作品タイトル不明
第623話
迷子は子猫ちゃんじゃなかったし、お巡りさんは犬じゃなかった。そんな事を考えていたらミケヲさんがチョッカイをかけてきた。
「ミーシャ君、また何か企んでたのかね?」
「企んでませんよ。迷子になったのは子猫ちゃんじゃなかったなぁ……って考えてただけです」
「確かに。それより【 魔増補(マッポ) 】は飲まないの?」
「名前と色から察すると多分【 魔増(マゾ) 草】系ですよね?」
「だろうね。しかし、アンディーにはロンググラス、カトリーヌには平皿で、コカちゃんにはカップにストロー付きで提供されているのが吾輩は凄いと思うね」
そうなんだよな。最敬礼でオ・モ・テ・ナ・シって感じよ。
「それでは、ダイモーンのアニキの無事の帰還と新たな 朋友(とも) との出会いに乾杯ー!! どうぞ」
「乾杯ー、どうぞ」
「お帰りなさい、どうぞ」
「乾杯ー!! 乾杯ー!! どうぞ」
これはどう足掻いても【 魔増補(マッポ) 】を飲む選択肢しかない。まぁ、俺は【 魔増(マゾ) 草】好きだから飲みますけど。
「いただきます」
ゴクリ、ゴクッ……。あっ、これ乳酸菌飲料の抹茶味か。抹茶オレとも乳酸菌飲料とも違う独特な風味だな。でも嫌いじゃない。アンディー達も味わっている模様。
「これ、意外と美味しいですね」
「そうだね。吾輩もそう思うね」
「流石、ダイモーンのアニキがお連れした客人だ。人界の住人で初見で【 魔増補(マッポ) 】を躊躇なく飲める奴らはそうそういないぞ、どうぞ」
「人界の住人は【 魔増(マゾ) 汁】は飲めても【 補栄養(ホエイール) 汁】を受け付けないからな、どうぞ」
「ん? 何なら鑑定してみてもいいぜ、どうぞ」
「だってさ。ミーシャ君も鑑定してみたら?」
「それではお言葉に甘えて」
(鑑定)
【 魔増補(マッポ) 】:【 魔増(マゾ) 草ジュース】と【 補栄養(ホエイール) ジュース】が合わさった飲料。
前世の日本風に表現すると、抹茶味の乳酸菌飲料。軟らかい甘みが特徴的。
魔力を回復させる【 魔増(マゾ) 草】と体力を回復させる【 補栄養(ホエイール) 】。服用する事で魔力も体力も同時に回復させる事が出来る。エリクサー系の最下級品。
えっ、これってエリクサーの一種なの!?
ムキュウ ムキュウ
(「おいちいの」)
コッピョ コピョ
(「おいしいね」)
プープ プープ
(「やばい、メッチャ美味いんですけど」)
三頭も気に入った模様。コレ系はドワーフを初めとした人・亜人系より魔獣の方が食い付きがいいもんな。
(日)「ミーシャ君、鑑定ではどう出たかね?」
(日)「抹茶味の乳酸菌飲料ですね」
(日)「吾輩、 “ イメージ:初恋の抹茶味 ” って出た」
(日)「初恋の抹茶味?」
(日)「初恋は球団じゃない方。ダブルピースとも言う」
あーー!! 乳酸菌飲料のメーカーって事か。
「ボクより 三毛皇(みけおう) 閣下の鑑定の方が優秀みたいなんですけど?」
「いやいや、ミーシャ君の鑑定も相当なものだよ」
皆で【 魔増補(マッポ) 】を味わう。低ランクとは言えエリクサーの一種だと思えば色々と回復する気がする。チョイと一杯のつもりで飲んで、何の因果か【 魔増補(マッポ) 】の手先。これを飲むと二日酔いも治るってよ。オロール先生、どうですか?
「今日は草は取り引き出来たが、 秘薬(ヤク) を売る人から【 補栄養(ホエイール) 】を入手出来なかった。これで我慢して欲しい、どうぞ」
あ、乳酸菌飲料も混ぜる種類で効果と言うか効き目が変わってくるのか。
そして、【 補栄養(ホエイール) 】は鮮度が命という事で、【 魔増補(マッポ) 】を人界に持ち込むのは結構大変だった。時間停止機能の付いたマジックバッグ、もしくは同機能を有する次元収納を取得していないと運ぶことが出来ないからね。【 補栄養(ホエイール) 】の生腐れと言う例えもあるそうな。前世の鯖かよ。
と言う訳で、妖精界ならではの味わいらしい。飲みたかったら遊びに来いと言う事だね。まさか、エリクサーのクサーって草 (= 魔増(マゾ) 草) とか、腐る (=鮮度が命) とかじゃないだろうな。
(日)「これ、持ち帰れなくはないけど、人界に持ち込むとスキル説明が面倒臭いことになるやつだね」
(日)「はい」
(日)「持ち帰りは諦めようか」
「あの……、【 魔増補(マッポ) 】が凄く美味しかったので、また飲みに訪ねてきてもいいですか?」
「マジかよ、どうぞ」
「大歓迎だ、どうぞ」
「今度は別の軍団にも紹介するぜ、どうぞ」
「ダイモーンのアニキ、アレを差し上げたらどうですか? どうぞ」
「その前に俺達の正装を見てもらうのが先だろ、どうぞ」
「それもそうだな、どうぞ」
「いいか、全員整列ーッッ、どうぞ」
ダイモーンさんの号令にダイモーン軍団全員が立ち上がる。
「テーブルの上に土足で浮くのは行儀悪いが許せ、どうぞ」
「装転!!」 そう叫ぶ言葉と共に光が溢れ、その光が収まるとダイモーンさん達の真の姿が現れた。
(日)「うっわー、悪趣味」
(日)「そういう事を言うものではないよ。どんな姿であれ彼等は “ 正装 ” と言った。吾輩達はそれに対して敬意を払わねばならない」
(日)「それはそうですけど……」
(日)「ほら、褒めて褒めて」
「すっ、素敵な御召物ですね」
「吾輩もそう感じるよ」
ムキュウ ムキュウ
(「おちょろい ちゅてき」)
それは前世で言うところのバグパイプを吹く人達に良く似た姿だった。