作品タイトル不明
第582話
「じゃあ商業ギルドに行こうか」
「ちょっと待って、まだチャーモに話しがありました」
いかんいかん、花びら柄の透かし細工を施していいか聞いていなかった。
「チャーモ、この【ホヤッキー】に花びらの模様をくり抜いてもいい?」
コカッコッコッ コカッ
(「素敵にしてくださるんでしょう?」)
「勿論。レディにお似合いのデザインにする予定です。問題はくり抜いた為に鎧としての強度が失われてしまう事になったら嫌かな…って」
「ミーシャ、【ホヤッキー】に透かし細工を掛けるのか?」
「はい。聞いたこと無いですよね?」
「最近は聞かないが、大昔にはあったとか聞くぞ。だから少しぐらい透かし細工を施しても大丈夫なハズだ」
あるんかーい。しかも失われたデザイン。
コカッコッコッ
(「ならお願いするわ。奥様会で自慢出来るもの」)
奥様会ですと!? なにそれ、コカコッコもお茶会みたいな事をするの? ママ友の会? 女子会? コカコッコの謎習性を知ってしまった。
「確か、魔導 鍍金(メッキ) の技術の発見と発展に関わったとされる技法じゃなかったか? それと並行して魔導ガラスに縁取りを施す技術が発展したからな。多分、本家の持つ保管庫に埃を被ったやつがあるぞ」
「そっ、そうなんですか???」
ラルフロ=レーンさんの氏族は魔導ガラスに関わっているから、それで古い時代の資料として色々と保管されているのか。
コカコッコー
(「チャーモの鎧は食べやすくなって羨ましいな」)
コッコッコー
(「あら、あなたの鎧のギザギザも食べやすいでしょう?」)
そうか、二羽はオシャレ且つ食べやすさを求めていたのだな。クライアントの意見というか要望はある意味勉強になる。まして魔獣の要望なんてなかなか知るチャンスはないしな。
コカコッコカー
(「抜いた欠片も忘れないで持ってきて下さいね」)
「分かりました」
やっぱりそれも食べるのかーい!!
コカちゃんをスライムバックに入れ、事務所待機のアンディーとカトリーヌと合流。カトリーヌと言うか【手持ち豚】はどこに連れて行っても人気者だ。オヤツと引き換えに虫除けの煙を一吐き二吐きすれば喜ばれる。ウィン・ウィンの関係ってやつだね。
そこから改めて商業ギルドへ向かった。
「悪いな。ミーシャ案件だ」
「今、係の者をお呼びしますね」
係の者 =(イコール) ホーク=エーツさんかな。終業前に駆け込み済まないねぇ。脳内で蛍のワルツなBGMが流れる。元曲にしろワルツにしろ、あの曲が店舗内で流れているのを耳にすると反射的に退店したくなるのが日本人らしい。それがどの時間で流れていてもそうなるんだから刷り込みというのは凄いよなぁ。ある意味、洗脳なのかもしれんが。
「あー、ミーシャはん。こんばんは。何しに来たん?」
あ、カーン=エーツさんの方だった。ホーク=エーツさんはお休みの日だったのかな?
「カーン=エーツさん、こんばんは。儲かりまっか?」
「ボチボチでんなぁ」
「連日お忙しそうですね」
「誰のせいやと思うとんねん。……で、今日のネタはなんやの? ほな奥行こか」
流れる様な所作でいつもの部屋に連れて行かれる。扉を開けるとホーク=エーツさんが座って俺を待っていた。
「あっ、ミーシャ。カーン兄がいる時に来てくれて良かったよ。手持ち工具の説明に来てくれてありがとう」
えっ? ホーク=エーツさんの用事ってそっちなの?
「手持ち工具、何の話だ?」
「お昼過ぎに報告が入ったから夕方には来てくれると思ってたよ」
「待て待て待て待て、俺はミーシャを別件の登録で連れてきたんだがな」
「ちょっとミーシャ、聞いてないよ」
「新しい魔道具の話とちゃうの?」
「悪いが先に登録してもらえるか?」
「せやな。魔道具は登録済みやし。登録は一分一秒でも早い方がええもんな」
と言うことで、あみだくじの登録が始まった。終わったらそのまま研磨機の説明にシフトするのか。
「あの、ナオ=エーツさんは居ますか? 何だったらアンディー達と遊ん……、いや触れ合ってもらってもいいんですが」
「本当? ナオが喜ぶよ。連れて行ってもいいの?」
ムキュウ
プープー
コッピョ
「これ、オヤツの【野草クッキー】と【 魔増(マゾ) 草クッキー】です。皆で食べながら触れ合ってもらえれば」
「ありがとう。助かる。カーバンクルも人気の魔獣だけど、【手持ち豚】とコカコッコは生活に密着している魔獣種だから。今度、ポニーとも触れ合わせて欲しいよ」
「分かりました。その時はワギュを指名してください」
「おーい、ナオ〜。豚さんだよー。ヒヨコさんもいるよー」
おいおい、ドアを開けっ放しなのかよ。まぁ、ホーク=エーツさん抜きでは説明が始まらないのでよしとするか。
「さて、改めて説明を頼む」
「はい。そもそもはボクが畑でアリから【 蟻石(アーマイゼライト) 】を貰ったお礼に【鉱夫飴】を渡したところから始まりまして……」
「で、何の変哲もない【 柘榴石(グラーナ) 】だったので、何時もの様に研磨し始めた……と」
「はい。今回はこの瞳型に研磨したんです。そして研磨途中の石をラルフロ=レーンさんに見せたら、アリの石を売ってくれと頼まれたので卸す事にしました」
「何時もの流れやね」
「そして、付属するストーリーを考える途中でこの瞳型の形状を何と呼べば一番しっくりくるか考えまして、凄く悩んでしまったのでくじ引きで決めることにしました。そのくじがこれです」
そう言うと机の上にあみだくじを書いた紙を置いた。
「なんやの、コレ?」
「天の梯子の導きで決まる、不思議なくじ引きだぞ。まぁ俺は説明に別口を出されたんだがな。ミーシャ、あっちも頼むぜ」
ラルフロ=レーンさんの指示通りにエールの当たるあみだくじを取り出した。そこから先は、ラルフロ=レーンさんが熱弁を振るってくれた。説明しながら新しくあみだくじを書いてるし。
「折角だから選択肢を増やそうぜ。エール、『 生命之水(蒸留酒) 』、水の他にハズレと……【 涙目酒(サワー) 】だな」
「四人で引くのに五択なのか?」
「引き当てた物をミーシャが奢ってくれるぜ」
「ちょっと、ラルフロ=レーンさん!!」
「まぁ、遊びだよ、遊び。今回はミーシャが奢る飲み物が決まるくじ引きだが、別にこのくじ引きは酒場で支払う奴を決めてもいいし、晩飯のメニューを決めてもいいんだぜ」
「面白いね。試してみよう」
「では、下に五つの選択肢を書いて、紙を折って蓋をします。どの線を選ぶか決めたら好きなだけ横棒を書き込んで下さい」
「それで梯子なんやな。天の梯子の導きやなんて、えろうオシャレさんやわ」
「引く時には下の紙を開いてもいいですし、決まるまで蓋をしていても構いません」
「なら開けようぜ」
そこには新しいオモチャを手に入れ、目を輝かせる四人のおっさん達の姿があった訳で。