軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第575話

「ザン=ギュラー先生、おはようございます。今日もよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくね。今日の作業内容は?」

「【ホヤッキー】の外縁をコカコッコから指定されてきた位置まで切り取る予定です。時間に余裕があれば模様の削り出しをしたいと思っています」

「はい、今日も頑張る様に。ところで昨日ミーシャ=ニイトラックバーグが話題にあげた 回転式旋削機(レイス) なんだけど、『マウンテン=ペアー』領では一部の職人が強化した物を鉱石研磨に使っているという情報を手に入れたよ」

「本当ですか!!」

マジか!! 円盤状の砥石をセットし、地面と水平方向に回転するものだったら前世で刃物を研いだり鉱石研磨をするのに使われている研磨機と差が無いのでは? 異世界モノは回転数が不明だけど、手で擦るよりはずっとマシだ。

「そう。地面と水平方向に回転する研磨機だったから、私の仕事には向かないと言うことで詳しい情報を入手していなかったんだ」

「その魔道具って、こういう事ですよね?」

そう言いながら俺は土魔法『土器』で中心に穴の開いた円盤を作り、穴を棒で地面に突き刺し円盤を手で回してみる。

「そうそう。それが高速回転していて、平面の砥石部分に研磨対象を押し当てて研磨するって感じだね」

「これってすぐ輸入出来ますかね?」

「輸入は出来るけど、そこは魔道具やゴーレム屋に製造を外部委託したらいいと思うよ。産学共同の製作作業だね」

「あっ、そうですね。作れるものは作ればいいんだ」

「権利料は支払わなきゃいけないけど、未来のことを考えたら輸入するより生産的だよ」

それだったら、縦回転式の研磨機も作ればいいんじゃないのか?

「ザン=ギュラー先生、円盤状の砥石がこう縦方向で……、地面に対して垂直に設置して回転させる魔道具って有ります? 砥石の研磨位置はこの円盤の横縁です。研磨する職人の位置取り次第で平たい平面側も研磨に使えますが」

「縦方向に設置した魔道具は見たことが無いかもしれない。詳しい事は商業ギルドに確認しないと。これがもし未登録案件だったら、本来の 回転式旋削機(レイス) からの派生になるから支払う権利料は格安になるよ」

「ザン=ギュラー先生、情報ありがとうございます」

「私もね、便利な魔道具は気になるじゃない。ミーシャ=ニイトラックバーグの話を聞いて、もしかすると石像彫刻に役立つ最新魔道具があるかもしれないと思って調べてしまったんだよ」

「でも、設置型は石像彫刻には厳しいですよね」

「ノミみたいに手で持てたらいいんだけどね」

あっ、あるじゃないか。手持ちの研磨道具と言えばハンドリューターにマイクログラインダーだ。電動ドライバーに研磨用の尖端工具を取り付けた物でもいいけど。

「ザン=ギュラー先生、縦回転の魔道具を超小型化したら手で持てると思いませんか?」

「言われてみたら可能かもしれない。尖端の砥石部分を様々交換したら、手持ちで使う研磨魔道具だけで石柱から石像が作れそうだよ。そして手持ちで使う研磨の魔道具は存在していない。よし、今から二人で校長室に行こう」

「今からですか?」

「そう。登録をしてその魔道具を開発してもらおう」

ザン=ギュラー先生の目がギラギラと輝いている!! そして少しどころでなく鼻息が荒い。どうやら未知の工具を妄想して興奮している模様。

「そうだ、手持ちの研磨の魔道具の暫定名を決めないと……。邪魔な箇所を消して起伏を無くする為の道具【 起伏消去機(バニシング・フラット) 】とかがいいのかな? 」

◇◇◇◇◇

「校長先生、お手隙でしたでしょうか?」

「ザン=ギュラー先生、どうしましたか?」

「登録をしたい魔道具の案が出ましたので、作業を中断して説明しに参りました」

校長先生が、またミーシャ=ニイトラックバーグ案件なのかい? な目で俺を見つめている気がする。

ザン=ギュラー先生が先程盛り上がった研磨の魔道具ネタを校長先生に説明し始めた。

「その縦方向に砥石が回転する魔道具は未登録の可能性がありますね。先に登録されていれば却下されるだけですし、念の為、登録を掛けておきましょう。それで暫定名は?」

「あっ、そちらの名前は考えていなかった」

「そちらの…と言うことはまだ有りますか」

「はい。本命はこちらです。その縦回転する魔道具を超小型化させて片手で持てる様にした物です。暫定名は【 起伏消去(バニシング・フラット) 】です」

次いでマイクログラインダーの説明が始まった。小さいながらも形状の違う砥石を付け替え出来る様にしたい事、魔道具の軽さも然ることながら何処にでも持ち運び出来ること、小さな魔石で動かすだけでなく、大きな魔石を使ったエネルギーチャージャーと接続する事でそこそこ長時間使える様にしたいこと、自前の魔力をチャージ出来たら最高であること等が伝えられた。俺が何も言わずともそこまで考えが浮かんでいたとは、流石だなとしか言いようがない。

「確かにこちらの方が本命ですね。開発は急いだ方がいいですかね?」

「はい。試作機の使用実験には私が手を挙げます。失敗でも成功でも、石像にその記録を刻み込みたいので。こんな事になるのなら若い頃に魔道具工学を専攻しておくべきでした」

「しかしですよ、魔道具を作る職人や学生は沢山おりますが、石工、それも見映えする石像を彫れる職人はそうそう居るものではないですよ」

「校長先生にそう言われると誇らしく思います。そうだ、縦回転の魔道具の暫定名を思いつきました。【|縦回転円盤砥石ネジ留め 式研磨機(スクリュー・パイル・グラインダー) 】ですかね、今一つ語呂がしっくりきませんが……」

そこ、パイルドライバーじゃないんだな。

後にザン=ギュラー先生は様々な芸術をミックスし、芸術の既存概念を破壊した【 最終的に芸術は爆発だ(ファイナル・アート・ミックス・ボンバー) 】という表現方法を確立。芸術界にその名を残すことになるのだった。