軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第576話

面倒くさい手続きは校長先生に押し付けてしまった。そしてホタテの貝殻を取り出し作業を開始しようとした時に俺はまたやらかしてしまった。

「さっきの魔道具だけど、研磨の他に使えそうな事はあると思う?」

「そうですね……」

縦回転の研磨機って 薬研(やげん) を思い出すよね。 薬研(やげん) は本来は薬を磨り潰す道具なんだけど、腹筋を鍛えるトレーニングマシーンの一つにもされてたな。買ってみたけど効果の出る前に気持ちが萎えてリサイクルショップに持っていった苦い記憶が蘇る。買い取り金額は五百円にもならなかった。後日、売値を確認しに行ったら、ぶら下がり器具、ステップマシーン、バランスボール、自転車こぎマシーン等と一緒に健康増進コーナーに置かれていたよ。 [ 健康クエスト 鍛えた身体で不健康魔王を倒せ!! ] なんて書かれた手書きのポスターが痛々しかった。ちなみにそのコーナーで一番高かったのが体脂肪測定の出来る体重計だったよ。

とまぁ、苦い思い出は置いておいて、似た道具ということで 薬研(やげん) 。あれ……これ、そもそも外国語が無い系なの? スキルが苦労しつつも直訳してくれたのはハーブ・ミルにハーブ・グラインダー。なのでドワーフ語でもいい感じの名前が見つからない。危ねー、手拍子で 薬研(やげん) って口走ってたら通じなかったよ。さてどうする……。いっその事ヤーゲンにするか? 何となく響きがドワーフ語っぽいし。

いや待て、ヤーゲンはドワーフ語で “ 狩る ” とか “ 突く ” とかの意味があるじゃないか。ちょっと不味いな。だったらヤゲーンか? いや、スキルが仕事をしてくれた。ヤクゲーエンだ。 薬(ヤク) の上を 歩く(ゲーエン) でヤクゲーエン。やったぜ、これなら動作的にも説明がつくぞ!!

「思い浮かばなかったら無理しなくていいよ」

「あの、これなんですけど……」

俺はさっき土魔法で作って置きっぱなしにしていた中心に穴の開いた円盤を手にし、中心の穴に棒を通す。そして地面の上をゴロゴロと往復させた。

「これ、受け皿に乾燥させた薬草を置いて、こうやって磨り潰すのに使えませんかね? 薬草でなくても【 長胡椒(ヒハー) 】を磨り潰してもいいですけどね」

「それ、面白いよ。ミーシャ=ニイトラックバーグ、その円盤を持ってもう一度校長室に行こう。暫定名は考えた?」

「あっ、はい。薬の上を円盤が歩いて潰す道具なので【 薬歩き(ヤクゲーエン) 】でどうでしょう?」

「ヤク・ゲーエンね。使用にあたって難しい説明をしなくていいから、それでいいんじゃない? さあ、急ごう。校長先生が出掛けてしまったら大変だ」

慌てて校長室に向かうと校長先生が商業ギルドに出掛けようとしていた。ギリギリセーフ。そして再度説明が……。校長先生ごめんなさい。

「まさか追加の発案が持ち込まれるとは」

「校長先生、申し訳ありませんでした。さっきスッと浮かんでしまいました」

「いや、構わないよ。それでその【ヤク・ゲーエン】だけど、魔道具だけでなく手動でも使えると」

「はい」

「原理は極めてシンプルだ。これは獣人族、虎の人達に人気が出るかもしれない」

「虎の人ですか?」

「虎の人は薬を作るから従来の薬草を 搗(つ) いて散剤を作る方式よりこちらの方が力も不要で均一に砕けるだろう。それに手動というのがいい。魔道具を使いこなす必要もなくメンテナンスも簡単。棒を虎の人の手でも掴みやすい形状にすればいいだけだ」

「そうなんですね」

「手動と言えば、【バーサーカッター】が獣人族やヒト族の平民の間で人気が出てきているそうだ。魔石要らずで作業の手間が減るから、【タワシ】と一緒にして夫が妻に贈る事が夫婦円満の秘訣になるという話だ」

「魔道具に拘る必要はないという例なんですね」

「そう言う事だよ。さて、【 起伏消去機(バニシング・フラット) 】、【|縦回転円盤砥石ネジ留め 式研磨機(スクリュー・パイル・グラインダー) 】の登録はザン=ギュラー先生、派生道具の【 薬歩き(ヤク・ゲーエン) 】はミーシャ=ニイトラックバーグでいいのかな?」

「校長先生、先の二つは私単独の発案と言うよりミーシャ=ニイトラックバーグの発言からヒントを得ていますので、出来れば連名で登録をお願いしたいです」

「いや、ボクは……」

「少しでも発案の権利があると将来的に有利になるからね。権利金云々より、あの権利の発案者の誰某ってのが何かしらに結構効いてくるんだよ」

「そういう事なら連名でお願いします」

「いやー、楽しみだよ。早く試作品が届かないかな。【 起伏消去機(バニシング・フラット) 】をこう手で持って、石柱にグッと押し当ててみたい」

「ザン=ギュラー先生、流石にそう直ぐには出来ないのでは?」

「いや、隙を持て余した魔道具工学を専攻している学生がいるから、少し焚き付けてやれば面白がって開発するでしょう。ゴーレム機構とはまた別ですから、打倒ハーレー=ポーターを掲げる学生にはこの魔道具開発は刺さるでしょう」

まさか、ハーレー=ポーターさんへの対抗心を利用するとは。やるな、校長先生。

それを聞くと嬉しさのあまりなのか、ここが校長室だというのにザン=ギュラー先生が腕組みをしたままステップを踏んで踊り出した。

「ザン=ギュラー先生……」

「そこで踊りますか?」

「校長先生、失礼しました。嬉しさのあまり、つい工作ダンスを……」

腕組みステップ、コサックダンスじゃなかったよ。