作品タイトル不明
第579話
【ホヤッキー】の大まかな形も決まった事で、続いて表側の表面の削り落としに着手。タッキー用は茶色でチャーモ用は薄紫の色が出るようにする。そして裏側、つまりホタテが二枚貝として生きている時に貝柱が付いている内側は白く滑らかだから、殆ど手を着けなくても良いのは楽だよね。この内側に魔法陣を描いたりする事も出来るのだとか。
チャーモ用の貝殻の表側の表面全体を薄紫にしてから気付いた。これ、茶色い部分を残していたら桜の枝を表現出来たんじゃ……。ガックリ。
次だ。この思い付きは次の作品の時に活かそう。
削り残す柄の輪郭線を混ぜ墨で描いておいた。地色だけで柄は不要と言われたら消せるしな。今日の作業はここまで。コカコッコに確認してもらってGOサインを貰わないと次の作業にいけない。クライアントと逐一確認出来る作業は大変な代わりにトラブルも少ないのでザン=ギュラー先生には羨ましがられたんだけどね。毎日コカちゃんを預ける序でに確認するからいいけど、これが毎日仕様確認の為だけに出向かなきゃいけなかったら大変だ。
夕方になる前に作業は終了。明日は松茸狩り検証実験なので研磨作業はお休みだ。タイムカードも通したのでアンディーとカトリーヌを連れてラルフロ=レーンさんの工房に向かう。アリさんのガーネットとホタテビキニに装着する石の相談ね。
◇◇◇◇◇
「ん? アリの石が完成したのか?」
「ラルフロ=レーンさん、完成はまだなんですけど、今日は作業途中の鉱石を確認して貰いたくて来ました。後、【ホヤッキー】に取り付ける飾り石の相談です」
【 蟻石(アーマイゼライト) ・タイプ・ 柘榴石(グラーナ) 】、これがアリさんのガーネットの正式名称になる。実はガーネットに限らずアリさんの鉱石は沢山有る、いや、アリさんが持ってきくれた鉱石全てが【 蟻石(アーマイゼライト) 】と呼ばれるので、今回の石はその中でもガーネット、異世界名だと【 柘榴石(グラーナ) 】なだけだ。
「形状は…なになに、糸巻き型。糸紡ぎの時に糸を巻き取った形って事か」
「はい」
「で、瞳型でも唇型でもオムレツ型でもなくて糸巻き型にした理由は?」
「それはこの、天の梯子の導きで決まりました」
そう言いながらあみだくじを書いた芭蕉紙を見せた。
「天の梯子の導き? これか? これはどういう仕様なんだ?」
「これはですね……」
紙に選択肢の数だけ縦線を引き、縦線の下部に選択肢の名前を一つずつ記入。選択肢を隠し、縦線と縦線の間に横棒、つまり梯子の踏み 桟(ざん) を何本も入れ、選んだ線が選択肢に到達するまでを分かり辛くする。最後にどの線にするか選び、上から下に向かって縦→横→縦→横と動かして行き、到達した選択肢を選ぶ。
試してもらう為に不要な紙に縦線を三本書き、下部にそれぞれエール、『 生命之水(蒸留酒) 』、水と書き紙を折って選択肢を隠す。それから横棒を気の済むまで記入してもらった。
「今度ラルフロ=レーンさんに、この三つの中から引き当てた飲み物を奢りますね」
「成る程、そういう遊びか」
「はい、選ぶ遊びですね」
「選択肢を隠すのはスキル対策か?」
「はい。スキルによっては選択肢が見えていたら横棒を何本引いても直ぐに看破されちゃいますので」
「よし、真ん中だ」
あみだくじ〜、あみだくじ〜。ラルフロ=レーンさんが指を動かす。到達したところで折り返した紙を開き何を引き当てたか確認してもらう。
あ……、水だよ。よりによって水を引き当てるかぁ?
「みっ、水かぁ!!」
「水ですね」
「イカサマじゃねぇだろうな」
「まさか。他を試してみては?」
「おう。左側だ。下は隠さないで指を動かすぞ」
結果は当然、水にはならない。
「エールだな。じゃあ右だと『 生命之水(蒸留酒) 』か……。どれ試す。あ、そうだな間違いない。で、この選ぶ方式は?」
「天の梯子の導きです」
「いや、そうじゃなくてミーシャが考えたやつだろ?」
「はい」
「俺の他に誰かに引かせたか?」
「まだです」
「ここでアリの石を眺めてる場合じゃねぇぞ。登録してこい!!」
あ……、やっぱりメジャーどころか初見だったか。
「ラルフロ、何を騒いでるんだ?」
「リンド=バーグ、ちょっと来いや。面白い物を見せっから」
「全く騒々し……なんだミーシャ、来てたのか」
「あ、リンド=バーグさん、こんにちは」
「いいからコレ引け。引き当てた物をミーシャが奢ってくれるぜ」
「あ、ん??? 三つから一つ選べばいいのか?」
リンド=バーグさんが選んだ線は真ん中。よりによって真ん中!!
「水……か」
「何でリンド=バーグも真ん中を選ぶかな」
「それでは後日、美味しいお水を贈呈しますね」
「おい、マジかよ」
「それでミーシャ、このくじ引きは一体何なんだ?」
解説すること再び。
「大体分かったが、この横棒は何故入れる?」
「天の梯子なので、梯子らしく踏み 桟(ざん) を入れてみました。」
いい加減、言い訳が苦しい。
「何処で覚えてきたんだ?」
「それこそ、ボクの育ての爺ちゃんが棒を使ってくじ引きをしてました。何本かある棒、その先に1本だけ当たりの印を付けます。棒を筒に刺して当たりを引き当てる単純なくじ引きです。それを紙の上に書いて若干のアレンジを加えたのがこの天の梯子の導きのくじです」
「あー、なんか分かったわ」
「天の梯子、雲の切れ間から光りが差し込むアレだな」
「はい。梯子繋がりで踏み 桟(ざん) を書き加えてみました。これなら参加者が好きなだけ書き込めますし」
「これ、飲み物でどれが当たるかを楽しむだけでなく、選ぶ棒は五本あるのに当たりのエールが一つだけってパターンも出来るな」
「よし、今から商業ギルドだ。リンド=バーグも暇だろ?」
「まぁ、暇と言えば暇だな」
「あれ、アリサお姉ちゃんは?」
「アリサは昨日から明日のタロール茸の為に泊まりがけで依頼作業中だ」
アリサお姉ちゃんは明日の作業が安全に進行する為に、複数の冒険者パーティー達と一緒に毒キノコの除去任務を遂行中でした。まぁ、錬金術ギルドや学園がチャンスとばかりに毒キノコ採取の依頼を出してきた訳なのだが。