軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

剣虎団

◇【剣虎団――リリ・アダマンティン】◇

ミラ北部に接するヨナトの国境に、ヨナト兵や白狼騎士団が布陣するより前のこと――

剣虎団はショウゴ・オヤマダ、ゼーラ帝と共に北回りでヨナト公国に入った。

先の戦いで剣虎団はヨナトで戦っている。

再び戻ってきた形となる。

剣虎団らが来訪する旨は女神からヨナト側へ伝わっていた。

ゆえにヨナト領内は容易に通過できた。

むしろ先の激戦を共に潜り抜けた剣虎団は、ヨナト側の者たちから歓迎された。

剣虎団らはしばらくヨナトで作戦実行のための準備を整えた。

この間、白狼騎士団が女神の勅命によりヨナト入りした。

その白狼騎士団にはヴィシスの徒が一名同行していた。

ニャンタン・キキーパットである。

ごく短い間ではあったが、剣虎団も彼女とは久しぶりの再会であった。

一応、かつて共に勇者らと魔群帯に入った仲である。

そのニャンタンは、オヤマダの変貌ぶりに珍しく動揺を垣間見せていた。

やがてヨナトは、女神の指示通り、数だけかき集めた兵をミラとの国境線へ送った。

ここに白狼騎士団とニャンタン・キキーパットが同行する形となった。

さて。

剣虎団ら――狂美帝の抹殺部隊である。

ミラの意識が北の国境へ向く中、彼らはこっそりミラ領内へ入った。

魔群帯の端に接する東部に沿って南下。

身を隠すのに適した森へ、足を踏み入れた。

その数時間後。

偵察をしてくると言って一時離脱していたゼーラ帝が戻ってきた。

「ふむ……国境の方へはそれなりのミラの戦力が出向いたようじゃな。ふぉっふぉっふぉっ、さすがは伝統ある北の勇こと白狼騎士団じゃて。その名は今も健在……否、その名はあの頃よりも強者として轟いておるようじゃ。さすがのミラも、放ってはおけぬか」

「んで、帝都の戦力は予定通り誘い出せたわけだけど……アタシたちだけで帝都に潜り込んで狂美帝を殺るのかい? 無茶だね。作戦の内容的に、少数精鋭かつそこそこの数ってことで、今回はアタシを含め剣虎団の選りすぐりを13人連れてきたわけだが……ゼーラ帝とオヤマダを加えても総勢15名。ふん……この人数で帝都に入って狂美帝を抹殺するなんて、馬鹿げた話さ」

「ふぉっふぉっふぉっ。そいつをどうにかするために、少々出てくる」

言って、ゼーラ帝は再び離脱した。

女神からは暫定的にゼーラ帝が指揮を執ると言われている。

つまりこの作戦、全権はゼーラ帝に委ねられている。

そう、女神をあれほど盲信していると見えるオヤマダではなく……。

オヤマダと言えば、こちらも不気味であった。

性格が一変してしまっている。

が、あの姉弟への過剰な激昂ぶりにはオヤマダらしさが垣間見えた。

つまり……教育されたのだろうか?

剣虎団を率いるリリ・アダマンティンが、オヤマダについて思考を巡らせ始めた頃だった。

ゼーラ帝が、戻ってきた。

大量の金眼の魔物を引き連れて。

「くっ!? ゼーラ帝っ……どういうことだよこいつは!? まさかこの金眼どもを、帝都攻略に使おうとでも言うのか!? 馬鹿か! 金眼の魔物に言うこと聞かせられりゃあ、苦労しねーんだっての! ……全員、迎撃態勢!」

リリが指示を出す前に、すでに剣虎団の面々は各自動き出している。

「確かに……大量の金眼の魔物に指示を出し、思うままに操ることができれば有用と……母上もそうおっしゃっていました。しかしそれは、大魔帝でなくては不可能なこと……」

オヤマダはそう言って大剣をゆったり手にし、

「ですがこの作戦、すべてゼーラ殿にお任せするよう母上から言われております。母上の言葉こそ絶対……ゆえに、ゼーラ殿には何か勝算があるのですね?」

「ふぉっふぉっふぉ、そういうことじゃ」

その時、ゼーラ帝の背後に中型の魔物が飛びかかった。

しかしゼーラ帝は素早く反転し、

「ぎ、ア!?」

金眼の顔を掴み、止めた。

魔物の顔面の方がゼーラ帝の手より大きい。

ゆえに、指が痛々しく魔物の顔面に埋没する形になっている。

魔物の動きは――完全に、止まっている。

と、

「――変、転――」

ゼーラ帝がそのひと言を口にした途端。

追放帝の金の瞳が、妖しく発光し出した。

「ぎ、ギ……ぃエえ……? ギゃ――」

ギュルッ、と。

急速に肉がねじれるような、音がして。

次の瞬間。

魔物がまるで、圧縮されたかのように。

人の頭部より、小さくなった。

直後、その肉塊が膨張したかと思うと――

ベタンッ!

人型の”何か”が、地面に膝をついた。

膨張した肉塊が分裂し、計四体の人型を成したのである。

リリは自分に飛びかかってきた小型の魔物を斬り捨てながら、

「なん、だ? 圧縮された魔物の肉塊が、人型に……変化、した……?」

人型の白い生物。

目だけが、ついている。

黒目に――無機質な金眼。

鼻もなければ、口もない。

耳もない。

毛髪や突起物も見当たらない。

大柄。

身長は、この中で最も高いオヤマダよりも高い。

四体の白い生物が、ほぼ同時に立ち上がった。

ジッと。

白き者の金眼が、同色の目を持つゼーラ帝を見下ろす。

「…………」

「ふぉっふぉっふぉ……よしよし、成功のようじゃな。四体は、なかなか期待通り」

「どういうことだ? アタシたちは、これについて何も説明を聞いてないんだが?」

リリの問いに答えることなく、ゼーラ帝が白き者の厚い胸板に手を添える。

「手に負えそうな金眼の魔物を儂が行くまで押さえ込んでおけ。危害を加えてきそうな魔物がいたら叩き伏せてかまわん。できれば……生かしたままが理想だが。とはいえ、自分の生命維持重視で動け――ゆけ」

四体の白き者たちが、ちょうど飛び出してきた魔物たちへ狙いを定めた。

駆け出していき、押さえ込もうとする。

その逆方向では、オヤマダが大剣で迫ってきた魔物を斬り倒している。

ザシュッ!

「ぎィぇエ!」

倒れ伏した魔物を、そのまま踏みつけるオヤマダ。

ガッ!

「ぐェえッ!?」

「さあどうぞ、ゼーラ殿。さあ、遠慮せず」

ふわっ、と。

ゼーラ帝は一足にオヤマダの方へ跳び、着地。

息も絶え絶えの動けぬ魔物に手を添え、

「――変、転――」

ギュルッ!

再現。

魔物が急速に圧縮され、再びねじれた肉の塊となった。

そしてやはり次の瞬間、

ドッ、と。

肉塊が、数体の白き者へと変態した。

ゼーラ帝は新たな白き者たちへ先ほどと同じ指示を出した。

白き者がこちらへ狙いを定めた魔物目がけ、駆け出していく。

「……ちょっとばかり、読めてきたかもしれないねぇ」

言って、付近の魔物を斬り払うリリ。

同時に魔導具の攻撃術式で仲間を援護しつつ、

「金眼の魔物を”材料”に――その不思議な力で、 ア(・) タ(・) シ(・) ら(・) の(・) 兵(・) 隊(・) を生み出そうって腹かい……ッ」

ゼーラ帝は 好々爺然(こうこうやぜん) として笑いを発し、

「 模造聖体(もぞうせいたい) じゃ」

「?」

「こやつらの名称らしい。あの女神がそう名付けたそうじゃ」

「あぁ……母上の完璧かつ美しいネーミングセンス……光る……完璧に、光りすぎている……やはり、母上は神でしかない……」

「こいつは女神が儂に与えた能力でな。ま、女神の力を分け与えてもらっとるようなもんかのぅ。さて、これをする目的は――」

ギュルッ、と。

ゼーラ帝はさらに別の魔物を白き者――模造聖体へ変化させながら、

「お嬢さん、そちが先ほど口にした通りじゃ。目にした情報だけでそこまで察するとは聡い娘よ。感心感心」

ゼーラ帝をひと睨みするリリ。

「この近くに地下遺跡かなんかがあって、アンタ……中にいた魔物をあえて引き連れてきやがったんだな? その模造聖体ってのを生み出す”材料”に、するために……」

「ふぉっふぉっふぉ、ご明察」

ゼーラ帝はミラの帝都ルヴァの方角を見やり、

「さすがに15名ぽっちで動いて近づけるほど、儂の子孫も間抜けではあるまい。聞くに、狂美帝は歴代皇帝の中でも飛び抜けて出色の出来のようじゃ。ふぉっふぉっふぉっ、相まみえるのがまったく楽しみじゃわい……それ、続々と後続が来るぞ。お嬢さんたちは自分の身を守りつつ、できれば息の根を止めずに戦ってみてくれ。なぁに、殺しても文句は言わん。まあ、死体じゃと変転の成功率が格段に下がるし質も下がるそうじゃから……できれば生かしたままの方がよいがな。生きてさえいれば質は変わらんそうじゃ…… 魂力(こんりょく) の関係、とか女神は言っておったがの」

魂力。

勇者を段階的に成長させる力の源、と聞くが……。

「根源なる邪悪の生み出した金眼の魔物を使って、従順な生物兵を生み出すとはね……ったく……」

こんなもんがあるならもっと早く使っとけよ、と。

リリは内心、舌打ちする。

ゼーラ帝は、次々と模造聖体を生み出していった。

ただ、地下遺跡から溢れた魔物の数も相当である。

すべてを模造聖体へ変転、とはいかなかった。

かなりの数の魔物がリリたちの今いる場所と違う方向へ駆け抜け、ミラ領内へと入っていった。

「…………」

今、この辺りはすっかり静かになっている。

もう魔物の気配は近くにない。

あるのは、沈黙したままずらりと整列している聖体軍団のみ。

彼らは言葉を発しない。

ただ、耳がなくとも声は聞こえているらしく言語も解する。

変転させたゼーラ帝の命令にも忠実に従うようだ。

「ふぉっふぉっふぉっ! 逃した魔物どもは魔物どもで……まあ、帝都の者たちの手間を一つ増やす駒になってくれるじゃろ」

オヤマダは感極まった様子で聖体たちを見る。

「聖体たちからは母上の聖なる力を感じます。光栄なことです。母上に会いたい……」

「よしよし、これでけっこうな数を確保できたでな。ただ……」

荷物から地図を取り出したゼーラ帝が、手招き。

リリとオヤマダは近づき、地図を覗き込む。

「見ろ。ミラ領内にはこれだけの地下遺跡が点在しておるのじゃ。で、儂は特殊な”声”を出して金眼を呼び寄せる力を女神から与えられておる。さぁて――」

剣を鞘にしまい込み、両手をこすり合わせるゼーラ帝。

「一度、二手に分かれようかい」

顔を上げるリリとオヤマダ。

ゼーラ帝が続ける。

「この作戦の全容を説明したのち、儂はしばらく単独行動する」

むぅ、とオヤマダ。

「単独行動ですか? それは……母上の指示なのですか?」

「うむ、そうじゃ」

「はい、ならばよし」

ゼーラ帝の視線がリリへ。

「さて、お嬢さん」

「……ああ」

「儂が先ほど生み出した聖体軍はすべて、そちたち剣虎団に与える」

「い――いやいや、待ってくれ。あいつらは生み出したアンタの命令しか聞かないんだろ? アタシらに預けられても……」

「問題ないぞい。儂が”今後は剣虎団の命令に必ず従うこと”と命じれば、今後はお嬢さんたちの命令を聞くようになる」

はんっ、と思わず意地の悪い笑みを浮かべるリリ。

「そりゃまあ、ずいぶんと都合のいい便利さなことで……」

「今回の作戦、お嬢さんら剣虎団の働きもかなり重要じゃからな。気張ってもらうぞい」

「…………」

「おや? 何か気になることがあるようじゃな、お嬢さん?」

「ん、いや……話すようなことでもないさ。気にしないでくれ」

「いやいや、遠慮せず話してみるがよい」

んー、とリリは指先で鼻の頭をかく。

「その、さ……そんな力があるなら、アンタやあの聖体軍を……はなっから対大魔帝の戦力として使っときゃよかったんじゃないか、と思ってね」

「ああ、そいつは無理じゃ」

ふぉっふぉっふぉっ、と長い白ヒゲを撫でるゼーラ帝。

「たとえば儂じゃが、元はこの世界の人間……当然、邪王素の影響を受ければ弱体化してしまう」

「じゃ、あの聖体どもは?」

「ん?」

「元々は邪王素による弱体化を受けない金眼の魔物なわけだし……あれを後方でアンタが生み出しまくって、大魔帝軍の方に延々と送り込めばいい。さっき戦闘中にちらと聞いた話じゃ、飯も睡眠もいらない兵なんだろ?」

「ところがそうもいかんのじゃよ、お嬢さん」

「?」

「言ったじゃろ? 今の儂は”女神の力を分け与えられている”と」

「あ――」

「そうじゃ、お気づきの通り。女神の力が強大なのは事実じゃが、神族の弱点は大魔帝……そう、邪王素じゃ。そして、聖体どもはそんな神族の力を与えられた儂が生み出した存在……どういうことか、わかるじゃろ?」

「力の源である女神と同じ……つまり邪王素による弱体化の影響を受けちまう、ってことか」

合点がいった。

ゼーラ帝は人並み外れた能力を持つが、しかし――

対(・) 大(・) 魔(・) 帝(・) に(・) は(・) 、 使(・) え(・) な(・) い(・) 戦(・) 力(・) 。

だからこうして対ミラへ回されたのだ。

しかし、勇者であるオヤマダは邪王素の影響を受けない。

(いや……この人が違ったような洗脳っぷりだと、他の勇者に会わせるわけにはいかないか。特にあのS級……アヤカ・ソゴウに会わせたら、面倒なことになるのは目に見えてる……)

だから他の勇者とは別の場所へ赴かせ、使うことにした。

当然、人質を取られているリリたちがソゴウに告げ口しないのも織り込み済みで――

(――って、わけだ。大魔帝討伐はオヤマダを除いた勇者たちでやる、ってことかもな……)

その後、ゼーラ帝は作戦の全容についての説明を終えた。

「というわけで」

地図を丸め、しまい込むゼーラ帝。

「作戦開始とゆこうか」

剣虎団は聖体軍を率い、近くの砦を制圧した。

砦にあった武器や防具を聖体軍に与え、武装させる。

撤退を促し、退却する兵たちはそのまま逃がした。

これも作戦通りである。

兵たちを続々と帝都へ向かわせる。

これは、帝都へ向かう途中に存在する都市や町も同じである。

襲撃し、制圧し……脱出、そして避難を許す。

目的は、溢れさせた大量の避難民を帝都へ向かわせること。

作戦の意図を、リリはすでに読んでいた。

「ちっ、えぐいことしやがる――、……いや、やってるのはアタシらか」

ただ、作戦中に一つ想定外のことが起こった。

ショウゴ・オヤマダが、姿を消したのである。

リリは逃げ惑う人々の声を遠くに聞きながら、副団長のフォスに尋ねた。

「いたか?」

「いや、いない」

フォスは褐色肌で、髪を後ろに撫でつけている。

バスターソード使いで、副団長ながら剣虎団の斬り込み隊長でもある。

戦闘で主に先陣を切るのが彼の役割だ。

んんー、と目を閉じるリリ。

額に指をやって、問う。

「最後にオヤマダの姿を見たやつは?」

「ビグだ……北門近くで見たきりらしい。この都市の中でオヤマダの姿を見たやつはいない。襲撃自体、参加してなかったのかもしれないな……悪ぃ、目を離すなとは言ってあったんだが」

「仕方ねーさ。下手に止めようとしてうちの連中に何かあった方が困る。アンタも見ただろ? キレたオヤマダの豹変っぷり……どこに豹変させる要素があるか、わかったもんじゃない」

ふぅ、と。

フォスが腰に手を当て、ため息をついた。

二人の視線は都市をうろつく聖体……火の手、黒くたなびく煙を見ている。

リリもやはり気乗りしない息をつき、気持ちを切り替えつつ尋ねる。

「どう思う?」

「あのオヤマダが逃げたとは、ちっと考えらんねぇな。あれだけ女神のことを信奉してる風だったんだ。何がなんでも作戦は遂行するはずだ。ただ……あいつはそもそもおれたちと必ず行動を共にすると口にしてたわけじゃない。女神もゼーラ帝も、その点は何も言ってなかった」

「オヤマダはオヤマダで独自に動く予定だったってことか……で、まだ近くにいるかもしれないし、いないかもしれないと」

「すまん」

「いいさ。アタシらはアタシらの役割をこなすだけだ」

「団長ぉ、もうこの都市に人は残ってない……と思うわよぉー」

とんがり帽子を被った魔術師風の女――ドロワーが来た。

艶っぽい顔立ち。

身体つきも異性の目を引く凹凸さといえる。

装いの露出の多さは視線誘導のためっ、とは本人談。

彼女に続くのは顔立ちの優しげな青年――ユオン。

ドロワーより背が低く、並ぶと彼女の弟みたいにも見える。

「いやぁ、今回の作戦……うちの団でも過去最大規模の案件かもしれないですねぇ。さすがの僕も緊張してますよ」

「まーでも仕方ないべ! 姉御が決めたことだ!」

ユオンの次に現れたのは短髪の男。

笑顔の似合う快活な空気の彼は――ポジック。

次いで、

「あーもう三人とも待ってくださいよー、早いですってー……むかつくー」

てってってっー、と小走りについてくるのは小柄な眼鏡の女――イゼルナ。

語尾に時々ぼそっと小柄な毒を吐くのは、相変わらず。

「……すまんな、団長。ワシがもう少し、しっかりオヤマダを見とけばよかったんじゃが」

気まずげに登場したのは、先ほど名の出たビグ。

今回の作戦では最年長にあたる。

今の剣虎団にとっては古株の一人だ。

フォスが、ビグの肩を叩いた。

ポンッ

「気にすんなって、ビグさん。あんたがずっと土台として剣虎団をしっかり支えてきたのがあって、今のおれらがあるんだ」

「そーだよ、いつも言ってるだろ」

リリは言った。

「まずは意図した悪意の失敗か、そうじゃないかの見極めが大事だ。で、能力不足が原因なら、次に同じ失敗をしないよう対策を打つ。個人で改善するのか、他の適材と交代するのか、あるいはみんなで手を貸すか。そして反省の言があってその気持ちも伝わったなら、もうそこは誰かを責める段階じゃない。先に進んだ方がいい」

「うふふ、私……やっぱり剣虎団のこういうとこ好きっ」

「ドロワーさん、わたしもこういうとこ助かってますよー……」

「ねぇ?」

「ですねー」

ポジックが腕を組んで、がはははっ、と笑う。

「なぁに! ビグ爺さん、気にするこたぁない! オレ様だって、余裕で失敗続きだからな! なあ姉御!?」

ポカッ!

「ぐごっ!?」

「アンタはもう少し、失敗から学べっての! ポジック!」

「は、はひ……」

和やかな笑いが起こる。

ぐいっ、と兜を目深にするビグ。

「……気を遣わせちまってすまんな、みんな」

剣虎団の中核は、今ここにいる七人と言っていい。

そういえば、とリリは思った。

それなりに前のことだが。

奇しくも――ウルザのミルズ遺跡に潜った面々が、これだった。

「…………」

そんなことを今ふと思い出したのは、なぜだろう。

こんな時でも雰囲気を暗くしまいと笑い合う皆を見ながら、リリは双眸を細めた。

(一人も死なずに……なんてのは、すぎたる願いだな。ま……やることが虐殺じゃなかったのだけは、救いかもしれないね……ただ……)

リリは首に手を添え、ごきっ、と鳴らす。

(叶うなら、やっぱり帰りたいもんだね……みんなで)

やがて他の仲間も合流し――剣虎団は、次の目的地を目指す。

白き軍勢を、引き連れて。