作品タイトル不明
第565話
新たなホタテビキニの扉を見つけてしまったかもしれない。どうせならイロモノではなく芸術性を追求してもよいのではないだろうか。ファベルエッグ細工だっけ? 高級な細工。
{ ―― インペリアル・ホタテビキニですね ―― }
うわっ、天から爆弾発言が投下、地上で炸裂したぞ。心の負傷が大きい。衛生兵……ガクッ。
いや、マジで売れるなら試してみてもいいかな。
それはさておき、外側の汚れは粗方削り落とした。研磨前は様々な付着生物の痕跡が着いているが、それは海中で【ホヤッキー】の魔力を求めて様々な微小な生物が擦り寄ってくるからなのだとか。
削り滓をスライムに与えて処理してもらうなら青スライムなのかな。俺は 木賊(とくさ) に掛けちゃうけど。
貝殻なので水洗いしても問題無いので一度水洗いする。【拭き草】で水分を拭き取り『汎用魔法』の『微風』を当てて乾かす。光に翳すと研磨傷と削り残しが見えるので確認しておく。
前世のホタテと同じで上に来る側の貝殻の外側は茶色をしている。そこを削っていくと紫色が出てきて更に削ると白い地が出て来る。この色味の差を上手く使ってやるとデザインに面白味が増す。紫色のレースビキニね……セッ、セクシー!?
タッキー用は茶色を活かし、チャーモには紫色を活かしてあげたらいいかな? どうせなら食べるのを躊躇するレベルに仕上げてやる。
タッキー用は茶色で翼の柄を出す。翼の周りは削って白くしたら翼も目立つし。チャーモ用は地色を紫にして、桜の花の様な形の柄になる様に削ってみよう。薄紫の花と白い花。
タッキー用は茶色の地色、チャーモ用は紫色の地色にしたところで表面を滑らかにしてやる。細かい目の砥石を使って表面を整えたので、そこから先はひたすら水で濡らしたり 木賊(とくさ) で研磨作業だ。
「面白くていいんじゃない? 更に飾り石も付けるんだ」
「はい。コカコッコから指定が来たので」
「花柄の【ホヤッキー】装備はエルフや 女性人魚(マーメイド) に人気が出そうだよね」
「ちょっと楽しくなってきました」
ホタテビキニではなく、装飾品だと思えば意外と平気かもしれない。それに作者が装備しなきゃいけない決まりも無いしな。
「それ、多分、魔力痕は移っていないと思うよ。そのまま研磨しちゃってね」
「分かりました。ところでザン=ギュラー先生、ロクロって職校に置いて有りますか?」
「ロクロ?」
「回転式の道具です。陶芸の器を作る時に使ったり、家具の脚を作る時に使ったりする」
「ああ、 回転式旋削機(レイス) ね。有るけど石や金属を削る用は存在していないよ」
マジか!! それでも陶芸用や木工用のロクロや旋盤は存在するんだな。そして回転式で砥石をセットする研磨機は無いらしい。
「残念です」
「有れば便利なんだろうけどね。まぁ私の作品に使うのは無理だろうけど」
仕方ない。地道に研磨するしかないのか。
「それこそザン=ギュラー先生は砥石はどうやって工面していますか?」
「私の使う砥石は荒砥や中砥が中心だから、普通に購入しているよ。後は様々な 木賊(とくさ) を大量購入だね。最近は 石灰岩(ライム) 部分を白スライムに食べさせて特殊なテクスチャーを付けたりもしてるよ。それこそ【ホヤッキー】を扱うなら白スライムには警戒しないと」
「透かし彫りしたい部分だけ食べてくれたら楽そうですよね」
「多分、素材が脆くなるよ。脆いというか品質の劣化が正しいかな。石灰部分を食べるだけでなく内包する魔力も吸い取られると思うよ」
「それだとアーマーの意味がなくなりますね」
「ダンジョンで白スライムに胸に貼り付かれたヒト族の女戦士がいたそうだよ。ご丁寧に【ホヤッキー】を使った胸アーマー部分だけを食べて女戦士から離れたそうだから」
「それだと現場で使えないアーマーですよね」
「魔導 鍍金(メッキ) やニス加工を掛ければ食べないって話だよ。なので貝殻部分を何かしらの素材でコーティングすれば大丈夫」
「良かった、対処法が有るんですね」
「そうじゃなきゃ白スライムが絶滅指定対象にされちゃうからね」
良かった。ちょっと白スライムには興味があったから、所有して罰せられたら困るんだよ。
「管理は厳重に……ですか?」
「白スライムも黒スライムも逃さない様に……だよ。鍵のかかるスライム 甕(かめ) で管理が必要だよ。後はスライム管理の資格を取らないと」
「意外と面倒でした」
「へぇ〜、興味あるんだ」
「多少は。ボク、鉱石研磨が好きなので多少は関係してきそうなのかな? って思うので」
「成る程ね」
研磨自体は会話しながらでも出来るので、表面を滑らかにしながら地色を大事にしながら整えていく。上側の貝殻なので少し波形にデコボコしている所を丁寧に研磨してやらないとストライプ状に配色されてしまう。しかも根本から放射状にだ。団扇の骨、もしく漫画の集中線っぽいか?
ホタテビキニに集中線。はい、ここに注目!! って事ですか?
「ふう、休憩。ミーシャ=ニイトラックバーグも無理しなくていいよ。適当に休憩してね」
「ザン=ギュラー先生はどんな作品を製作されているんですか?」
「ラミア族から注文された石像だよ。 蛇紋岩(サーペ) で石像作って欲しいと依頼されたんだよ」
「オシャレでいいですね」
「そうでしょ、そう思うでしょ。ラミア族だってそうなのに、あのヒト族ときたら……クソっクソっ」
どんな会話をしても最後はそこに到達するのか!? 件のヒト族との間に一体どんな過去が……。気になる。
「あの、ザン=ギュラー先生、そのヒト族はどんな失礼なことを先生にされたんですか?」
「ああ、あれはちょうど一年前に……」
そこからザン=ギュラー先生の悲しいボヤキが始まっちゃったよ。