作品タイトル不明
第625話
ミケヲさんの提案でトランシーバー型魔道具は左手首に仕込むことになった。その前に試運転で動作確認をさせてもらうこととなった。
「こちら 三毛皇(みけおう) 、聞こえますか? どうぞ」
「こちらミーシャ、聞こえています。ぶっちゃけ同じ部屋なので聞こえているだけな気もしますがね、どうぞ」
そりゃそうだろ。せめてどちらかが隣の部屋に移動して検証しないとダメだろ。
「では吾輩は『ヤガラ亭』の入り口に移動するよ」
「俺も付いていくぜ、どうぞ」
ミケヲさんとダイモーンさんが入り口に移動する。程なくすると (「ミーシャ聞こえますか、今あなたのトランシーバーに直接語りかけています)」) と言うミケヲさんの声が頭に響いてきた。
なので、「はぁ〜聞こえんなぁ〜」とビーグル 料理(コック) 長の口調で返しておいた。ビーグル 料理(コック) 長は前世の人気漫画『北陶の権威』に出て来るチョイ役キャラだ。納品された食器代の支払いを誤魔化そうとしたり、自身の経営するレストラン、カーサ・アンド・ラーの見習い調理師に対して指導が厳しかったり。見習いが賄い料理にオニギリを出すと怒鳴られる。オニギリの泣く店、カーサ・アンド・ラー。少なくともいい人キャラでない事は確かだ。
その返しが日本語で (「俺の名を言ってみろ」) だったので、やはり日本語で「かわら版タロールって言うんだよ」と答えておいたよ。
(「こちらダイモーン。当軍団の合言葉を頼む、どうぞ」)
続いてダイモーンさんが通信してきた。合言葉って何だよ……。
「燃える、飛ぶ、爆発する。どうぞ」
(「正解だ、どうぞ」)
マジかー!! 半分冗談で返してみたけどあれが正解で良かったの???
「はーい、びっくり大成功〜。これは凄い魔道具だ。凄いだけに人界においそれと普及させられない感じではあるね。やはりこれは紛失防止と隠蔽を兼ねて左手首に埋め込むのが一番だろう」
「そうですね。ちゃんとダイモーンさんとも通信できましたし。本当に凄い魔道具です」
「 宗(・) 派(・) 数を指定すると他の 小羽妖精(ポゥ・リース) 軍団の連中とも会話出来るぜ、どうぞ」
「ところで 宗(・) 派(・) 数と言うのは?」
「各軍団の信念というか信条というか、まぁ何に重きを置くかの違いを俺達は 宗(・) 派(・) と表現している。その登録ナンバーを 宗(・) 派(・) 数と呼んでいる。どうぞ」
鑑定は嘘を付かないとか、事件はクランハウスで起きてるんじゃないとか、冒険者の無念を晴らし必ず 敵(モンスター) を倒すとか、そういう 信条(やつ) ね。
今はまだ他の 小羽妖精(ポゥ・リース) 族とは顔を合わせていないから、妖精界の住人ではダイモーンさんとだけ通信が出来る様にされてたよ。こう言うのって、そのうち絶対増えるんだよなぁ。そのうちというか、そう遠くない未来なんだよね?
「では【 彼岸此岸通信機(トランシーバー) 】を左手首に置いて、魔力を込めながら右手で叩け、どうぞ」
右手で左手首を叩くと パンッ と乾いた音と共に左手首に【 彼岸此岸通信機(トランシーバー) 】が入り込んだ。見た目は魔法陣柄のタトゥーって感じだ。おいおい、板は何処に行った?
「これ、凄いね」
「ちょっとヤンチャな感じがなんとも……」
「ん? 色を消すか? どうぞ」
「吾輩はお願いしたいね」
「ボクもお願いします」
見えなくなる魔法は妖精達にはお手の物……という事で、あっという間にタトゥーの柄は見えなくなった。俺の耳たぶのピアスの隠蔽術みたいなものか。
「あれ…? これって鑑定しても『 小羽妖精(ポゥ・リース) 族との絆』としか出ないんですけど」
「それも人界向けに隠蔽したからな、どうぞ」
「ぶっちゃけ有難いね」
「そうですね。ダイモーンさん、ありがとうございます」
「気にするな、どうぞ」
そしてこの【 彼岸此岸通信機(トランシーバー) 】タトゥーは俺達には見えなくなっただけで、 小羽妖精(ポゥ・リース) 族には視認出来るらしく、 小羽妖精(ポゥ・リース) 族に出会った時に左手首を見せると仲間として歓迎してくれると説明されました。
「刑事ドラマで聞き込み中に警察手帳を見せる的な感じだね。他の妖精族には効果無しかもしれないけど、 小羽妖精(ポゥ・リース) 族関係者だとは思ってもらえるんじゃない? 何にせよ配送業務に有利に働くのなら吾輩は大歓迎よ」
「ボクは変わった鉱石が入手出来たら嬉しいですけどね」
「ミーシャ君はブレないね」
「そう言う 三毛皇(みけおう) 閣下こそ」
(日)「お互い、ワルよのう/ワルですね」
暇を持て余したカトリーヌとコカちゃんはダイモーンさんの軍団員を乗せて遊んでいた。流石にアンディーは巫山戯ないか…、あれ? アンディーは何やってるの?
ムキュウ ムキュウ
「筋がいいぞ、どうぞ」
キュウキュウ キュウ〜
「上手いな、どうぞ」
見たらアンディーが立ち上がって剣の稽古をしていた。いやいやいやいや、いくら騎士格だからって本当に騎士を目指さなくていいから。
ムキュウ〜ン
(「ますたー あたち ちくちく」)
「このカーバンクルは筋がいいぜ、どうぞ」
アンディーが手にしている武器ってよく見たらレイピアじゃないか。ムササビの様に舞い蜂の様に刺すの?
「アンディーはボクの騎士様だもんね」
ムキュウ ムキュウ
(「あたち ますたー まもるの」)
「無理しなくていいんだからね」
ヤバいな、アンディーが針の穴を通すが如くレイピアで急所突きを会得したらどうしよう……。
その時は石の目を突いてもらって劈開方向にスパッとカットして貰おうかな。