軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-18

何故この隊長専用機の型番を俺がすぐにわからなかったのか?

答えはゲームでは出てこないからだ。

それどころかこのバイクはプレイヤーが使用することはできない「データ上は存在している」だけのものであり、本来どのようにゲームをプレイしてもこいつが出てくることは決してない。

しかし例外はある。

ゲームデータの改造――所謂チート行為によって使用可能となり、そのデータが公開されたから俺はこの型番に見覚えがあったのだ。

一人のゲームファンとしてはこれをコレクターアイテムとした場合、正に喉から手が出るほど欲しい一品であるのは間違いない。

だがゲーム時代にこれを使用できる唯一の方法がチートだと言うのがダメなのだ。

この葛藤をおわかりいただけるだろうか?

不正に手を染めなければ決して手にすることができないものが目の前にある。

それはゲーム上とても重要なもので、なおかつプレイヤーの心に残るものでもある。

手に入ったのは嬉しいけど喜んでいいものかどうかわからない。

取り敢えず今後使うかどうかはさておき、思い出せる限りこいつについて思い出しておこう。

数値上の性能はTier4か5相当であったと記憶しており、何か特別な機能や能力が存在しているとは聞いていない。

当然この性能には誰もが首を傾げた。

この話の何がヤバイかと言うと「こんな性能のバイクであんな戦いしてたの!?」というスコール1の異常さが際立つ点である。

「公式チート」呼ばわりも納得の出来事だったと俺は当時の騒ぎを記憶している。

せめて「グングニル」が取り付けられている改修型ならば、ラストのムービーシーンでプレイヤーが使用していたため、何の問題なく乗ることもできるし、その性能でも十分に使うことできたのだが……それもないとなれば完全にコレクションとして飾ることしかできない。

(だがこれが出てくる、ということはグングニルもいずれ使えるのか?)

それともグングニルを使う前提としてこのバイクが必要だった可能性もあるのではないか?

エネルギー武器や専用兵装も前提を満たしてから入手していたと思われる。

ならばこれもそうである可能性が高い。

もしかしたら今回でその条件を満たした、ということなのか?

どれだけ考えても結局は何もわからない。

「また何もわかんねぇのかよ」と俺に優しくない世界であることをこっそりと嘆く。

しかも割と強引に実験と言って単独出撃しての成果がこれである。

バスターキャノンで納得してくれるならいいのだが……威力と射程はトップクラスなので一応誤魔化すことは多分できるはずである。

バイクに関してはもうグングニルの前提条件ということにしてしまおう。

午前中は新武器のお披露目。

午後はマリケスとの模擬戦を予定している。

模擬戦と言っても近接戦闘訓練に近い。

あの変態と戦ってわかったが、対人戦闘経験がまだまだ不足している。

それなりに色々なゲームで対人戦をやっていたが、その経験だけでは足りていないのだ。

この体ならばゲームの経験であっても反映できると高を括っていたが、いざ強敵と戦うと反省点や改善点が大量に出てくる。

そんなわけで丁度マリケスが声をかけてきたので応じることにしたのだ。

俺が単独で出撃して出番がなかったので、思い切り体を動かす機会がほしいのかもしれない。

訳ありバイクを入手してしまい、緩みっぱなしの頬を手で戻し、今日もポーカーフェイスで自室を出る。

油断すると頬が緩みそうになるので、今日一日は気をしっかり引き締めていこう。

バスターキャノンこと「ミーティア」の試射を終え、全長3メートル超えの砲身が静かに持ち上がり折りたたまれていく。

こいつのコンセプトをわかりやすく言えば「戦車砲を放つ歩兵」である。

そのためにバトルアーマー着用必須の重量となり、それを動かすだけのエネルギーを必要とする。

故にバトルアーマーのエネルギーをほとんど使用し、過負荷によって駆動部を始めとした至る箇所に損傷を引き起こすのだ。

「見ての通りだ。一度使用するとバトルアーマーは解除するしかない」

動作不良を起こしたバトルアーマーを見せながら、まずはミーティアから解除する。

使用前に組み立て動作がある特殊な兵器なのが原因なのか、解除しようとすると展開した砲台や周辺機器を片づけ始める。

「重量故に動けず、固定砲台となるがそれに見合った威力と射程を兼ね添える」

「なるほど」と頷くローガンが測定器の数値を見て納得している。

実際それだけのリスクを払う価値のある兵器だが、ちゃんと考えて使用しなければ多数からフルボッコにされるだけである。

「ミーティア――流星、という意味だったか? チキュウの兵器は外見に似合わず名前がロマンチックだね」

「そこは製造者に言ってくれ」

ローガンの言葉に苦笑する俺だが、言わんとしていることはわかる。

こちらの武器を見たことがあるが、その名前はどれも型番オンリーである。

通称や略称はあれど、こちらほどバリエーションが豊富ではない。

(型番は型番で味があって好きなんだが……世界が変われば見方もまた違ってくるもんだな)

ようやくミーティアを解除したはいいのだが、思っていた以上に時間がかかりすぎている。

肩に装着したアームが砲弾を詰め込む動きとか好きなのだが……こうもデメリットが明確だと使うことに躊躇しそうだ。

やはり実用よりもロマンが勝る兵器なのかもしれない。

本当に上手い人なら使える状況を作り出せるのだが、流石にそこまで使い込むような兵器ではないので俺には無理だろう。

その後は何だかんだで時間を取られ、昼食前にはどうにか退散することができた。

昼食後はマリケスとの訓練である。

遅刻しないように気を付けよう。

気を付けようと意識していたのに時間ギリギリに地上の闘技場に辿り着く俺。

居合わせた変態が俺が食っているディストピア飯に文句を付けたからだ。

「貴様は飯にこだわりがあると聞いていたのだが?」から始まり、俺がポイントを稼いでいることを知って「貴様が率先して食わねば遠慮する者が現れる。ちゃんとしたものを食え」と言われたが、要するに最高戦力の一人である俺が慎ましい食事をしているのがおかしいようだ。

こればっかりは価値観の違いなので反論するだけ無駄だと無視。

そもそもディストピア飯と俺自身がディスっているが、味気なくともそこまで不味いわけではないのだ。

栄養のバランスも完璧であり、エデンの住人のスタイルが皆一様に良いのはこの食事があってのことだろう。

そんなわけでフィオラと若干揉めた後、模擬戦に遅れるからと突き放したところで「何故余と戦わずに他の者と戦う!?」とかなり鬱陶しい絡まれ方をされた。

お陰でこうして遅刻ギリギリで到着したというわけだ。

「なんというか、災難だな」

「そう思うなら代わってくれるか?」

「そりゃ無理だ」と肩をすくめるマリケス。

ちなみにマリケスはフィオラに一度だけ挑んでおり、その時は完膚なきまでに叩きのめされたそうだ。

文字通り「手も足もでなかった」とのことだが、果たして俺はこいつにそこまで言わせることができるだろうか?

手段を選ばないならば恐らく可能。

だが、今回は手段を選ぶ訓練目的である。

槍を構えるマリケスに対し、俺もブレードを抜いて正眼に構える。

「銃は使わないのか?」

「ああ、近接戦で嫌というほど己の未熟を知った。これ一本で最低限のことはできるようになっておきたい」

俺の言葉に一瞬空気が変わったように思えたが、槍の石突で床を叩いて考える素振りを見せるマリケスが口を開く。

「どうして俺だ?」

その声に乗せられた感情くらいは理解できる。

だが、勿論そのような意図は俺にはない。

ただ純粋にこいつが今の俺が強くなるには適切なのだ。

「勝てない相手だからこそ、訓練相手に相応しい」

俺の言葉をどのように捉えたかまではわからないが、それでも誤解なくやり取りができたことは確かだ。

息を吐き、頭の後ろをかくマリケスが俺を真っすぐに見る。

「だったら、お前も俺の訓練相手になれよ」

マリケスの言葉に俺は「当然だ」と頷く。

そんな感じに始まった対人訓練だが……一戦目は一分と経たずに終了。

敗因はフェイント。

初手から本命が蹴りとは思わず、体勢を崩されてからは挽回の機会を的確に潰され敗北した。

初見殺しに引っかかったようなものだ、と気を取り直して二戦目。

こちらも体術込みに頭を切り替え、結構粘ったが槍と剣のリーチの差を覆すことができず、ブレードを巻き上げられて敗北。

やはり近接戦闘では向こうが圧倒的に有利だ。

あの時のように銃という不確定要素がないならば、こうも技術で圧倒されるのだなと感心する。

そんなわけでウォーミングアップも済んだ三戦目。

ブレードと槍が交差し、互いに位置を変えながら打ち合う最中、ふと思い出したかのようにマリケスが口を開く。

「そう言えば……知っているか?」

「何をだ?」

マリケスの槍を打ち払い、距離を詰めようとしたところを掬い上げるような素早い一撃を前に踏み止まる。

間合いは再び構え直したマリケスの距離。

中々崩せんな、と軽く息を吐いたところで先ほどの答えがやってくる。

「デイデアラの奴、治安維持部隊に捕まったらしい」

「……は?」

思わず間の抜けた声を出した俺の足をマリケスの槍が払った。

いや、何してんだよあのおっさん。