軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

特性獲得ツアー二日目

トールたちがこの廃墟に来てから四日目、蟻の巣の琥珀蟻どもが再び発生した。

雷三兄弟やディアルゴたちを乗せた飛竜艇はダダンの境界街へ飛び立ったので、残った八人で掃討を開始する。

団体だとスキルポイントが減ってしまうので、トールたち四人と"白金の焔"四人がそれぞれ一層と二層に分かれて狩りを始める。

四人とは言え金剛級の面子が遠慮なく狩りをしたので、両層の殲滅は午前中であっさりと終わった。

トールのほうも、ユーリルの氷系魔技で体液を凍らせた琥珀蟻をサクサクと倒してかなりの戦果であった。

地上に戻り昼食の支度をしていると、空の彼方から黒点が凄い速度で近づいてくるのが見える。

ムーとソラが手を振ると上空で旋回してから、飛竜は一気に舞い降りてきた。

昼前の飛竜便で到着したのは若手四人組だった。

いや、現在は五人組である。

「王子様、トール様!」

船から降りるなり、咲き誇る花のような笑顔で駆け寄ってきたのはエックリアだ。

先日、トールが火傷を治療した紅尾族の少女である。

美しい顔に戻ったエックリアだが、さっそく解放神殿の公認娼婦に応募しかけたので、治療の際に技能樹を確認していたトールが引き止めてシサンらに紹介したという経緯があった。

まだ冒険者になって数日のようだが、もう他のメンバーとはよく馴染んでいるようだ。

「リア、いきなり動くと危ないよ。ここはもう瘴地なんだから、気をつけて。トールさん、お待たせしました」

「ご、ごめんなさい」

リーダーらしく厳しい声で注意を促したのは、盾士のシサンだ。

嬉しそうにトールへ近づいてくると、深々と頭を下げて礼を述べる。

「僕らまで呼んでいただき、ありがとうございます。お役に立てることはあまりありませんが、よろしくお願いします」

「仲良くやれているようだな、安心したよ」

「はい、リアは凄いですね。鎧猪が簡単に倒せてびっくりしました」

次いで飛空艇を下りてきたのは、剣士のリッカルと弓士のヒンクだ。

仲良く肩を組んで、よたよたと歩いている。

「うう、ヤバイかも。ゲロでそう……」

「おい、汚ねぇな。吐くなら離れろよ」

五人目は水使いのアレシアだ。

蒼鱗族の少女は下りてくるなり、ラムメルラの前でひざまずいて頭を垂れた。

「はじめまして、ラムメルラ様。施療神殿の末席に身を置くアレシアと申します。まだ階位さえ授かっておらぬ未熟者ですが、よろしければお見知りおきくださいませ」

「えっ、本当にうちの神殿所属なの?」

「はい?」

「いえ、ごめんなさい。こちらの話よ」

ソラの持つ雨晶石付きの杖をチラリと恨めしげに見たラムメルラは、嬉しそうな顔でアレシアの肩に手をおいた。

「トールさんのお知り合いなら、私にとっても大事な友人よ。こちらこそよろしくね」

「ラ、ラムメルラ様……」

「様付けは結構よ。好きに呼んでくれていいわ」

打ち解けあった二人の横で、出す物を出してスッキリしたのかリッカルが騒ぎ出す。

「うわ、もしかしてストラッチア様? なんでこんなとこに!?」

「ふむ、深遠な問いかけだな、少年よ。我の存在意義とは闇を滅すること。すなわち衆生の松明たらんとすることが、我が使命としか言いようがないな。ゆえに我はこの地に降り立ったのだ」

「うわわ、ホントーにそんなしゃべり方するんだ! ほらほら、見てこれ」

瞳をキラキラに輝かせたリッカルは、腰帯から吊るした二本の剣を得意げに指し示す。

「ストラッチア様にあこがれて、オレも二本持ちにしたんだぜ!」

「ほほう、お前も魅了された愚か者か。だが、それも悪くない」

「じゃあ、あと残りの五人もお願いしますね、チタさん」

「はぁーい」

とんぼ返りで飛竜は飛び立ち、三時間後にまた戻ってくる。

今度の乗客は赤毛のお嬢様の一行だ。

「もう、見ないと思ったら、こんなところで遊んでいたのね」

「お久しぶりです、皆様」

荒野帰りのせいかベッティーナのほうは砂よけの布で顔を巻いており、ゴダンは兜の面頬を下ろしたままなので、二人とも表情がハッキリしない。

トールが挨拶をしようとしたその時、いきなり背後から誰かの声が響いた。

「あれ、兄ちゃん、なんでここにいるんですか?」

大声を出して寄ってきたのは、近くに湧いた琥珀蟻をいじめていたクガセであった。

そのままゴダンのそばまで行くと、兜の隙間から中を覗こうと試みる。

対して執事は顔をそらし、わざとらしい咳払いを始めた。

「兄ちゃん、本国じゃ金剛級のはずなのに、なんでまた黒枠の札なんか下げてるんですか? しかもこれ、うちの街のですよ」

「ああ、ええ、その人違いでは?」

「その声と体型はどう見てもゴダン兄ですよ。可愛い妹の目をごまかそうなんて二十年早いですよ」

「えっと、ゴホン、誰かと間違っているようですな、お嬢さん」

無理やりに低い声を出し直したゴダンだが、余計に怪しいだけである。

しばしの沈黙の後、クガセの刺すような眼差しに耐えきれなくなったのか諦めたようにゴダンは兜を脱いだ。

「申し訳ございません、お嬢様。どうやら、わたくしはここまでのようです。やあ、お兄ちゃんだよ。びっくりしたかな?」

「……大丈夫ですか? 兄ちゃん」

「まさか、そっちからバレるなんてね」

苦笑いをしたベッティーナは、顔に巻きつけていた布を取り去りその美貌をあらわにする。

そして何も言わずに騒ぎを見ていたストラッチアとニネッサに、優雅に腰を曲げて挨拶した。

「お久しぶりです、王子、ニネッサ姉さま」