

流石に場所が悪かった。

さて、今回の襲撃は機械型がメインと第八期には苦い記憶がある相手。

しかも飛行型ではない地上タイプの中型も含まれており、三方向からの中規模襲撃となっている。

もしも俺とフィオラの戦いで大型と随伴する中型を連れていなかった場合、この群れと同時に襲撃されていたことになっていた可能性が極めて高かったそうだ。

そうなれば歴史上最大規模の襲撃に近い戦力となっていた、とジェスタは深刻な面持ちで語る。

今回の襲撃で注意しなければならないのが、初めて戦う機械型――地上タイプの中型である。

強力な大型レーザー砲台を持つこの中型は攻撃力と射程に優れた難敵であり、最も多くの負傷者を出したデペスの一種である。

その中型12体を俺一人でどうにかしろ、というのは最早作戦でもなんでもないのではないだろうか?

「無理なのか? 機械型の相手は得意かと思ったんだが……」

肩を落とすジェスタだが、無理とは言わないがせめて援護くらいは欲しい。

こちらも好き好んで危険を冒す気はない。

そもそもレーザースライサーも重力砲もまだ回復していないのである。

こういう時こそ最高戦力の出番だろうが、と思ったが……そっちは別方面で虫の相手をするらしい。

そんな訳で小型を引き付ける役割と中型の相手をする組を分ける。

わかり切っていたことだが、中型の相手は俺とリオレスとデイデアラ。

他は大量の小型を処理する役目となった。

これでブリーフィングは終了し、出撃という流れになったのだが、俺はもう少し中型の情報が欲しくてジェスタに色々と質問をする。

恐らくだが、俺がまた煙幕を使うと他に注意すべきレーザーが向く。

かと言って単騎出撃など小型が大量にいるので無理。

何か使えそうなものはないか?

何か有利に事を運ぶための情報はないか?

見落としがないか改めて確認し、勝利を確実なものとするにはこういう細かいことも重要である。

戦術を決めるのに少々時間を費やしてしまったが、最悪出撃は揃わなくともバイクで追いつける。

最後の一人となった俺は作戦室の扉を開け、ゲートに向かおうとしたところで呼び止められた。

「スコール1」

俺を呼ぶその声に反応し、そちらを見ると見知った相手がそこにはいた。

「ジャミトスか……」

彼に声をかけられて俺は思い出す。

そう言えばジャミトスについては色々と考えていた。

結局は話を聞かない、ということにしていたが、気になっていたことには変わりはない。

この状況で一体どんな用があるのか?

気になった俺は一つ頷いてジャミトスに話を促す。

「エデンをあまり信用するな」

言葉の意味はわかるが、その意図を掴めず俺はただ首を傾げて見せる。

もしかしてハブられていることを恨んでいるのか?

「いや、そういう人物ではないな」と頭に浮かんだ考えを否定し、彼の発言の根拠を求めるようにじっとジャミトスを見つめる。

「エデンは我々に重要な情報を教えていない」

言われたところで「そりゃそうだろう」としか言えない。

しかしそうではないらしく、ジャミトスは自らの言葉を否定し言い換える。

「いや、この言い方では語弊があるな。恐らくだが、エデンは極めて重要な情報を忘却……或いは喪失している」

「それはどういう意味か?」と尋ねるべく開いた口が遮られる。

「急いでくれ、スコール1!」

先に行ったジェスタが俺を急かす。

確かに優先すべきは敵の対処である。

間に合うから、で遅れてよい理由になるわけではない。

俺はジャミトスに頷き、続きは帰ってから聞くことにして走り出す。

ジャミトスもまた、俺の後を追うように走り出した。