作品タイトル不明
第583話
「水だ。また水かよ!!」
「俺はエールだな」
「俺はハズレ」
「何でや、自分は【 涙目酒(サワー) 】やし!?」
ラルフロ=レーンさん、水を引き当てすぎ問題。そしておっさん共が騒々しいです。
「ラルフロ=レーンさん、お水が好きなんですね」
「そこはほら、水も滴るイイ男って事だろ」
「冗談はやめてーな」
「全部の説明が終わった後で皆さんにドリンクをご馳走しますね。商業ギルドに有りますよね?」
「要らんて。在庫有りでも【 涙目酒(サワー) 】なんて飲みたないわ」
「これ、何本か横棒を足したらまた遊べますよ」
「ホンマに?」
「ボク、もう奢りませんからね」
童心に返ったおっさん達、再び。楽しそうに横棒を書き足してるぞ。
♪ はしごくじ〜 はしごくじ〜
どれにしようか はしごくじ〜
はしごくじ〜 はしごくじ〜
どれになるかな はしごく〜じ〜 ♪
くじの上を動いていく指に合わせてつい口ずさんでしまった。やっぱりほら、あみだくじの歌って歌いたくなるじゃない。
「ミーシャ、その歌は?」
「あ……、はっ、はしごくじの歌です」
あぶねー、あみだくじって言いそうになったわ。
「変な歌だな」
「応援歌みたいなものですよ」
「まぁ、 坑道(あな) 掘ってる時も何かしら歌うもんだろ? くじ引きの時に歌ってもいいんじゃねぇの?」
「じゃあこれは、登録名は【はしごくじ】で、キャッチフレーズは “ 天の梯子の導き ” でいい? ついでにその歌も登録しておこう」
「はい。歌もですか?」
「これ、くじ引きも歌も、育ての爺ちゃん由来のネタなん?」
「そうです」
「ほな、はしごジジイのくじ引きやね」
「はしごジジイ!?」
「それだ!! カーン兄、このくじ引きは、ミーシャがはしごジジイから教わったくじ引きにしよう」
「はしごジジイかよ」
「ええんとちゃうん? ナナシーはんばっかり 使(つこ) うてられへんし」
「それなら梯子の神様に梯子を使わせてくださいとお願いしないといけないな」
「梯子の神様っているんですね」
「居るのか?」
「居たかな?」
え〜っ……。梯子の神様が居るって一瞬信じたじゃないか。
「居ることにしましょう。ほら、空から梯子みたいな光も降りてきますし。ボク達が神様の名前を知らないだけで、梯子の神様はいる……って事にしましょう。そして神様を捏造して神罰が降りたら嫌なので、上位存在にお供えします」
「そこは賭け事の神様か運の神様でええんとちゃうん?」
梯子の神様とかはしごジジイとか、収拾が付かなくなりそうなので、申し訳ないけど上様に丸投げさせて下さい。この世界だとはしごくじだけど、これは百パーセントあみだくじです。上様ならはしごくじの歌の元ネタも分かってくれるだろうし。
「それで、いつ頃納品してくれる?」
「あ、そうですね、明日は【タロール茸】で忙しいので、早くても二の週の一の日か 二の日ですね」
「だとよ。カーン=エーツ、聞いたか?」
「えっ、なんやの? 自分、その話は聞いてへんよ」
「言ってなかったか? ミーシャがアリから貰った石を『 愛しのウサちゃん(ハニー・バニー) 』のイベントに合わせて卸すって話だぞ」
「初耳やわ」
「マジかよ……。情熱の赤い石を売り付けるチャンスだぞ」
「そんなん言われても。で、大地からアリが届けてくれた【 柘榴石(グラーナ) 】で、石の形が糸巻き型なんやな。ほな、 蟲人(むしんちゅ) はんに持っていったらどうなん? アリで虫繋がりやし、 蟲人(むしんちゅ) はん達って、糸繰りやの機織りやのしてはるやろ? アリの石が糸巻き型ならウケるんとちゃうん?」
「そう言われてみたらヒト族よりいいかもしれねぇわ。アリが運んだって聞かされたらヒト族なら拒絶する奴もいるかもしれねぇし」
「それで、また入手出来そうなん?」
「どうでしょう。アリさん次第ですかね」
「もし入手出来そうやったら【 蟻石(アーマイゼライト) 】は 蟲人(むしんちゅ) はん達に優先的に持ち込むさかい、って売り込めるんやけどね」
「そういう話なら、アリさんから石を貰うことがあれば研磨したものは 蟲人(むしんちゅ) さん用に卸します」
「ほな、そう言う段取りで売り込むわ」
「 蟲人(むしんちゅ) 相手か……。初回は髪留めの棒か櫛がいいだろうな」
髪留めの棒や櫛は機織りの糸捌きにも使えるので、仕事道具としても装身具としても使えるデザインにすると説明された。そしてヒト族に売り付けなくなったのでラルフロ=レーンさんに卸す値段が下方修整されました。でも、魔絹布や魔麻布を初めとした魔力を帯びた布を織る仕事をしている 蟲人(むしんちゅ) と縁が出来るので、それはそれで良かったかな。将来的に魔導刺繍に使う布を依頼する事になるかもしれないじゃない。
それにしても、はしごジジイ。前世ではあみだくじを手に迫ってくるお婆さんキャラ、 “ あみ婆ちゃん ” がいたけどな。理論詰めではなく、くじ引きというある意味で運任せの《《カンピューター》》処理してくるお婆ちゃんだ。当たれば「わたしゃ天才だよ」、違った時は「ん、間違ったかのう?」だの言ってたな。
そうなると “ はしごジジイ ” にもキャラ付けが必要かもしれないな。梯子といえば攻城戦で城壁に梯子を立て掛けて……ってのを思い出した。そうだ、どのルートに梯子を掛ければ無事に進入出来るかを選ぶ行為、どの梯子が無事で済むかを賭ける行為からくじ引きに発展した事にしたらどうだろう? 兵士達が命を張った梯子勝負が、今では誰でも楽しめる緩〜いくじ引きになりました……って。
だったら管轄は梯子の神様じゃなくて戦神とかギャンブルの神様になるのか? もしくは 盗賊(シーフ) や 暗殺者(アサシン) が信仰する神様とかか?
「ミーシャ、何を企んでた?」
「えっ、あっ……、はい」
結局、この妄想『はしごジジイ物語』が採用されてしまいましたよ。神話や伝説はこうやって作られていくんだなぁ……(遠い目)。
そして梯子勝負をね、勝負梯子って言わなくてよかったわ。勝負下着じゃないんだからさっ。大体、勝負梯子ってどんな梯子だよ。