作品タイトル不明
第568話
「おお、妹よ待たせたな」
上機嫌で手を振りながらミケヲさんが商業ギルドの入り口から姿を現した。商業ギルドの奥から出てこないのってメッチャ新鮮だな。
「手続きは終わりました?」
「商業ギルド『スワロー』支部長殿の承認を貰えば終了だね」
ああ、とうとう転生者同士が正式な家族になってしまうのか……。まぁ、いい隠れ蓑にさせてもらうけどな。
俺達には俺達の理由があって養子縁組を進めた訳だけど、ミケヲさんと縁が深くなったと商業ギルドや馬車ギルドは小躍りしていたのだとか。カーン=エーツさんは泣いていたらしいけど。
ここから先は一家団欒。商業ギルドの一室で一家団欒ってのもなぁ……。セキュリティの関係上仕方ない。
そうだ、商業ギルドから重曹を分けてもらわないと。生パスタだから茹でると普通にモチモチ麺だけど、念の為少しお湯に重曹を加えておきたい。
施錠し防音の魔道具を起動させると通常の機密ルームだ。会話の内容が転生関係になりそうだったらオロール先生が即時ヘネシーの呪文を唱える手筈になっている。そしてここからはオロール先生の肝臓を守る為に古代エルフ語での会話となる。俺はユニークスキル『 異世界言語(X−リンガル) 』だけどミケヲさんは『 万能通訳(フリートーク) 』だった。スキル的にはミケヲさんの方が上だ。
「それで今夜は何を?」
「簡単に焼きそばパンですね」
「いいね、焼きそばパン」
「焼きそばパンとは何だい?」
「焼きそばという食べ物をパンで挟んだ料理です」
「炭水化物の重ね食いという罪深い料理だね。そして使いっパシリをさせるのに使う食べ物だとも言う」
「作るのは簡単なので、先にボクの従魔達に 三毛皇(みけおう) 閣下を紹介させて下さい」
ムキュウ!!
(「あたち、あんでぃー」)
プープー
(「アタシはカトリーヌ。ヨロシクね」)
コッピョ
(「ぼく、コカちゃん。コカコッコのこどもなの」)
「おお、皆可愛いね。吾輩はマーダーナイン=ミケヲ。 三毛皇(みけおう) を名乗っている」
ムキュウ キュウ
(「おはなち できるの」)
「吾輩のスキルは強力だからね。アンディー、カトリーヌ、コカちゃん、宜しく頼むよ」
「あと留守番組で、馬車組合の厩舎にポニーのワギュとラパンが居て、職校に【カミチスイコウモリ】のガジェットが居ます」
「ミーシャ、動物王国を目指すの? それとも動物ランド? 動物村?」
一瞬、「よ〜しよしよし、ファイナルアンサー、アイ~ン」 な動物園が見えた。
ムキュウムキュウ
(「ますたー みけをねこ? ねこみけを?」)
「アンディー、それ四股名みたい……って、 三毛皇(みけおう) 閣下、従魔の発言も不敬罪になりますか?」
「そもそも四股名呼ばわりが不敬じゃないのかね? まぁ、従魔の皆は吾輩の事は好きに呼んで構わんよ」
ムキュウ
(「ねこみけを よろちく」)
プープ プープ
(「ミケ兄、ヨロシク」)
コッピョッピョ
(「おじニャン ぼく、つつかないよ」)
「おっ、おじニャン……吾輩おじニャンなの?」
「 三毛皇(みけおう) 閣下、それ、 凄(すっご) 〜くマトモですよ。ボクはヒゲママでオロール先生は酒ババですからね」
コカちゃんの発言にオロール先生がクックックッと笑っている。
「まぁ、魔獣や野獣達の感覚は独特だからな。龍や神獣クラスになると吾輩達の事を “ 矮小ナル者 ” 等と呼んできたりもするな」
「留守番組が何と呼んでくるのか、今から楽しみですね」
「仲間と言えばあのクルラホーンはどういう扱いになるんだい? 飲み仲間でいいのかい?」
「ガジェットとの関係でアルチュールさんはボクと冒険者パーティーを組むことになりました。アルチュールさんの飛行実験の為にガジェットを貸し出すんで」
「それこそ赤ワインの重ね飲み仲間じゃないかい?」
「クルラホーンと【カミチスイコウモリ】?」
「はい。クルラホーンの背中にコウモリが張り付いて飛びます」
「それ、魔神ガッデムZ?」
「あ、分かります?」
「それでコウモリの名前がガジェットなのか」
「はい。それです」
「目や胸からビームを出したりドリルで特攻したりは?」
「しません。無理です!!」
「格納庫のお風呂から垂直に飛び上がったり……」
「しません!!」
キーンって走り回ったり、六体で合体したり、発光する剣を振り回して宇宙で戦ったり、デカいヨーヨーを振り回したり、戦闘機にも変形しないからな。……歌うけど。
さて、焼きそばを作るか。最初に生パスタを茹でるところから。沸騰したお湯に少量の重曹を加えて生パスタを茹でる。パスタが浮いてきたらザルに上げ、熱いうちに油を絡めて暫く放置。その間に具を炒める。肉とキャベツがあればいい。かさ増しするならタマネギやモヤシを追加すればいい。だが、モヤシは実験でしか作れていないので候補からは削除。タマネギは好き嫌いもあるから入れなかった。タマネギよりもモヤシよりも紅ショウガが無いのが残念だけどな。
「まさかの生パスタ焼きそば」
「まぁ、ウドンよりは近いですよ」
「ソースは比較的簡単に入手出来るからな」
「お好み焼き用のソースは無いですけどね」
「それより紅ショウガは?」
「無いです。ついでに言うと青海苔も無いです」
モチモチ太麺のソース焼きそば。大きめカットのキャベツがたまらない。
三頭の為に塩味抜きの焼きそばを作ろうかな。キャベツと麺の炒め物(味付け無し)。これをパンに挟んでやれば従魔用の焼きそばパンの出来上がりだ。肉抜きなのでアンディーでも食べられる仕上がりに。
ムキュ〜ウン
(「おいちそう」)
今度から従魔と食べられる料理というものも研究してみるか。野草クッキー? それは買えるオヤツなので別枠ですわ。