軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第587話

明日は大事な検証実験をする日なので今夜は早寝する事にした。コカちゃんの健やかな成長の為にも夜更かしは宜しくないしな。尚、カトリーヌはマイペースと言うか豪快と言うか、呑気にスライムバックの中で寝ていた。獣魔メンバーの中でも結構仕事をしてる方だから疲労も溜まっているのかな? 明日の為にもしっかり休んで欲しい。

オロール先生と二人になれば共通語を話す必要もなし。何語で話しても獣魔には普通に通じているのも有難い。

「オロール先生、ボクと 三毛皇(みけおう) 閣下は自前の翻訳系スキルの力でオロール先生に対して古代エルフ語を話している訳ですけど、異種族が養子縁組した場合って普通は会話に困りますよね?」

「それは古代エルフの間でもそうなんだよ」

「あ、地域で言葉が違うんでしたっけ」

「そう。東西間で仲は良くないから、そうそう結婚するもんでもないけどね。それでも稀にくっつくんだよ」

「夫婦で会話になるんですか?」

「その為に特殊なスキルを取得するね。マグロスシだ」

「鮪寿司?」

「あ、オレが訛ったか。正式なスキル名は『 大(マクロ) 四喜(スーシー) 』だよ。東西南北、全てが揃って素晴らしいという意味のスキルだ」

大四喜(だいスーシー) 、って麻雀のダブル役満と同じ名前っぽくない? 大(マクロ) 四喜(スーシー) なんだ。鮪寿司が美味しくて素晴らしいではなかった。

「東エリアの本当の呼び名は南部を意味する『サウス・エリア』なんだ。東は他にも『イーストブルー・エリア』と呼ばれる『エイトアーマー・マウンテン』の西側にある地域の東側を指したりもする。東・南・西・北、全域の言葉が全部揃えば意味が通じて喜ばしいと言う意味だ」

ちょっと待て、言葉だけでなく地域の呼び名も面倒臭いぞ!! 東側が『サウス・エリア』で、山を挟んだ西側地域の中でも東側だから『イーストブルー・エリア』って初見殺しじゃないか。『ブルー=フォレスト』ってどれだけ他種族を寄せ付けない作りなんだ。

「そのスキルはオロール先生は取得していないんですか?」

「取得するのは嫌なんだよ。それこそ、悪口だろうが何だろうが通じてしまうからね」

あ、同じ古代エルフでも仲が悪い同士ならコッソリ悪口の一つも言って罵りたいのか。それなら通じない言葉の方が聞かれてもトラブルにならないわ。

「それに、『翻訳コニャック』があるからね。無理にスキルを取る必要もないよ」

酔いが覚めたら言葉が通じなくなるってのは便利なものだよ、とはオロール先生の弁。そして、オロール先生が『 大(マクロ) 四喜(スーシー) 』を取得すると養子にした俺とミケヲさんだけでなく、全古代エルフと言葉が通じてしまう訳だ。しかも、俺とミケヲさんが共通で操る事のできる特殊言語というのは当然ながら日本語だ。日本語を克服されるのは色々と問題がありそうだ。

俺とミケヲさんが『 大(マクロ) 四喜(スーシー) 』を取得した場合は基本的にオロール先生が操る古代エルフ語が使えるだけになる。なので、オロール先生の故郷に行くとその地域では言葉が通じるんだろうよ。

「ボク達のスキルを誤魔化す為にも取得した方がいいですよね?」

「そうだね」

「どうすれば取得出来ますか?」

「古代エルフの秘薬『グエンターレ』を飲むだけで取得出来るよ」

古代エルフの秘薬『グエンターレ』と言うのは、難解な古代エルフの言葉もエルフのグエン氏族が話すエルフ語の様に簡単になるという意味の “ グエンたれ ” が語源なんだそうな。

『グエンターレ』の材料は、死神の果実の一つ【 紅玉(ジョナサン) 】、活力と破壊の源であるアホーネ百合の球根【 六片根(シックスパック) 】、【 魔鮪の腹の身(ツナサシーミ) の脂】、【魔ボヤの +(プラス) 汁】、【ホヤッキーの煮汁】、【干しクラーケンの粉】、【 強情菊(ゴンボ) の根の煎じ汁】。

等々を合わせて作り上げる塩味の効いた特製ポーションなのだと言う。材料を聞くだけでも恐ろしい、当に秘薬だ。そしてポーションなのに塩味ってどういう事なの? 古代エルフ塩分好きすぎ問題。

「それで、オロール先生は『グエンターレ』を持っているんですか?」

「まさか。でも、材料を取り寄せれば直ぐに作れるよ」

まさかの手作り。それでもスキル偽装の為には作ってもらって飲むしかないのか。まぁ一蓮托生、ミケヲさんも飲む訳だからいいかな。

確かに【翻訳コニャック】の方が美味しいし、いい感じに酔っ払えるから人気なのも分かる気がする。酔ってなければ通じない悪口も言えるしな。

「こんな事なら実家に寄るついでに『グエンターレ』を持ってくればよかったよ」

「流石に取りには行かないですよね?」

「ああ。いい感じに雪に埋もれてるだろうからね。春にならないと行きたくない場所だよ。昔は兎も角、今の時代は転送陣で物資の輸送が出来る様になったからね、何とか死なずに済んでるよ」

冬の『ブルー=フォレスト』は天も見放す死の大地なのか……。

「そうそう春の風物詩、雪の大回廊がこれまた凄いんだ。春先になると積もりに積もった雪を掘って作り上げるんだ。どこまでも続く白い大回廊、見上げると澄み切った青空。春の訪れを感じる瞬間だよ……」

雪の大回廊!! 古代エルフと家族になると大回廊を掘る権利を貰えますとか言われなくて良かった。

「明日も早いんだろう? オレの酒に付き合わなくていいから早くお休み」

「オロール先生、おやすみなさい」

まぁ、寝る前にアンディーと念話で話し合う訳なんだが。