作品タイトル不明
第564話
午後からはホタテ貝殻の研磨作業だ。
そうだ、ハーレー=ポーターさんにネコ車のサイドカー仕様を囁いてみよう。と言う事でメッセージを渡してもらう様、学生課にお願いしておいた。
掲示板には “ 八の日に【手持ち豚】と一緒に四大茸を採取するイベントに参加出来る生徒は参加して下さい。【手持ち豚】のみの参加でも構いません ” と張り出されていた。後は養豚場から助っ人ならぬ助っ 豚(とん) が来るのか。どう考えても俺のせいだから、ここは一つ美味しい草を手土産にしてご挨拶に行ってくるのが筋だろう。
寮の部屋に戻って二頭の様子をコッソリ覗いてみたら、仲良くお昼寝してました。仲良くと言っても寝てる場所はそれぞれのケージなんだけどね。いいなぁ、俺もノンビリとしたオフを満喫したい。思い起こせば転生してからノンビリ出来たのは岩塩事件の時ぐらいだ。意図せず家族が増えてしまったからまだまだバタバタ続きなんだろうなぁ……。どこかでノンビリ湯治したいものよ。オロール先生は風呂好きだから、どこか秘湯の一つや二つ知ってそうだ。家族でもミケヲさんとは家族風呂の貸し切りはしたくないけどな。湯浴み着を着てたとしても混浴だよ、混浴。
{ ―― その時は「きゃあ、ミケヲさんのエッチ」ですよ ―― }
でた、ヤーデさんの謎のツッコミ。もしかしなくてもヤーデさんも元日本人だったとかなんでしょ? 何か欲しいものがあればお供えしますよ。
{ ―― あの、ティラミスを…… ―― }
ティラミス!! これまたダイレクトに指定してきたな。ティラミス美味しいもんなぁ……。コーヒーも見つかったからティラミスっぽい何かは作れる。ミケヲさんが身内になった事で異世界ネタも使いやすくなったしな。
そうだ、オロール先生に、 “ 養豚場に寄ってから商業ギルドに向かいます。現地で会いましょう。買い出し宜しくお願いします ” と手紙を書いてドアに貼り付けておこう。念の為、学生課にもオロール先生の部屋に手紙を置いたと伝えてもらう様にお願いしておけば安心だ。
鮫の歯と比べたらホタテの貝殻の研磨は簡単だった。研磨対象はほぼ外側。縁は薄くなっている個所があるのでそこは削り落とす。ホタテビキニアーマーにする場合は肌当たりを良くする為に縁に縁取り加工を施したりするそうだけど、コカコッコ用なのでそこは不要。縁取り加工は魔導 鍍金(メッキ) だったり【 水母(プルモ) シート】を噛ませたり、【バサルトタートル】の皮を沿わせたりと色々。縁は後でコカコッコ達の要望通りに整形すればいいし。外側は独特の溝を活かす様に削ればオシャレかな?
そして結構貝殻が厚い。ハマグリぐらい厚い。もっと薄いイメージだったけど。これ、ダチョウの卵の殻の方が薄いんじゃないか? ダチョウの卵の殻を透かし彫りして飾り物にするアートが有ったよなぁ。これ、このホタテの貝殻も透かし彫りしてアート作品出来るんじゃないのか? 透け透けホタテビキニ。どうせ胸を隠すのが目的じゃなくて外付けのアーマーなんだから透かし彫りしてもいいと思う。レースのホタテビキニ、爆誕!! 宝石も沢山着けてゴージャスにすればいいな。そうか、レースのホタテビキニに色とりどりの【スライムの死核】を取り付けて、肥料にも工芸品にもなるアーマーとしてエルフに売り付ければいいんだ!! 前世だったらベリーダンスのお姉さんが着けていそうだ。
そうなると、内側に【 水母(プルモ) シート】だったりクラーケンの皮を貼り付けてもいいな。他にも良い素材があるだろうから……。
「どうしたのかな?」
「あっ、ちょっと色々と浮かびました」
「顔がニヤケてたからね。スキルの発動に気を付けて」
「あっ、そっちは大丈夫だと思います」
「差し支えなかったら教えてよ。何か指導出来るかもしれないし」
「あのですね、【ホヤッキー】を透かし彫りしたら面白いかな……と。色々と宝石なんかを取り付けて豪華にしてみようかな……と思いました」
「ファベルエッグ細工を【ホヤッキー】に施すの???」
「ファベルエッグ細工?」
「ファベルエッグ細工と言うのは卵の形をした豪華な細工物で、手間暇は掛かるし素材も高価な物を多く使うから、今は廃れてしまった細工技術だよ」
前世のロシアのインペリアル・イースターエッグみたいな感じなのかな?
「卵の殻が素材じゃないんですか?」
「いや、卵を模した高級細工物だよ。なので、金属なら最低でもミスリルを使い、エナメル細工だ陶器だ宝石だ、兎に角材料費が掛かるんだよ。過去には鉱石を丸ごと研磨したり、無謀にも大型の魔石をくり抜いて研磨しようとして爆死した職人もいたね」
「爆死!! それって何が目的の細工物なんですか?」
「えっ? ただの技術披露だよ。鎧を鐘に見立てる祭りと同じだね。誰に献上する訳でもないし。ヒト族の貴族は欲しがるみたいだけどね」
「ただの技術披露なんですね」
「大した小物も仕舞えないし。収納容量は『キーボックス』以下だからね。不便でしょ?」
そこで『キーボックス』と比較するのかよ。そうなると確かに技術披露と素材調達力の自慢でしかないか。
「確かに不便ですね」
「その技術を【ホヤッキー】に落とし込む。それ、今から極めていって卒業製作にしたらいいと思うよ。そしてヒト族に高値で売れること間違い無し!!」
「ザン=ギュラー先生にはそう見えますか?」
「カメオの技術も使えるね。象嵌もいけるか……。早めに一つ完成品を作り上げて商業ギルドに仮登録したらいいと思う。誰もそんな面倒な細工はしないと思うけど、それでも記録があればトラブル防止にはなるんだよ。 クソっあのヒト族め、私の石像に因縁を……」
ザン=ギュラー先生の過去作の石像に何があったのか……。これ、知らないほうがいいやつだな。俺の中のゴーストが囁くってやつだわ。